小野寺史宜 『タクジョ!』2022/11/01



「タクジョ」とは女性タクシードライバーのこと。
わたしは女性ドライバーのバスに1回乗ったことがありますが、タクシーはありません。
タクシーの女性ドライバーは本(2020年発行)によると3%いないぐらいだそうです。
まだまだ少ないですね。

高間夏子は大卒の新卒タクシードライバー。
車が好きなのと大学時代にあるニュースを見て、タクシードライバーになろうと思った。
夏子の会社は東央タクシーといい、営業区域は東京都特別区と武三(武蔵野市と三鷹市)交通圏。
隔日勤務で午前八時から翌午前四時まで運転するが、休みが多いのが魅力のひとつだ。
一日に三十人強を乗せ、一日の売上は六万円弱。

お客は女性ドライバーが珍しいのか、よく話しかけてくる。
やばいお客にも遭った。
若い女のお客だと安心していたら、駕籠抜けされた。

母の知り合いから紹介されて、公務員の男性と付き合った。
彼は都立高校教師の父の教え子で結婚を意識するが、夏子の仕事がネックになった。

夏子は先輩や同期と仲良く愚痴りながらもなんとかやっている。
東京観光タクシーに挑戦しようかとも思い始めた。
タクシードライバーは辞めずに続ける予定だ。

久々のお仕事小説です。
タクシー業界あるあるは知らないものにとってはなるほどと思える内容でした。
夏子がとっても良い子で、会社の仲間たちもいい人たちで、タクシー業界のイメージが少しよくなりました。
だってタクシーの運転手にはちょっと変わった人が多いとか、仕事柄ストレスが多く、家族に当たったりするとか、そんな話を聞いていたのですもの。
失礼しましたm(__)m。
そうそう、目黒かどこかでものすごく高齢の男性ドライバーのタクシーに乗ったことがあります。天国とかの不思議な話をする人でした。
もう空の向こうに行ってしまっただろうなぁ…。

続編、『タクジョ!みんなのみち』が今月出版されるようです。
この本といっしょに読むといいかも。

ジェフリー・ディーヴァー 『真夜中の密室』2022/11/04

久しぶりのリンカーン・ライム・シリーズの新刊です。


ニューヨークで妙ちくりんな事件が続く。
真夜中に、鍵のかけられた玄関の錠前を破って侵入し、何も危害を与えず、侵入したという跡を残して部屋から出て行き、また鍵をかけていくというものだ。
一番目の時は住人は留守で、ものが移動しており、スナックを食べた跡があった。
二番目は被害者が就寝中で、犯人はサンドイッチを食べ、汚れた皿をベッドサイドテーブルに置いていった。
三番目の時は脅迫と受け取れるメッセージを書いた新聞を残し、刃物や下着をいじくっていた。
狙われたのはすべて女性で、犯人は自らを<ロックスミス>と名乗っていた。

リンカーン・ライムはニューヨーク市警からの依頼で、ロックスミス事件を捜査することになる。しかし、ヴィクトール・ヴリヤック裁判で証拠分析に問題ありとされたため、市警の信頼が損なわれることがあってはならないと、コンサルタント契約を解除されてしまう。
それで引き下がるリンカーン・ライムではない。
逮捕されるのをものともせず、サックスやクーパー、セリットーなどの協力のもとに、犯人に迫っていく。

他にすることがあったので、なかなか読書ができないなか、この本だけは読もうと思って読んだのですが、読むのに集中できませんでした。
ロックスミスという犯人に今ひとつ興味が持てなかったし、どんでん返しが思ったほどではなかったからです。
残念ながらリンカーン・ライム・シリーズの中で面白くない部門に入りました。
もっと凄い犯人を求むwww。
とにかくSNSの投稿がいかに危険であるかがわかりました。
特に写真とか動画は注意しないと、下手をすると居場所を知られてしまうようです。
みなさん、お気を付けてくださいね。

