この頃読んだ本2022/10/14

大分前に読んで、忘れそうになったので、思い出しながら書いてます。
短時間で簡単に読める、文庫本です。


ほしおさなえ 『菓子屋横丁月光荘 金色姫』
シリーズも五作目になりました。
月光荘に住んでいる遠野守人は無事に修士論文を書き上げました。
卒業後も月光荘に住み続け、イベントスペースの運営を任されることになっています。
小正月に新井で行われる繭玉飾り作りを取材することになった守人は、友人の田辺にイベントの話をすると、田辺の祖母で守人と同じように家の声が聞こえる喜代さんも参加することになります。
繭玉って養蚕に関係があったんですね。
様々な人との縁が次々と繋がっていきます。
時には嬉しい再会があり、そして悲しい別れがあり…。
孤独だった守人の祖先のことがわかり、その上親戚が見つかったりと、彼の未来も明るいものとなっていくのでしょうね。
川越の町が描かれているので、一度行ってみたいと思っています。

池永陽 『珈琲屋の人々5 心もよう』
東京下町の商店街で「珈琲屋」を営む宗田行介のもとにやって来る人たちのお話。
今回は刑務所で知り合い、行介を兄貴と慕う順平と最近おでん屋を営み始めた美人女将・利央子の因縁話がメインです。
最初は面白く感じていたのですが、五巻目まで来るとだんだんと違和感が…。
人を殺した行介を見たいと思ってわざわざ「珈琲屋」まで行きますかぁ。
そんなに皆さん、人殺しを見たいんですかぁ。
いつまでもグダグダ言ってないで、冬子とサッサと結婚しなさい。
なんて言いたくなります。
なんで訳アリの人ばかりやって来るんでしょうねぇ。(そうじゃなきゃお話が進みませんがw)

長月天音 『神楽坂スパイス・ボックス』
美味しそうなものが出てくるのかと思って読んでみました。
読み始めてから失敗したかと思いました。だって男に振られた女がって、ありがちですもの。
五年間付き合っていたイタリアンレストランのシェフに振られた雑誌編集者のみのりは、彼を見返すために、シェフの夫が亡くなってから引きこもりを続けている姉のゆたかを強引に連れ出し、スパイス料理専門店を開店させる。
お姉さんのゆたかが有能で、次々と疲れた人たちを癒やす料理をあみ出していきます。
みのりと元彼が今一だけど、お料理は美味しそうで、こんなお店があったらいいなと思いました。

望月麻衣 『わが家は祇園の拝み屋さん EX 愛しき回顧録』
拝み屋さんシリーズを読んでいた方には必須の、その後のお話です。
あれから五年後。小春たちが高等部を卒業し、チームOGMは自然消滅したはずなのに、小春たちの活動を見て、自分もやりたいと思っていた後輩たちが集まり、再度チームOGMが結成されました。
先輩達に会いに行くと…。
オールメンバー登場の回ですので、ファンの方、読みましょうね。

十三湊 『出張料理みなづき 情熱のポモドーロ』
二十四歳になる遠藤季実は東京の本郷のおばあちゃんの家で暮らすことになります。
実は彼女、新卒で入った会社を二年も経たずに辞めてしまい、再就職する気力をなくし、家で引きこもり生活をしていたのです。
おばあちゃんは下宿屋をやっていて、今は皆月桃子という二十八歳の女性が下宿しています。桃子はろくでなし親父、母親蒸発、二十三歳でバツイチという女性で、普通なら不幸な部類に入りますが、とんでもない、とてもすごい女性なんです。何と言っても彼女が作る料理がとてもおいしいのです。
桃子は<出張料理みなづき>を仕事にしていて、依頼人の家や指定された会場に出向いて料理を作っています。
引きこもりだった季実は桃子の計略に乗せられ、ご飯を炊くことから始まり、野菜の皮むき、調理道具運びなどに使われ、アシスタントにされてしまいます。
無気力になっていた季実でしたが、下宿で桃子が作ったものを食べ、出張料理で様々なお客さんと接することで、だんだんと生きる意欲を取り戻していきます。

気に入った言葉。
「結局、人は自分の人生しか生きられないってこと」
「どんなに素敵なごはんも、毎日続いたら、それが『普通』になっちゃう。当たり前になったら、感謝もしないし、喜んだりもしないんですよ」
「毎日のことなのだから、一回一回の質よりも続けることが大切なのだ」

