有馬美季子 『お葉の医心帖』&『お葉の医心帖 つぐないの桔梗』2024/06/05



「第一章 壊れた心」
長月(九月)。両親を流行り病で亡くし、奉公先で酷い虐めに遭い、絶望の果てに命を絶とうと、川に身を投げたお葉は、本道(内科)の医者である挙田堂庵に助けられる。
行くところのないお葉は堂庵の診療所に置いてもらい、少しずつ堂庵の仕事を手伝うようになる。

「第二章 繊細な肌」
神無月(十月)。日本橋瀬戸物町の飛脚問屋のお内儀、お久が娘のお澄を連れてやって来る。娘は顔と手が酷くかぶれていて、真っ赤になっていた。
堂庵から教えて貰い、お葉はお澄のために潤肌膏を作る。
お澄に悩み事があるように思うお葉。
お葉は堂庵から教えて貰った『医心方』にならい、≪いしんちょう≫を作り、学んだことを書いていくことにする。

「第三章 男たちの懐」
霜月(十一月)。短刀で刺された患者が運び込まれる。幸い命に障りはなかったが、養生部屋でしばらく様子をみることになる。
患者は北町奉行所定町廻り同心の野木謙之助で、財布を掏られたお爺さんをたすけようとして、掏摸に向かっていって刺されたという。
掏摸に遭った男は佐久間町の米問屋の大旦那で、掏摸に突き飛ばされて腰を打ち、動けなくなっていた。
堂庵は店まで行き、治療する。

「第四章 決意の時」
師走(十二月)。紺屋町で紺屋<井筒屋>を営んでいるお留という女が、嫁の産後の肥立ちが悪いと往診を頼みに来る。
井筒屋に行ってみると、嫁のお光と子の松太郎は床に臥しており、お光の顔色は思った以上に悪かった。
お葉はお光が姑にに意地悪をされているのではないかと思う。

「終章」
大晦日。同心の謙之助が手土産を持ってやって来る。
彼の両親は二人で箱根に湯治で行ってしまったというので、堂庵たちは彼と一緒に過ごすことになる。


「第一章 恋の痛み」
文政七年(1824年)睦月(一月)。
診療所に武家の娘と腰元がやって来る。娘は旗本の家柄で、十七歳。二日前に中条流の医者にかかって子を堕ろしたが、酷く傷ついてしまい、出血が止らないという。娘の患部は、前門(陰部)から後門(肛門)のあたりまで、裂けているかのように切り傷ができていた。
しばらく預かることにするが…。

「第二章 俺の弔い」
如月(二月)。謙之助が夜の見廻りをしていたところ、診療所の近くで男が急に倒れたといって、男を連れてくる。どうも卒中のようで、酒を飲んでいる時に、頭が痛いと言っていたらしい。
その男は今をときめく人気噺家の宵町亭円丞で、身振り手振りを交えての勢いのある芸で、絶大な人気を博していた。
卒中はもとのとおりに戻るのは難しいが、障りなく暮らせるが、前のような芸ができるかどうかわからなかった。

「第三章 日溜まりの庭」
弥生(三月)。向島の寺嶋村の寮に住む、もとは油問屋の大旦那だった角右衛門の下男、三五郎がやって来る。
角右衛門はこの頃、よく転び、昨日、階段から落ちて、動けなくなったという。
往診に行くと、広い庭のある家に大旦那と三五郎の二人で住んでいた。
少しボケているようで、十年以上も会っていない次男のことをよく口に出すという。

「第四章 命の重さ」
卯月(四月)。診療所にかつてお葉をいじめ抜いた、呉服問屋の内儀、多加江がお砂という下女と共にやって来た。
三月ほど前から腰の痛みが酷くなってきて、いろいろな先生に見てもらったが、治らないという。淋疾(膀胱炎)らしく、往診に行こうかと尋ねると、治るまで家人や使用人には隠し通したいという。
帰り際に多加江はお葉を強い口調で咎めた。そのためお葉はいじめられた時のことを思い出してしまう。
四日後にやって来た多加江は言いつけに背き、酒を呑んでいた。二年近く呑んでいると聞き、堂庵は腎ノ臓が痛んでいるのではないかと推測し、養生部屋で預かることにする。
お葉はかつて憎んだ多加江を看病することになる。

「終章」
皐月二十八日、お葉は堂庵と産婆のお繁、そして堂庵の元弟子の源信と一緒に両国の花火を見に行く。露店を見ていると、夜の見廻りをしている謙之助と出会う。
どうも源信は謙之助にライバル心を抱いているようだが、お葉は花火に心を奪われていた。

おばの裏切りにより、人を信用できなくなったお葉が、堂庵たちと出会い、また人を信じられるようになります。
そして、堂庵のような患者に寄り添う医者となるという夢を持ち、真摯に患者たちと接していくうちに、人として成長していきます。
虐められた過去を克服できたのはよかったです。
多加江はなんとも怖い人ですねぇ。虐めの場面を読んでいると、心臓が痛くなりました。それにしてもそう簡単に人は変れるものでしょうか。

源信と謙之助のどちらにお葉の心は動くのでしょうね。
武士の謙之助と結ばれるためには、一旦武士の家に養子に行かなければなりませんし、医者を続けることは難しいですよね。
源信となら、源信が許せば、二人で診療所をやっていけます。
でも、堂庵とお繁と一緒に診療所を続けるというのが、一番面倒がなくていいかもしれませんね。

一冊で四月分みたいなので、次の三作目で終わりなのかな。
次回はお葉を巡る恋模様でしょうか。
二作目が早く出たので、三作目もすぐに出そうです。
楽しみにしています。

<今週の美味しいもの>


ゴントラン・シェリエのクロワッサンやバゲットなど。
新宿のお店は狭く、品数はそれほど多くなかったです。
クロワッサンは5分ぐらいトースターで温めるといいと書いてあったので温めてみると、外側の皮がサクサクして美味しかったです。