ポール・ギャリコ 『ミセス・ハリス、パリへ行く』2022/11/06



秋も深まり、イチョウの葉が黄色く色づいてきました。


相変わらず、うちの犬たちはカメラを向けるとそっぽを向きます。


やっぱりおやつを見せないとダメかしら…。


映画になったというので、読んでみました。

1950年代のロンドン。
ハリスおばさんことエイダ・ハリスは通いの家政婦をしている。
夫は亡くなり、質素な生活を送っている、もうすぐ60歳の女性だ。
ある日、勤め先のレディ・ダントの衣装戸棚にあった完璧な美しさをもつディオールのドレスを見て、心が引かれ、こう思った。
自分もこんなドレスが欲しい。
世界で最高に高価な店と折り紙のついている、パリのディオールの店から、なんとしてもドレスを買いたい。

そんな時にフットボールの賭けが当たる。
賞金は百二ポンド七シリング九ペンス半。
しかしディオールのドレスは四百五十ポンド。
全然足りないとがっかりするハリスおばさん。
でも美しいドレスを手に入れたら、もうこの世には、なにもほしいものはのこってやしない。
そう思い、ハリスおばさんは爪に火を灯すように節約を心掛けた。

二年六ヶ月と三週間たった後、とうとうお金が貯まった。
喜び勇んでパリへいくハリスおばさんだったが…。

ハリスおばさんは自分の仕事に誇りがあります。
自分が汗水垂らして稼いだお金なのだから、何も卑屈になったり、恥じることはない。
そう思う彼女から醸し出される気概がディオールのお店でも受け入れられ、様々な人たちから手を差し伸べられ、愛されることになったのでしょう。
最後はちょっぴりほろ苦いけど、人生ってそんなもんかもしれませんね。
ハリスおばさんは全くものともしていないのが救いですけど。
ハリスおばさんのように年を取りたいもんです。
人に笑われてもいいから、やりたいことをしたいですね。

児童書なのかな?でも大人が読んだ方がもっと楽しめそうです。
ほっこりとしたいいお話です。

映画の予告編はこちら

ヘニング・マンケル 『目くらましの道』2022/11/08

クルト・ヴァランダー・シリーズの第五弾。


一番美しい季節の夏がやってきた。
夏休みにヴァランダーはバイバとデンマークに行くことにしている。
イースタ警察署ではビュルクが署長をやめ、新しくリーサ・ホルゲソンという女性が署長になる。彼女が赴任してくるまで、ハンソンが署長代理だ。

ある日、菜の花畑に不審な行動をする女がいるという通報がある。
パトロールが全部出払っていたため、ヴァランダーが行くことになる。
彼が畑の中に隠れている少女のところに行って話そうとしたところ、少女はガソリンをかぶってライターで自分の体に火をつけてしまう。
現場に彼女のペンダントトップが残されていた。

少女の死のショックから立ち直らないうちに、殺人事件が起る。
ボートの下で元法務大臣のグスタフ・ヴェッテルステッドの殺傷死体が見つかったのだ。
死体は背骨を刃物で叩き割られ、頭皮を毛髪ごと頭から剥ぎ取られていた。
ヴェッテルステッドには絵画と売春に関する黒い噂があった。
しかし現場にはなんの証拠もなく、殺害動機もまったく見当がつかなかった。

そして次の事件が起る。
夏至祭のパーティが行われていた屋敷のあずまやで、画商のカールマンという男が頭を真っ二つに割られ、頭皮が剥がされて殺されていた。
ヴェッテルステッドと同じ犯人の犯行と思われたが、犯行を見たものは誰一人いなかった。
捜査してもヴェッテルステッドとカールマンの接点は見つからない。

そうこうしているうちに第三の殺人が起る。
配水管の工事穴に男の死体が投げ捨てられていた。
顔の正面から振り落とされた刃物で真っ二つに切られ、他の二人のように頭皮が剥がされていたが、彼だけ両目を潰されていた。
スツールップ空港に殺人現場だと思われるバンが残されていた。
車の持ち主は盗品売人のビュルン・フレーマンで、殺されていたのは彼だった。