食べることを大事にしていきたいと思わせられたお話でした。

福澤徹三 『俠飯 8 やみつき人情屋台篇』
ごめん、今までこの本に出てくるお料理はあまり食べたいと思いませんでした。
でも今回の屋台のお好み焼きと鯛焼きはものすごく食べたいです。
どう見てもヤクザにしか見えない柳刃と火野のコンビが、極秘捜査をしながら、出会った若者に美味しいご飯を与えていく(?)というお話です。
今回彼らの手にかかった若者は、底辺ユーチューバーの葉室浩司。
コロナ禍で入ったホテルから希望退職を促され、それ以来就職もできず、バイトさえ探すのが大変という状態で、なんとか貯金を崩して暮らしてます。
ある日、浩司は上野公園で行われる「ダウンタウン、秋の美食フェス」で彼女がイベントスタッフのバイトをしているので、動画のネタ探しに行きます。
たまたま会場のすぐ外でやっていた屋台のお好み焼きと鯛焼きを食べたのがきっかけになり、まかないをご馳走され、レシピを教える代わりに屋台を手伝うことになってしまいます。
さて、柳刃たちの今回の捜査はなんでしょうね。

「親ガチャ」という言葉を今は使うのですか。なんか嫌な言葉ですね。
そう思っている人に「他人になにかを求め続ける限り、おまえはいつまで経っても満たされない」という柳刃の言葉をあげたいですね。
そして将来のことが不安で、一歩が踏み出せない人には、「将来を気に病んで、いまを粗末にするな。人生はいつでも、いまがいちばん若い。いまを充実させられない者は、将来もきっと悩んでいるだろう」。
そして、大人たちに。
「若者が将来に希望を持てない最大の原因は、こんなふうになりたいと思わせる大人がまわりにいないことだ」
耳が痛いですね。

どの本もそれなりに面白いので、お暇な時に手に取ってみて下さい。

ヘニング・マンケル 『白い雌ライオン』2022/10/16

やっと昼間でも25℃以下になったので、昼間のお散歩を楽しんでいます。
なんで25℃以下かは適当に体感で決めていますが(笑)。


ちゃんと前を向いてくれないので、なかなか外で写真が撮れません。
なんとか二匹共に前を向いている写真が撮れました。
来週トリミングなので、毛がボサボサです。
犬と散歩してもトレーニングにならないので、家でもウォーキングしてます。
とうとう家でもトレーニングシューズをはいていますww。



刑事ヴァランダー・シリーズの三作目。
もうすぐ八十歳になるクルト・ヴァランダーの父が結婚すると言い出し、ヴァランダーはびっくり。
相手は三十歳も年の離れている家政婦だと言うのです。
父親に他の人と暮らせる人じゃないと反対するヴァランダーですが、彼も同様よね。前回知り合ったバイバとも特に進展がないようですし。
そんなことしてるから、泥棒に入られて、買ったばかりのステレオやCDプレイヤー、レコード、CDなんか盗まれちゃうのよwww。

さて、事件です。
ドラマではヴァランダーは南アフリカに行くのですが、小説では行きません。
せいぜいストックホルムに行くぐらいです。

イースタ警察署に妻がいなくなったと男がやって来る。
彼は妻といっしょに不動産屋を営んでおり、金曜日に妻は売りに出したいという家を一軒下見に行き、五時までに帰るというメッセージを留守番電話に残していたという。その日でほぼ三日間行方不明だ。
彼女は敬虔なメソジスト教会の信者で二児の母。そんな女性が自分から姿を消すことは考えられなかった。

彼女が下見に行った売家には彼女の行方を示すものは何もなく、自宅の家宅捜査をしていると、売家の付近で家が爆発したという報告がある。
一年以上空家になっていたというのに、何故爆発したのか?
爆発現場に残されていたのは、黒焦げの人間の手の指が一つ、ロシア製の大型の無線装置の断片、南アフリカで製造されているピストルだった。

