ヘニング・マンケル 『霜の降りる前に』2023/01/13



この本の主人公はまもなく30歳になるクルト・ヴァランダーの娘のリンダ・カロリン・ヴァランダーです。
彼女はストックホルムの警察学校を終えたばかりで、二ヶ月後に父親の勤めるイースタ署で警察官実習生として働くことになり、それまで父のアパートに厄介になっています。
リンダは早く仕事をしたくて苛立っていますが、予算がなく、仕事は9月10日からしかできません。
暇な時間を潰すため、リンダは十代のころの友だち二人とのつきあいを復活させます。
一人はイラン出身のセブランで、シングルマザー。もう一人は医学部で勉強しているというアンナ・ヴェスティンで、彼女の父親は彼女が5歳か6歳の時に妻と娘を捨てて姿を消しています。

ある日、ストックホルムから戻ったリンダは、アンナから大事な話があるから電話が欲しいというメモを見て電話をします。
電話に出なかったのでアンナの家まで行ってみると、アンナの様子が変です。
彼女は二十四年前にいなくなった父親をマルメの街中で見かけたと思うと言うのです。
半信半疑のリンダはアンナに一晩よく考えるように、次の日の五時に会おうと言って帰ります。
しかし次の日、アンナはいなくなります。
彼女のことが心配なリンダは母親のヘンリエッタに電話をしますが、ヘンリエッタはアンナの行方もアンナが父親を見かけたことも知らないようでした。

その頃、ヴァランダーは白鳥が燃やされ、牛が燃き殺されるという事件に関わっていて、サディストか動物虐待者の仕業ではないか、動物だけで終わらないのではないかと危惧していました。

なかなかアンナが見つからないことに業を煮やしたリンダは、ヘンリエッタの家に押しかけ、彼女が真実を話していないと思い、ヴァランダーの忠告をものともせず、アンナを探し続けます。

やがて文化地理学者の女性が行方不明になり、アンナの日記の中に彼女の名前を見つけたリンダはこの女性とアンナの間に何らかの繋がりがあることを確信し、調べていきます。
ヴァランダーはリンダの勝手な行動に激怒します。

ヴァランダーと父親も相当でしたが、リンダとヴァランダーも似たもの親子ですね。
どちらもすぐにカッとなり逆上し怒鳴り合うし、警察の規則をものともせず、勝手な行動をとるし…etc.。
ヴァランダーは経験があるからどうにかなってますが、リンダはまだ駆け出しのペーペーですよ。この先が思いやられます。

前作で心配だったヴァランダーとマーティンソンの関係でしたが、リンダの視点から書かれているためか、これといって何もありませんでした。
マーティンソンはリンダに知られ、ヴァランダーに告げ口されるのが嫌なのかな?

そういえば警官の父と娘というミステリーはよくありますが、警官の父と息子っていうのはあまりないように思いますが、どうでしょう。

ヴァランダー・シリーズも後二冊になりました。
名残惜しいです。