三人に共通するのは何か?
捜査は迷路へ入り込んでいく。
進展のないまま、四人目の犠牲者が…。

『リガの犬たち』や『白い雌ライオン』、『笑う男』など国際問題を扱っていましたが、今回は国内問題です。
反吐の出そうな、なんとも言えない悲惨な事件です。
「人はもはや暴力を使ってしか問題を解決できなくなったのか?」
ヴァランダーは今、スウェーデンは、世界はいったいどうなっているのかと自問します。答えのない問いです。

今回、ヴァランダーの父が認知症に罹っていることがわかり、ヴァランダーと父は一緒にイタリア旅行をすることになります。
少し親子が歩み寄りました。
娘のリンダも色々なことに挑戦していますが、一貫性がないですね。
バイバとの関係も進展はありません。ヴァランダーは結婚したいようですけど。
でもね、事件が佳境に入り、もしかしたらバイバといっしょにデンマーク旅行ができなくなるかもしれないのに、電話をしないというのは、大人の男性としてどうなんでしょう。
このクズ男と言いたくなりました、笑。
仕事では違うのにね。
これもヴァランダーの魅力のひとつでしょうか…?

もはや警察を辞めたいと思わなくなったヴァランダーの活躍が続きます。

川瀬七緖 『フォークロアの鍵』2022/11/09



二十八歳の羽野千夏は文化研究機構、東京国立民族文化学博物館、特別共同利用研究員という長ったらしい肩書きを持つ、民族学の「口頭伝承」を研究する大学生。
杉並区にある認知症グループホーム「風の里」で、老人たちの「絶対に消えない記憶」のなかに残るマイナーな伝承を手繰り、謎をとくというフィールドワークをすることになる。

グループホームの職員は、介護福祉士の資格を持つチーフの島守清子と二十歳の若い女性介護士、明桃(ミント)、そして男性介護士の三人。
その他にフリーランス契約を交しているカウンセラーの松山幸代が随時やって来る。

「風の里」には他のグループホームにいられなくなった問題児たちが集まっている。入居者は六名。
『物取り妄想』があり、嫁が浮気をしていると訴えるアルツハイマー型認知症の笹川みつ江、武士の幻覚を見、若い女性にセクハラをする、七十九歳のレビー小体型認知症の栗原三郎、貫頭衣のようなものをまとい、指先が切られた軍手をはめ、通報癖があり、電波攻撃妄想のある八十一歳のアルツハイマー型認知症の真木修子、いつもご飯を食べたかどうか忘れてしまう、八十八歳の脳血管性認知症の澤部幸吉、色白で品がよく顔立ちもいいが徘徊癖があり意思疎通ができない、九十二歳のアルツハイマー型認知症の青村ルリ子、そして郵便局に毎日同じ時間に行き、二十円を貯金するという、こだわりが強い前頭側頭型認知症の勝田恭助。

千夏が「風の里」に通い始めて二日目に、ルリ子が裏口から抜け出そうとする。
捕まった時に「むかしむかし……あるところに……」と昔話の定型句を口にする。
千夏は気になって確かめようとするが、島守チーフに止められる。

グループホームは千夏からすると刑務所と大差がなく、計画に縛られ、入居者の個性を潰しているように思えた。
しかし島守は和気藹々とした家族みたいなホームなんていうのは、はっきり言って夢だと言い切る。
なんともやるせない気持ちになる千夏。

次にルリ子は警報器のスイッチを切って、脱走を企てる。
捕まったその時も昔語りの定型句を口にする。
ルリ子には外へ行きたい理由があり、同時に、昔語りの定型句を口にする。
千夏はこの二つの間には因果関係があるのかもしれないと思い、ルリ子の日常の様子を調べてみることにする。
すると、ある日、ルリ子は「おろんくち」という謎の言葉を吐く。
「おろんくち」に何かあると思った千夏は文献に当たり、地方の民俗や風習、伝承を調べているサークルに問い合わせのメールを出す。