しばらくして沼で車が、そして農家の井戸から女の死体が見つかる。
死体は眉間をまっすぐ撃ち抜かれていた。

この本が書かれたのは1993年。
ソ連、南アフリカ、スウェーデン。この三国にどのような繋がりがあるのか、すぐにわかる人は歴史に詳しい人でしょうね。詳しくなくても、わかるか。
わたしなんか言われて、ああ、あの頃かと思う始末でした(恥)。
1989年から1991年にはソ連崩壊が起り、南アフリカではネルソン・マンデラが釈放され、アパルトヘイトが撤廃されようとしていた頃ですね。
その辺の詳しいことはこの本の中に書かれているので、どうぞお読み下さい。
刑事ヴァランダー・シリーズはスウェーデン国内だけではなく、世界的なスケールの事件を扱っているのですね。
ちなみにあとがきによると、マンケルは長い間アフリカに滞在していたそうです。

ちょっとネタバレすると、ヴァランダーは娘のために頑張り、いつものように暴走しますが、彼の仲間たちが秘かにサポートに回ります。

精神的にボロボロになったヴァランダーは再生できるのでしょうか。
次作が楽しみです。

石田衣良 『ペットショップ無残 池袋ウエストゲートパークⅩⅧ』2022/10/18



池袋の西口公園近くの果物屋の息子で、「池袋のトラブルシューター」と言われている真島誠ことマコトが、依頼された事件を、「G-Boys」のキング、タカシやハッカー、ゼロワンの力を借りて、解決していくシリーズ。
事件は現代の世相を反映するものです。

「常磐台ヤングケアラー」
マコトが池袋東口のクラブで出会った氷のような表情をした少女、サチは、三人組の男にしつこくつきまとわれていた。彼女は十五歳なのに家で祖母の介護をしていて、高校に行けてないという。男たちはそんなサチにマッチングサイトに登録してバイトをすると、祖母を最高の老人ホームに入れれるというのだ。

「神様のポケット」
マコトと顔なじみの惣菜屋で働いている、バングラデシュ出身のクマールが、賽銭泥棒の容疑で逮捕される。彼の無罪を信じる同僚女性から頼まれ、マコトは事件を調べてみることにした時、池袋署生活安全課の刑事・吉岡から電話が来る。

「魂マッチング」
珍しいことに、凄腕ハッカーのゼロワンがマコトに電話をして来て、頼みがあるという。なんと彼がマッチングサイトに登録したら、ひとりの女から連絡が来たというのだ。しかし彼女のことを怪しく思ったゼロワンは、マコトに秘かにデートに着いてくるように頼む。

「ペットショップ無残」
キャットキラーのときに出会ったタイトから紹介されたNPO法人「ペット・エガリテ」から、最近急激に伸びているペットの総合商社、CGペットを告発する情報を集め、法的に処罰を与えて欲しいという依頼がある。
ペットたちの扱いの無残さに憤りを感じたマコトは、ゼロワンとタカシの力を借りることにするが…。

ヤングケアラーや賽銭泥棒と技能実習生問題、マッチングサイトを使った美人局、悪質ペットショップなどが今回のテーマになっています。

SNSで出会った男女が起こす悲惨な事件が少しずつ増えてきている感じがします。
おばさんにはネットで知らない人と繋がって、平気で会いにいく若者たちのことが、信じられません。
コロナ禍になってから、生身の人との出会いが少なくなり、ネットに依存してしまうのでしょうかね。
実際にマッチングサイトで出会って結婚した人たちがいますが、そんな人たちは運のいい、幸せな人たちだと思った方がいいと思います。
下手をすると、犯罪に巻き込まれることがありますからね。
気をつけてくださいね。

ペットショップのことは身に染みます。
兄犬は家に引き取ってすぐに停留睾丸や膝蓋骨脱臼だということがわかりました。
ペットショップに言うと、別の犬にしますかと言われましたが、もしあの時、兄犬をペットショップに戻していたら、兄犬はどうなっていたか…。


「おい、君のことだよ」www。
コロナ禍になってペットを飼う人が多くなったそうですが、生活が正常化した今、ペットたちがどうなっていくのか、ちょっと心配です。
本には目を覆いたくなるような現実が書かれているので、そういうのを読みたくない方は注意してくださいね。

さらりと読める、痛快なシリーズです。
ゼロワンに人間味が出てきて、そろそろタカシは氷のキングから引退かな。
次作を楽しみに、来年まで待ちます。

ジャナ・デリオン 『どこまでも食いついて』2022/10/19

<ワニの町へ来たスパイ>シリーズの五作目。


CIA秘密工作員で、中東の暗殺部隊から命を狙われる身となり、ルイジアナの田舎町シンフルに一時潜伏しているフォーチュン。
趣味が編み物という元ミスコン女王の司書なんて嘘だとすぐに見破ったアイダ・ベルとガーティ・ハバートという元ベトナム軍人の老婦人と仲良くなり、次々と事件に巻き込まれます。

