櫻田智也 『蝉かえる』2023/03/04

魞(「エリ」は魚偏に「入」)沢泉シリーズの第二弾。
実はこちらの方を先に読み、後から『サーチライトと誘蛾灯』を読みました。
この本は第74回日本推理作家協会賞と第21回本格ミステリ大賞を受賞しています。


「蝉かえる」
糸瓜京助は山形県西溜村にある<御隠神社>を再訪する。
そこで蝉を食べるという男女に出会う。女は長野県の上高地大学で昆虫学の研究をしている鶴宮で男は魞沢泉。
糸瓜は十六年前の震災直後にこの村にボランティアできていて、ここで行方不明になっていた女児の幽霊を見たという。
鶴宮に請われて糸瓜はその奇妙な体験を話す。

「コマチグモ」
市営元町団地の部屋で女性が倒れているという通報があり、救急車と県警吉良警察署の捜査一課の刑事が急行する。
発見者によると、一緒に暮らしている娘は帰宅しており、発見者が119番に電話した後、部屋から出て行ったという。
娘はその三分後に団地から二百メートルほど離れた交差点でミニバンに撥ねらていた。
娘はその日の学校の帰宅途中、友人と待ち合わせをしていたのにもかかわらず公園で大きな水たまりに石を投げて遊んでおり、その後見知らぬ男性とススキをみていたという目撃証言があった。
男性は魞沢と名乗り、このあたりにある女子中高生に人気のクレープ屋のクレープを買いにきたというが…。

「彼方の甲虫」
瀬能丸江(『サーチライトと誘蛾灯』の「ホバリング・バタフライ」に登場)は昨年自宅を改装しペンションにした。
秋の行楽シーズン前に瀬能に招待され、魞沢はペンションを訪れる。
魞沢以外に客は日本の大学院で学位をとってまもなく帰国予定のアサル・ワグディという中東の男性のひとりだった。
翌朝、アサル・ワグディは湿地帯の丘陵地で遺体となって発見される。

「ホタル計画」
サイエンス雑誌『アピエ』の編集長の斉藤ことオダマンナ斉藤に北海道に住む中学生で常連投稿者のナニサマバッタから電話が来る。
彼によると繭玉カイ子がいなくなり、彼に自分に何かあったらオダマンナ斉藤に連絡してほしいと言われていたという。
斉藤は東北新幹線に飛び乗り、北海道に向かう。
カイ子は『アピエ』の元ライターで、五年前に行方をくらましていた。
斉藤はナニサマバッタに案内されカイ子の家に行き、カイ子が大事なものは『アピエ』の中にはさんでおくというので探してみると、ネガがはさまっていた。
ネガに写っていた白衣の男性は大学の研究者で、急死していた。
彼の死とカイ子の失踪は何か関係がありそうだと思った斉藤は大学の研究室を訪れる。

「サブサハラの蠅」
医師で<越境する医師たち(MFF)>のメンバーの江口は日本に帰国する時にツェツェバエのサナギを持ち帰る。
彼と同じ飛行機に十数年ぶりに再会した大学の友人の魞沢が乗っていた。
それから数ヶ月後、魞沢は江口のクリニックにやって来る。
MFFを辞めた江口はある計画を立てていて、魞沢はそれを止めに来たのだ。

今回わかった魞沢君のこと。
中学校の時、北海道に住んでいた。
小さい時から虫好きで、投稿マニアというちょっと変わった子で、切れ者なのは昔からなのですね。
大学時代は学生寮に住んでいて、医学部の江口がよく遊びに来ていたことを考えると、友だちがいないわけではなさそう。
わざわざ中高生女子に人気のクレープを買いに行くというように意外と流行に敏感で、甘いものに目がないのね。
彼は一見人と上手くやっていけそうもないのですが、実は人たらしという感じ。
法医昆虫学者の赤堀先生ほど変人ではないかも、笑。

今回は前回よりも虫にまつわる事件が多くなったようです。
短編で読みやすく、昆虫学だけではなく民俗学やら医学やらが散りばめられていて、面白いです。
どこから読んでも問題ないので、興味を持ったお話から読んでみてはいかがでしょうか。


<今週のおやつ>
また体重が減らなくなっています。チョコのせいかもwww。


紅マドンナ(たぶん)とロイヤルクイーン苺にチョコがついたもの。
量が多くないので、大丈夫かと思いますが…。

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