明利英司 『海原鮮魚店のお魚ミステリー日和』2023/03/06

魚に関するミステリーって珍しいと思って読んでみました。
主人公は表紙の真ん中にいる女性だと思ったら…。


山中幸太、24歳。
宮崎県から上京し、東京の大学に通い、卒業したというのに、未だアルバイト暮らしを続けている。
帰省した時に父親からいつまで東京にいるんだと聞かれ、ついつい言ってしまった。「俺のやりたいことは東京でしかできない。料理人になりたい」と。
そんなの嘘よ~ん、笑。
料理さえまともにしたことがないのに、なれるはずないわ。
お父さん、まともに受けちゃって、自分の息子のことを知らないのねぇ。
自分が東京の大学に通っていた頃にちょくちょく通っていた店を息子に紹介するんだから。

というわけで、幸太は父から紹介された一品料理屋≪天倉≫という隠れた名店でバイトをすることになります。
このお店は店主の天倉五助と妻の文子が二人で営んでいるのですが、そろそろお年で手伝いが欲しいなぁと思っていたところに話が来たので、運良く(?)幸太が雇われたのです。
しかし料理人になんかなりたくない幸太ですから、料理人の修行はせずに適当にしばらく働き、切りのいいところで辞めようと思っています。
そういういい加減な奴ですが、仕事だけは手抜きをせずに真面目にやります。
幸太、おマヌケ(失礼)だけど、いい奴です。

そんな幸太ですが、出入りの魚屋「海原鮮魚店」の娘の波美と親しくなってから気持ちが少し(ほんの少しよ、笑)変わっていきます。
波美は22歳、元気のいいお魚命の女性。
みなさん、幸太は頼りになりそうもない奴だから、誰が謎を解くんだと思っていたでしょう。
そうです。波美がこの本の探偵役です。
彼女は魚に関する知識はもちろんのこと推理力も抜群なのです。

お話は6篇。それぞれ美味しそうなお魚が出てきます。
真牡蠣、サーモン、婆鰈、脂坊主、鮎、伊勢海老。
脂坊主は食べたことがあるかどうか記憶にないのですが、他の魚は美味しいですよね。
幸太は魚は滅多に食べないようですし、そうそう、何故か賄いも食べないのです。
私だったら、喜んで賄いを食べますけどね。不思議な子です。

≪天倉≫で働きたかった板前志望の女性と幸太は真牡蠣対決をしたり、波美と二人で、というか主に波美がですが、回転寿司で母と娘の不正を暴き、常連客の友人の危機を回避させ、幸太がバイトしていたスーパーで働いていた女性の謎を解き、旅先で出会った男性の冗談をまともにとった幸太の馬鹿さ加減を思い知らせ(ウソよん)、最後には幸太が波美の悩みを解決していきます。
冗談で波美は「結婚しようよっ」と言いますが、二人は結構合っているかも。

思ったよりもページ数がありますが、面白くて、サクサクと読んでいけますので、お魚ミステリーってどんなものかと興味のある方は是非読んでみてください。
シリーズになったら続けて読んでみたいお話です。