立原大地は、親に内緒で高校に行かずにブラブラ街を彷徨っている。
彼は母の支配から逃げたかった。自由になりたかった。
このままいくと留年は確定。留年を知った時、母は突き刺さるような言葉で大地を追い詰めるだろう。その時、自分は母親を殺すというとんでもないことをやらかすのではないかと大地は思っている。
彼の唯一の救いは「BBSやまなし」。
ある日、「BBSやまなし」のサイトにいくと、「『おろんくち』という言葉の意味を知りませんか?」という投稿に気づく。
祖母が語ってくれた昔話のなかに、これに似た響きがあったのではないか…。
大地は返事を書く。

やがて大地と千夏は協力して「おろんくち」の謎を解いていくことになる。

面白い観点から書かれたミステリーです。
同時に介護の在り方も考えさせられました。
介護施設は人手が少なく、一人一人に関わっていられない現実はわかりますけれど、認知症になっても人間としての尊厳は認めてもらいたいですよねぇ。
考えると暗くなるので止めますけど。

ヒロインがデブで食べるのが大好き、食べ方が下品なんて、ちょっと可哀想でした。でも老人たちとの接し方がいいんでしょうね。好かれてますから。
変人と言えば、やっぱり法医昆虫学の赤堀先生の方が上でしょう。
会いたいわぁ。
話がそれましたが、民俗学とミステリー、意外と合いましたよ。

久しぶりの大田黒公園2022/11/10

家の周りの散歩と家での有酸素運動だけではつまらないので、ちょっと足を伸ばして、久しぶりに大田黒公園に行ってきました。
門を入ると、振り袖姿の女性たちが写真を撮っています。


業者ではなく、お友だち同士で撮っているみたいでした。
イチョウはまだ色づいていません。


池の方へ行きましたが、紅葉も今ひとつです。
しばらく来なかったので忘れていましたが、11月下旬じゃなければ紅葉しなかったのだったわ。


池の中に一匹、鷺のような鳥がいました。
望遠レンズがないので、真ん中に小さく写っています。
前は鴨がいたのですが、どこに行ってしまったのかしら?


冬が来るので、木に藁を巻いているようですが、これで何か木にいい影響があるのでしょうかね。


お休み処の裏では水が湧いています。
思ったよりも紅葉が進んでいなくて、ちょっと残念でした。

帰りにウロウロして、間違った道に行ってしまいました。
そうすると、数々の欧米の児童書の翻訳を手掛け、『ノンちゃん雲に乗る』を書いた石井桃子さんが地域のこどものために1958年に始めたと言う「かつら文庫」がありました。(写真が曲がってるwww)


こどもしか利用できないかと思っていたら、大人もできるのですね。
調べたら館内の見学ができるらしいので、次回に見学をしてみたいです。

迷いながら歩いたおかげで(笑)、一万歩以上になりました。
週に一回ぐらいは遠出して、人のいないところを歩きたいです。
次にどこに行こうかしら。

吉永南央 『薔薇色に染まる頃 紅雲町珈琲屋こよみ』2022/11/12

紅雲町珈琲屋こよみ・シリーズの10作目。
シリーズがマンネリしてきたと作者が思ったのか、はたまた新しいことに挑戦しようと思ったのか、今回はびっくりする展開になります。
このシリーズは日常生活に潜む謎を探るものだと思っていたのですが。


コーヒー豆と和食器のお店「小蔵屋」を営む杉浦草は、昔手放し後悔した帯留めが戻ってきたと「海図」の店主から連絡を受ける。
ちょうど次の日に仕事で京都まで行く予定だったので、草は帯留めを取りに東京に寄ることにする。

アンティークショップ「海図」は似たようなビルが多い、狭い道が入り組んだところにある。そのためいつも草は道に迷う。
これまで草に道を指し示してくれたユージンという少年がいた。
しかし今回、彼はいない。
「海図」でユージンのことを聞くと、彼が消えたと言う。
彼の父の室橋は暴力団組織に属さない、人に言えない仕事をしている男で、ユージンはネグレクトされていたらしい。
最後にユージンに会った時、自分が死んだらあるものを運んで欲しいと草は頼まれていた。