保安官助手のカーター・ルブランクとのデートで浮き浮きしていたフォーチュンは、デートの次の日の早朝にやって来たアイダとガーティからとんでもないことを聞く。
二人が属する<シンフル・レディース・ソサエティ>と相対する<ゴッズ・ワイヴズ>の長のシーリア・アルセノーが、町長選挙に出馬するというのだ。
それも邪魔されないように、締め切りの直前に。
二人はシーリアが町長になった暁には、フォーチュンを攻撃目標にし、彼女のことを何かと調べて、町を出て行かせるのではないかと心配している。

そんな時にもっと大変なことが起こる。
デートの最中に何かを見かけたカーターは、デートの後にボートに乗り、調べに行った。
そのカーターから保安官事務所にSOSが入り、銃声が聞こえたと言う。
フォーチュンたち三人は早速”借用”したボートで駆けつける。
すると、保安官事務所のボートが沈んでいくのが見え、フォーチュンは思わず飛び込み、カーターを助ける。

病院に入院し、意識が戻ったカーターだったが、肝心なところの記憶をなくしていた。
フォーチュンたち三人は誰がカーターを撃ったのかを調べることにする。
そこに思わぬ伏兵が現れる。
ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)捜査官たちで、その中の一人とフォーチュンは仕事をしたことがあった。
フォーチュン、ピンチ!

相変わらずパワフルなおばあちゃんたちです。
特にガーティおばあちゃんが面白いですね。とうとう半裸になっちゃいましたからね。見たくないけど。
フォーチュンが町に来てから一ヶ月しか経っていないんですよね。
それなのに、シーリアが言うように事件が起り過ぎではないですか。

このシリーズは23冊も出版されているようです。
一ヶ月が五冊だから、五ヶ月目かな?アレ、そんなに長くシンフルにいられたかしら?

さて、シーリアが町長になり、フォーチュンはどうなるのか。
次回もドタバタ喜劇とロマンス、期待しています。

川瀬七緖 『クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』2022/10/21

仕立屋探偵、桐ヶ谷京介シリーズの二作目。
前作は長編でしたが、今回は6つの短編集。


桐ヶ谷京介は高円寺南商店街で仕立屋を営む服飾ブローカー。
彼には美術解剖学と服飾の深い知識によって、服を見ればその人の受けた暴力や病気までもわかる特殊な能力がある。
その能力が事件解決の糸口になると気づいた杉並警察署の未解決事件専従捜査対策室の警部、南雲隆史は桐ヶ谷のところに次々と未解決事件を持ってくる。
人気のゲーム実況配信者でヴィンテージショップの雇われ店長の水森小春は、そんな桐ヶ谷のことを面白がって彼について回り、いっしょに事件解決に乗り出す。
今回は新しいキャラ、南雲の部下の三十二歳、長身でイケメン、八木橋充巡査部長が登場。

「ゆりかごの行方」
十二年前、南雲が拾った杉並署の裏道に捨てられていた赤ん坊は、児童養護施設で生活をしているが、未だに両親ともに名乗り出てこない。
十二歳になった少年は南雲に母親を探してほしいと頼む。
南雲が桐ヶ谷のところに持ってきたのが、大人もののTシャツの脇を縫い詰めて作ったベビー服の代用品だった。

「緑色の誘惑」
桐ヶ谷と小春は正式に警察から捜査協力を依頼される。
その一番最初の事件は、十五年前に起った六十五歳の女性の殺人事件。
女性は活発で社交的な人間で、友人知人が非常に多く、恨まれるような性格ではなかった。しかし彼女は死の三年ぐらい前から『緑のおばさん』と揶揄されるほど、全身緑色の服を着るようになったという。
桐ヶ谷は彼女のワードローブを見たいと言い出す。

「ルーティンの痕跡」
小春が下着泥棒の被害にあう。残されていたのが古びた使用済みの男性用下着。
同一人物の犯行と確定されるものは五十九件もある。
桐ヶ谷と小春たちが杉並署の会議室で残されていた男性用下着を時系列に沿って並べていくと…。

