穂波晴野 『吉祥寺うつわ処 漆芸家・棗芽清乃の事件手帳』2023/02/08



英明大学二年生の花岬麻冬は岐阜県から吉祥寺に引越してきた。
一年が経っても回りから浮いていて、友だちは出来ない。

「第一章 割れ」
麻冬は考古学演習Ⅰの講義課題である土器のスケッチを修正しようと思い早朝博物館に行くと、展示室にあった土器が割れていた。
展示室には麻冬以外の人はいなかったので、教授は麻冬の弁明を聞こうともせず、彼女が土器を壊したと断定し、みんなの前で非難した。

ある日、吉祥寺をうろついている時に、麻冬は店頭に<壊れモノ、繕います>というふしぎな張り紙を見つける。
それは陶磁器を扱う店で、店主は棗芽清乃という整った造作をもつ美人だった。
店では販売のほかに修繕サービスもしており、清乃は<金継ぎ>をしてうつわを直しているという。
清乃から金継ぎのやり方をみせてもらった麻冬は土器を直せないかと思い訊いてみるが、難しいといわれる。
麻冬が何か困っている様子に気づいた清乃に尋ねられ、麻冬は教授に土器破壊の犯人扱いをされ、大講義室で白い目で見られたことを話す。
そうすると清乃は話を聞いただけなのに真相の目星がついたので、自分に出張修繕を依頼するようにしろと言い出す。

「第二章 ひび」
麻冬は木蓮陶房でアルバイトを始める。
仕事は接客と清掃、店舗事務などで、負担は軽いのに給与は高い。
清乃は職人気質で、金継ぎに集中すると寝食を忘れがちな人で、麻冬は心配している。

ある日、高取さくらという小柄なお婆さんが店にやってくる。お猪口を直して欲しいというのだ。
お猪口には<ひび>が入っていて、傷が深いので、清乃は一度割ってから金継ぎで修繕する方法をすすめた。しかし高取は割りたくないといい、悩む時間をくれと言ってうつわを置いて帰っていった。

別の日、店のブログを見たと言って波佐見椿姫という車椅子に乗った女性がやってくる。
金継ぎをしたうつわを見てみたいというので見せていると、高取の置いていったお猪口を手に取り、どこで手に入れたのか尋ねてくる。
清乃は波佐見が高取のことを知っていると確信する。

「第三章 欠け」
麻冬は上京してからずっと吉祥寺東分寮で暮らしている。
ところがこの学生寮が火事になってしまう。
泊めてもらえそうな友だちもいない麻冬は途方に暮れて駅前広場に立っていると、<朧月夜>の板前見習いの逸流と遭遇する。
彼に事情を話すと、清乃に電話をしてくれ、麻冬はしばらく清乃の家で世話になることになる。

ある日、ポストに<棗芽清乃は大罪を犯した>と書かれたコピー用紙が入っていた。麻冬はたまたまやって来た逸流に協力を求めることにする。
それから連日、同じことが印刷されている紙がポストに投函される。
一体誰が脅迫状を送っているのだろう。
麻冬は自分が清乃のことを何も知らないと痛感する。

陶器に関するミステリーかと思って読み始めたらそうではなく、一般的な日常に潜む謎ものでした。
孤独なワケあり女子大生が美人で聡明な金継ぎ職人女性と仲良くなっていくという、よくありそうなお話ではありますが、嫌いではないです。
ただし第一章で、土器を割った犯人がちゃんと罪を償ったのかどうか曖昧なのが気になりました。
次回の展開がどうなるのかに期待して待ちますわ。

<今週のわんこ>


新しいおもちゃに夢中のヨーキー。


カットしても乱れ髪です。

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