ユージンからの頼みをやり遂げ、草は新幹線に乗る。
その時、小学校低学年ぐらいの少年が誰かと間違えたのか草の手を握り、二列席に草を引き込む。
少年はジュンと言い、彼の母親のキョウカは彼がどうしても富士山を見るって言っていると言い、ジュンを草の隣の席に座らせ、自分は三人掛けの席につく。

しばらくしてキョウカはトイレに行く。
不穏な声が聞こえ、キョウカが戻って来て、京都のホテルにジュンを匿ってくれ、すぐに迎えをやるからと言い捨てると、前のドアから出て行った。
キョウカはホームで二人の男に捕まれていた。
草とジュンは男の一人に顔を見られてしまう。

泊まる予定のホテルに電話し、一人増えると告げると、男が訪ねてきたと言われる。草はホテルをキャンセルし、京都ではなく新大阪で降りることにする。
草とジュンの逃避行が始まる。

ユージンとジュン、キョウカの関係は、そして彼らは誰から逃げているのか。
草たちは逃げ切れるのか…。

草さんって和装のおばあさんですよね。
そんな彼女が機転を利かせて、追っ手と警察の裏をかいていきます。
もちろん彼女一人ではできませんから、仕事仲間や紅雲町の仲間に手伝ってもらいます。
「小蔵屋」の従業員の久美ちゃんは状況がわからずヤキモキしています。
そうそう彼女と彼氏さんの間には色々とあるんですねぇ。

新鮮ではありましたが、わたしは紅雲町で起る毒のある事件の方が好きです。
あまり草さんに無理をさせないで下さいね。お願いします。

「アガサと殺人の真相」を観る2022/11/13



大田黒公園ではまだ緑だったイチョウの葉がここでは散っています。
日当たりの違いかしら?


兄が水を飲んでいるところを撮ろうとすると、弟が割り込んできました。
弟はいつも兄の邪魔をして、水を独り占めしようとする悪い子ですww。


1926年12月にアガサ・クリスティは11日間失踪しました。
その間に彼女がどこにいて、何をしたのかはわかっていません。
あなたならどんなことを想像をしますか?
それをドラマにしたのが、この「アガサと殺人の真相」です。


1926年12月、アガサ、36歳。

アガサは執筆に行き詰まり、シャーロック・ホームズ・シリーズで知られているアーサー・コナン・ドイルに相談に行く。
アーサーはゴルフをしており、アガサは無理矢理ゴルフをやらされ、やっとスランプの時にしたことを教えてくれる。それはゴルフ場の設計だという。

書斎で離婚を言い出した夫と言い合いをしている時に、秘書のカルロがメイベル・ロジャースという元看護師が面会しに来ていると告げる。
彼女はアガサに六年前に友人のフロレンスが殺された事件の謎の解明を依頼する。
アガサは断るが、メイベルは資料を置いていく。

アガサはアーサーの助言通りにゴルフ場の設計をしてみようと思い、専門家のところに行くが、女に設計はできないし、設計の依頼は来ないとすげなくされる。

その夜、書斎の絨毯の染みを取っていると、メイベルが置いて行った資料が目に入り、アガサは読んでみる。
事件に興味を持ったアガサは早速メイベルに会いに行き、詳しい話を聞き、依頼を引き受けることにする。

アガサは架空の大富豪ダワー氏の遺産相続を口実に、事件の容疑者たちを屋敷に招くことにする。
アガサは法廷代理人のメアリ・ウェストマコットに、メイベルはダワー氏の家政婦に扮することにする。
容疑者は五名:いとこのランドルフとフロレンス殺しの元容疑者のトラビス・ピッグフォード、患者を殺しかけた看護師ダフネ・ミラー、帰還兵でフロレンスが亡くなる前に会いに来ていたザキ・ハナッチ、フロレンスが殺された日に会いに行く予定だったローズ夫人。
ダフネには父親のウェイドが、ローズ夫人には息子で元従軍牧師のフランクリンが着いて来ていた。