「攻撃のSOS」
買い物に出かけた桐ヶ谷は池袋で四人の少女たちの右端を歩いている少女から目が離せなくなる。
彼女は明らかに日常的な暴力の犠牲者だ。
桐ヶ谷はそういう子を見るたびに、通報をしていたが、無駄に終わっていた。
彼らはなんとしても助けなければならなかった命だった。
今度は…と思いつけていくと、桐ヶ谷に気づいた少女は公衆電話を使って匿名で通報し、桐ヶ谷はやって来た警官に警察署に連れられていく。
なんとか容疑は晴れたが、南雲からだれにも気づかれずにつけまわすように言われ、小春の助けを借りることにする。
小春がつけていくと、少女は駅のトイレで私服に着替え、ある空き家に入っていった。そこには別の中学校の女の子が2人いた。

「キラー・ファブリック」
十六年前、蕎麦アレルギーのある女性が自宅でアナフィラキシーショックによる窒息で死んでいた。死亡時に第三者が家にいた形跡はなかったので、事故と見なされたが被害者の夫は納得せず、どうやら南雲も事件性を疑っているようだ。
現場にはトウモロコシの粒が残っており、それは1950年前後のアメリカで生産されていた種ではないかと推定された。
彼女は手作りで「ブサカワ」で「ヘタウマ」なぬいぐるみを作っており、ネットやハンドメイドフェスで人気だったという。
桐ヶ谷たちはハンドメイド仲間で特に親しかった五人と話しをしに行く。

「美しさの定義」
十年前の二月、荻窪のアパートで一人暮らしをしていた、服飾専門学校に通う女子学生が裁ちばさみで刺されて殺されていた。
争った跡がないので、被害者の顔見知りの犯行と思われたが、全員にアリバイがあり、目撃者もいなかったという。
桐ヶ谷は被害者が死亡時に来ていたトレーナーからは何も読み取れなかった。
そのため栃木にある被害者の家に行き、彼女が制作したものや学校に提出したレポート類などを見せてもらうことにする。

六作とも、「へぇー」以外の何も言えませんでした。
被害者が身に付けていた服とか小物とか物から真相に迫っていくなんて、そんなことが可能なのですね。
ホント、世の中、知らないことがいっぱいありますねぇ。

桐ヶ谷は年寄りだと思って読んでいたら、若くて、34歳でした。
彼は何故か暴力を受けている子どもに思い入れがあり、手を差し伸べようとします。見えてしまうと、何かせずにはいられなくなる人なのですね。
彼が述べていた虐待と脳の関係には驚きました。

「子どもが変死した場合、解剖医は最終的に脳の容積を見て虐待を判断しますからね。身体的暴力は前頭葉、暴言は側頭葉、両親のDVなどを目撃していた子どもは後頭葉の視野野に疵痕が残される。虐待というのは、目に見えるおぞましさ以上のものを脳に刻み込むんです」

着眼点が面白いシリーズですので、次作も楽しみです。
わたしは法医昆虫学捜査官シリーズも好きなんですが、もう続きはでないのかしら?

「オリエント急行殺人事件」を観る2022/10/22

本を読む前に映画を観てみました。といっても一度読んでいるので、原語で読もうと思っていますが、どうなることか…。


ケネス・ブラナーが監督、主演です。
そのため本のポアロとはちょっと違います。
髭がとても立派で、髭を生やす理由は二作目の「ナイル殺人事件」で明らかになります。
どうもポアロにはカトリーヌという看護師の彼女がいたようです。
映画では最後の方に大立ち回りがありますが、原作のポアロはもっぱら灰色の脳細胞を働かせるだけですよね。
朝食に食べる卵の大きさがそろわないと食べないという迷惑な客です(笑)。
卵を取ってくる子どもが可哀想。
食べ物と言えば、スイーツに目がないようです。他人のケーキを少しもらって食べるんですから。
そうそう、相棒のヘイスティングズは残念ながら登場しません。

エルサレムで窃盗事件を解決し、イスタンブールに到着したポアロは友であるブークと偶然、再会する。
ブークは国際寝台車会社の重役をしており、急遽ロンドンに帰らなければならなくなったポアロのためにオリエント急行の乗車券を融通してくれることになる。
冬になると乗客は減るというのに、何故かポアロの乗ったオリエント急行は満室だったが、ブークの采配でポアロは一等席に乗れる。

翌日の朝食後、富豪で悪徳美術商であるラチェットがポアロに話しかけてくる。彼は命を狙われているので、ポアロに護衛を頼みたいと言うが、ポアロは断る。(この時にポアロはケーキを少しもらうのよ)

その夜、列車が雪崩により脱線し、救助隊が来るまで乗客たちは列車の中に閉じ込められることになる。

朝になり、ラチェットの朝食を運んで来た執事がノックするが、ラチェットは出てこない。
ポアロが鍵を壊し、室内に入ると、ラチェットは死んでいた。
12ヶ所を刃物で滅多刺しにされており、犯行は0時から2時頃だという。
ポアロはブークに警察が来るまでに犯人を探して欲しいと頼まれる。

列車にはポアロがフェリーで見かけた家庭教師のメアリ・デブナムと医者のアーバスノットが乗っていたが、何故か二人は親しくないと言う。
他の乗客はラチェットの秘書のヘクター・マックィーンと執事のエドワード・ヘンリー・マスターマン、未亡人のハバード夫人、宣教師のピラール・エストラバドス、大学教授のゲアハルト・ハードマン、犬連れのドラゴミロフ侯爵夫人とメイドのヒルデガルデ・シュミット、、自動車のセールスマンのビニアミノ・マルケス、ダンサーのルドルフ・アンドレニ伯爵と妻のエレナ、そして車掌のピエール・ミシェル。この13人、全員にアリバイがある。
さて、ポアロはこの13人の中から犯人を捜し出せるのか。

ハバート夫人役のミッシェル・ファイファーは年を取っても美しいですねぇ。
セルゲイ・ポルーニンは初めて映画に出演したというのですが、あまり出番がなくて残念。短気な役柄なので、ソンをしているかも。
ジョニー・デップは品性が下劣な野郎の役がぴったりでしたわ。
ケネス・ブラナーのポアロは…わたしはあまり好きではないです。
犯人当ての場面の朗々と声を張り上げるところがもろシェークスピア俳優で、あまりかわいげとか茶目っ気がないポアロです。

本を読んでいたので、犯人はわかりましたが、それでなければわからなかったと思います。
最後をどう思うのか、人それぞれでしょうね。
犯人を推理するというよりも、豪華なオリエント急行の内装や俳優たちの衣装とかを楽しむ映画だと思いました。

トリミングに行ったわんこ2022/10/23

月に一回のトリミング。
年末に行きたいので、ちょっと早いのですが。


イチョウの木もだんだんと黄色くなってきています。


兄はこの頃散歩をすると、すぐに疲れるようになりました。
グイグイ引くこともなくなり、これが老いかと、淋しく思います。
ご飯を10歳以上の犬用にすると美味しくないのか食べないので、トッピングをしています。弟も分けまいをもらいます。
見かけはまだ老いを感じさせないのですけど…。


トリマーさんが前回と違うので、顔のカットが縦長ではなく丸くなっています。


8歳の弟はまだまだ現役。お散歩でグイグイ行くので、寒くなって腰痛と膝痛の出てきたママ(泣)は彼とはお散歩できません。小さいのに力持ちなんです。
弟はライオンのたてがみがそのままです。
だんだんと顎の横の毛が長くなっています。


右寄りになってしまった写真(恥)。
カットして貼ろうと思ったら、拒否されてしまったので、このまま貼りました。
笑顔がいいですね(親バカ)。


相変わらずの距離。
弟を兄に近づけますが、なかなか近くに寄りません。


やっぱり弟は怖がっています。
でも遊びの時は兄にちょかいを出すんですけどね。


また右寄りになってしまいました。カットして貼ろうとしたら、これまた拒否。
弟の顔がかわいいので、許してくださいww。

二匹ともに3.5㎏でした。
ママといっしょにダイエットさせてるつもりなんですが、減っていません。
いつも同じような写真ですが、後から見ると、記念になるからいいわよね。

長岡弘樹 『殺人者の白い檻』2022/10/25



尾木敦也は優秀な脳外科医。刑務所の横という特殊な立地にある総合病院に勤めている。
しかし医師の仕事の価値を信じることができなく、スランプに陥り、医師を辞めようとまで思い詰めていた。
休暇を取り、家でやさぐれていた時に、緊急手術の依頼が来る。
同じ病院の看護師で敦也が手術の時に常に機械出しを担当する妹の菜々穂がやって来たため行かざるを得なくなる。