アガサはまずダフネたちと面談をする。
その時にウェイドの言った言葉からアガサは彼をフロレンス殺しの犯人だと断定。他の容疑者たちにはダフネが遺産の大部分を相続すると告げる。
ところがウェイドが殺される。
やってきたディックス警部補はクリスティ女史が行方不明のため、彼女の捜査に五千人の警官がかり出されているので、人出が足りなく、三人しか来られなかったと言う。

果たしてアガサはフロレンスとウェイドを殺した犯人を見つけ出せるのか。

謎の11日間にアガサが殺人事件の犯人捜しをしていたというのは、面白い発想ですね。
それにしても彼女を探すために五千人もの警察官が動員されたなんて、本当のことなのでしょうか。
それほどクリスティは有名だったのでしょうか。今なら考えられないですよね。

アガサを演じていたルース・ブラッドリーは特に眼鏡をかけて変装した姿が可愛かったです。変装になっていたのかどうか、疑問ですけどね。
だってディックス警部補にすぐに見破られていましたから、笑。
アガサが犯人を間違えたりするのもよかったです。

暗いシリアスな映画だと思って観ましたが違いました。
茶目っ気のあるアガサが観たい方は是非ご覧になってください。

シリーズで他に「アガサとイシュタルの呪い」と「アガサと深夜の殺人者」があるようです。アガサ役が毎回違うそうですよ。

ローラ・チャイルズ 『クリスマス・ティーと最後の貴婦人』2022/11/15

「お茶と探偵」シリーズの23巻目。


クリスマスの一週間前、インディゴ・ティーショップのオーナーのセオドシア・ブラウニングはミス・ドルシラ・ヘイワードのお屋敷で開かれるクリスマスパーティのケータリングを任されました。
ところが、ミス・ドルシラはセオドシアに一部のお金を六つの慈善団体に寄付するつもりだと話した後に殺されてしまいます。
彼女の指にはめられていた5つの指輪とルノワールの絵が盗まれていました。
ミス・ドルシラは慈悲の精神と公徳心に溢れた人で、数え切れないほどの芸術関連組織や非営利団体に寄付をしてきた、チャールストンに残った昔ながらの貴婦人の最後のひとりと言っていい人でした。

翌日、殺人事件大好き人間のセオドシアとティー・ブレンダーのドレイトン、シェフ兼パティシエのヘイリーは、仕事の始まる前のティールームで昨夜のミス・ドルシラ殺害のことを話します。
ランチタイムにやって来たティドウェル刑事から検死のことを聞き出します。
あんなにセオドシアが事件に関わるのを嫌がっていたのに、ティドウェル刑事はとうとう諦めたのでしょうかね。
お茶の時間にミス・ドルシラの秘書ポーリーン・スタウバーがやって来て、セオドシアにミス・ドルシラを殺した犯人を突きとめて欲しいと頼みます。
なんとセオドシアはチャールストン版のミス・マープルなんですって。
もうセオドシアを止められません。
恋人の刑事ピート・ライリーの心配なんかものともせず、犯人を突きとめるまで、セオドシアは突き進んでいきます、笑。

いつもわたしが楽しみにしているのが、殺人事件ではなくて、お茶会です。
今回はクリスマスの時期ですから、すごいですよぉ。
クリスマスまでの一週間の間に、くるみ割り人形のお茶会、ホワイトクリスマスのお茶会、南部風のお茶会、ヴィクトリアン・クリスマスのお茶会があるんですから。
この中でヴィクトリアン・クリスマスのお茶会をご紹介しましょう。

予約が多すぎたため、<ダヴ・コート・イン>のエセックス・ルームを借りることになったようです。
外にランプを置き、お茶を出すあいだ、役者が短い寸劇を行います。
テーブルには白いリネンのテーブルクロス、レースのプレースマット、レノックスのエターナルクリスマス・シリーズのお皿とカップ、ゴーハムのバターカップのデザインのスプーンとフォーク、白いバラと白いピラーキャンドル、大きなシルバーの燭台、真珠のネックレスやヴィクトリア朝風ロケット、シルクでできた人工観葉植物…。
音楽はギルバート&サリヴァンによる『ヴィクトリア朝とメリー・イングランド』など。