患者は刑務所からくも膜下出血で搬送されてきた男だった。
いつものように患者の顔も名前も見ずに手術をした敦也だったが、手術中にその患者が六年前に父母を殺害して死刑を宣告された定永宗吾だということがわかる。
菜々緒はそのことを知っていたのだ。
手術は成功するが、定永に後遺症が残り、リハビリをすることになる。
敦也は定永の主治医となる。
実は定永は判決後も一貫して犯行を否認していた。
定永は本当に父母を殺害した犯人なのかと疑問を持つ敦也。
定永のリハビリが始まる。

定永が冤罪かどうかは推理するまでもなくわかってしまいます。
ミステリーとしては今一かな。
それにしても普通なら被害者家族に犯人の手術をさせないし、主治医にもしませんよね。
それに家族経営じゃないのに、兄妹がいっしょに働くかしら?
40過ぎの兄妹としては仲良すぎじゃない。(キモいかも…笑)
被害者家族として、そして医師としての敦也の苦悩や葛藤などをもっと深く掘り下げて書いてもよかったのではないかしら。
などと色々と言いたいことがありましたが、最後まで読まさせられたのは作者の力でしょう。

そうそう、参考になるなと思ったのが、「か行健康法」です。

「か」……カッカしない。
「き」…‥キにかけない。
「く」……クヨクヨしない。
「け」……ケンカをしない。
「こ」……コセコセしない。

ネットで調べてみると出てきなかったので、長岡さんが考えたのでしょうか?
意外と使える健康法だと思います。

「ナイル殺人事件」を観る2022/10/26

「オリエント急行殺人事件」の次にケネス・ブラナーが監督・主演をした「ナイル殺人事件」を観ました。


初っぱなから戦争の様子が出てきます。
ここでポアロの髭の秘密と、写真の女性が現れます。
農民になるはずだったポアロは世界中に知られる探偵となったようです。

ポアロはエジプトで休暇を楽しんでいました。
ピラミッドを眺めながらお茶を楽しもうとすると、誰かがピラミッドの上で凧をあげています。
お茶を台無しにされたと怒るポアロでしたが(ポアロってスイーツ好きでしたっけ?)、なんとそれは親友のブークではありませんか。
ブークは母親と友人の結婚式に招かれてエジプトに来たそうです。

ポアロはブークに連れられ、ホテルで行われる結婚披露パーティに行きます。
するとそこに現れた花婿(サイモン・ドイル)と花嫁(リネット・リッジウェイ)はポアロが六週間前にサロメ・オッターボーンのパフォーマンスを楽しんでいたクラブで見かけた男女でした。
しかし花嫁が予想とは違っていました。
しばらくして、真っ赤なドレスを着た女、ジャッキーが現れます。
彼女はクラブで最初にサイモンと踊っていた、サイモンと結婚するはずの女でした。
どうやらサイモンはジャッキーから相続で大富豪になったリネットへと乗り換え、それからジャッキーは彼らにストーカー行為をしているようです。
ジャッキーの登場でリネットは動揺し、退席します。

リネットたちはポアロにジャッキーをどうにかして欲しいと頼みますが、ポアロと話したジャッキーは止める気はないようで、ピストルをポアロに見せます。

リネットはジャッキーを振り切るために、招待客たちと共にS.S.カルナック号に乗り込み、観光を続けることにします。
しかし、またもやどうやって嗅ぎつけたのかジャッキーが船に乗り込んできます。

その夜、悲劇は起ります…。
サイモンとジャッキーは口論をし、ジャッキーはサイモンの脚を撃ってしまいます。
そして翌朝、頭を撃ち抜かれたリネットが見つかり、彼女のネックレスが盗まれていました。

結婚式の招待客で船に乗っていたのは6名。
リネットの幼馴染みで財産管理人のアンドリュー・カチャドリアン、リネットの名付け親で後見人のマリー・ヴァン・スカイラー、マリーの看護師のミセス・バワーズ、パーティでパフォーマンスするように呼ばれたサロメ・オッターボーン、サロメの姪でマネージャーでもあるリネットの同級生のロザリー・オッターボーン、リネットにプロポーズをしたことのある医師のウィンドルシャム。
この他船にいたのは、花婿のサイモンとジャッキー、そしてリネットのメイドのルイーズ・ブールジェ。(ブークと彼の母親は除外よ)
一体この中の誰が犯人なのか…。

クリスティのポアロではなく、ケネス・ブラナーのポアロと思って観るといいんじゃないでしょうか。
豪華絢爛たる客船や大仰な演出は観る価値がありますよ。
わたしは原作の『ナイルに死す』は読んでいないので、十分に楽しめました。
第三弾もケネス・ブラナーが監督して作るようです。
原作は『ハロウィーン・パーティ』、舞台は第二次大戦後のベネチア。
楽しみですね。

ヘニング・マンケル 『笑う男』2022/10/28

刑事ヴァランダー・シリーズの四作目。


前作の『白い雌ライオン』で正当防衛とは言え人を殺したことで、ヴァランダーは罪悪感に苦しみ、一年以上も休職をしていた。
医師には病気退職して早期年金取得者となることを勧められている。

デンマークのスカーゲンにある安いペンションに二度目に滞在していた時に、ヴァランダーは自分の警察官としての日々は終わり、昨年受けた心の傷で、自分は二度と立ち上がれないほど変わってしまったと思った。
そんな頃、彼に会いに友人で弁護士のステン・トーステンソンがやって来る。
彼の弁護士である父親が自動車事故で亡くなったという。
スピード運転をしていた車が転覆しての事故死だと、警察は言っているらしい。
しかしステンは不審な点があるので、何が起ったのか調べて欲しいというのだが、ヴァランダーは断る。
そしてその日の午後、彼は医者とビュルク署長に電話をかけて、辞職の意を告げる。

正式に辞職届を出すためにイースタ署に行く日の朝、ヴァランダーは新聞にステン・トーステンソンが亡くなったという死亡広告が載っているのに気づく。
同僚のマーティンソンに電話をすると、ステンは事務所で撃たれて殺されたという。
それを聞き、ヴァランダーは復職してステン・トーステンソンの事件を担当することにする。

ステンの父・グフタフの車を調べ直しているときに、ヴァランダーはステンが正しかったことを確信する。
グフタフは殺されたのだ。グフタフとステンの死には関連があるのだ。

グフタフが事故に遭った日に、クライアントのアルフレッド・ハーデルベリを訪ねていたことがわかる。
ハーデルベリは世界的な規模の実業家で、ファーンホルム城を買い取り事業の本拠地にしており、ここ数年グフタフの唯一のクライアントだった。
ヴァランダーはファーンホルム城に行き、秘書から話を聞く。

ファーンホルム城からの帰途、グフタフの秘書のドゥネール夫人からすぐに電話をしてほしいという連絡がくる。
家に行くと、昨夜何者かが庭に入り、芝生を掘り起こしたようだという。
芝生には地雷が埋まっていた。ドゥネール夫人を殺そうとしていたのだ。

弁護士親子の死と秘書のドゥネール夫人の裏庭爆発事件は計画的犯行であると結論づけるヴァランダー。
そんな時にトーステンソンの事務所で脅迫状が見つかる…。

ヴァランダーは骨の髄まで警察官の血が流れていると思います。
辞めてしまうと廃人になってしまうんじゃないですかぁ、笑。
1年以上も休んでいても、すぐに復活するんですから、超人と言ってもいいぐらいです。
ドラマのように臓器移植には重みを置いていませんが、最後はヴァランダーの単独行動プラスドンパチが見られます。

今回は新しいメンバーとして、女性の新任刑事アン=ブリット・フーグルンドが出てきます。
女性が警察官として働くことはスウェーデンでも大変なことなのですね。
ヴァランダーは彼女が有能なことにすぐに気づき、いっしょに行動します。
そういうところはヴァランダーの良さですね。

ヘルパーと結婚したお父さんは幸せそうなのですが、ヴァランダーに対する言動は変化なし。相変わらず会いに来ないとガミガミ文句ばかり言っています。
そもそもヴァランダーが警官になったのが気に入らなかったようです。
親子の関係は日本とそんなに変わらないのかもしれませんね。

人を殺したことがトラウマになっているヴァランダーですが、次の事件にも何か影響があるのでしょうか。
次の作品『目くらましの道』はドラマではシーズン1の第一話になっています。
ドラマとどんな違いがあるのか、楽しみに読みます。