一番楽しみなのは、食事ですよね。
まず最初が、シナモンとクローブの風味が特徴のトワイニングのクリスマス・ティーとジャムとレモンカード、クロテッド・クリームを添えたレモンクリームのスコーン。
二品目はチャールストン風チャウダーと海老サラダのティーサンドイッチ。
メインディッシュは牛ヒレ肉の蒸し煮と付け合わせのコーンブレッド。
最後にプラリネチーズケーキ。お茶は<プラム・デラックス>のトーステッドナッツブリュレ風味の烏龍茶。

想像しただけで、涎が出てきます…。
こういうお茶会に行ってみたいです。

そうそう、お茶会もよかっのですが、可愛いわんこたちが登場しました。
お騒がせ女のデレインのせいで、セオドシアは愛犬アール・グレイの他に六匹の保護犬を預かることになっちゃいます。
二匹でも大変なのに、六匹も犬が増えたらどうなるのか。
考えたくないですわ。


「ママちゃん、呼んだ」と弟犬が出てきました。
「呼んでないわよ」とお引き取りしてもらいました。
彼のような犬が六匹もいたら、家の中は〇んちとお〇っこで汚れ、遊んでやらなければならないので、一匹30分で三時間もかかり、散歩も入れると…(溜息)。

山本文緒 『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』2022/11/17

山本さんは昨年の十月に膵臓癌でお亡くなりになりました。
享年58歳でした。
わたしは彼女の本は『再婚生活 私のうつ病闘病日記』(2007年5月)しか読んでいませんので彼女のことはよく知りませんが、『再婚生活』を読む限りではとんでもない日常生活を送っていました。
タバコを吸うし、遊びに行くと午前様は当たり前、油物の多い食事をしていますよ。脂肪の取りすぎって膵臓に悪いのではなかったかしら。
この時に煙草とお酒を止めたといいますが、癌などの病気になるのは若い頃の生活状況が関係するのかしら…。


山本さんは2020年の終わりぐらいに胃が変だと思い始め、年が明けてから痛みと胸焼けがひどくなり、三月上旬に検査で慢性胃炎と診断されます。
しかし痛みはおさまらず眠られなくなり、血液検査をすると、γ-GTPが千を越していたため大きい病院で診てもらいます。
そして膵臓がんのステージ4という診断が下されます。
既に転移があり、抗がん剤で進行を遅らせることにしますが、山本さんに抗がん剤は合わず、化学療法はしないことにします。
余命を主治医に聞くと、半年、抗がん剤が効いたとしても9ヶ月だということでした。
本の副題の120日とはセカンドオピニオンの医師がいった予後4ヶ月のことです。

膵臓がんが分った時には再婚した夫さんは会社を早期退職していました。
うつ病の時には休職までして支えてくれた彼でしたが、今回も山本さんのために東奔西走してくれます。

「突然20フィート超えの大波に襲われ、ふたりで無人島に流されてしまったような、世の流れから離れてしまったような我々」

山本さんと夫さんの関係がとても好ましく思えました。
彼女の選んだのが、在宅での緩和ケア。最期まで夫さんと二人がいいんですねぇ。

山本さんは抑えた表現で淡々と書いています。

「せめてこれを書くことをお別れの挨拶として許してください」

許しなんて求めなくてもいいのに。
最期まで書き続けることが作家の性なのでしょうね。

本島に帰った夫さんは元気にしているのかなと、ちょっと気になりました。
山本さんがいなくなっても夫さんは彼女と暮らした軽井沢の家で暮らすようです。
わたしは山本さんが書いているように夫がいなくなったら今の家では暮らさないと思います。

最期まで泣き言を書かなかった山本さんは、気配りのできる強いお方だと思いました。

ご冥福をお祈りいたします。