内藤了 『COLD 警視庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花』&『メデューサの首 微生物研究室特任教授・坂口信』2024/06/08



シリーズの四作目。民俗学的要素の入ったミステリで、今回は「雪女」伝説。

警視庁特捜地域潜入班の通信官である万羽福子は東京大学で行われた『死亡診断に係る講習会』に参加する。
旭川総合医療大学の法医学者の講義『偶発性低体温症による死亡の診断』で、福子は写真に写っている、昨年、凍死した六十代ぐらいの男性の遺体の耳の後ろに三つ赤い痣があるのに気づく。凍傷の痕かと質問すると、法医学者は死因とは関係ない生前にできた痣、例えばキスマークのようなものだと答える。
福子は別の勉強会でよく似た痣を見たことを思い出していた。

東大の研修会の後、福子は『遭難死』というテーマを扱う勉強会でもらった資料を探し出し、三年前、スキー場で死亡した四十代くらいの男性の遺体にあった三つの痣と東大の遺体の痣が酷似しているか確認する。
そこに潜入班の班長、土井火斗志がやって来る。
何が気になるのか訊かれ、富山出身の福子にとってキスと言ったら雪女で、痣が指の痕に見えないかと土井に尋ねる。
すると土井は痣の理由を調べてみようと言い出す。

次の日、潜入班のメンバーは本庁の資料検索室に呼び出され、福子から二つの遺体の写真を見せられる。双方の遺体には同じ部位に同様のマークがあり、痣を重ねると、ピッタリ合ったのだ。
潜入班は全国の警察署データを当たり、首に痣がある凍死体を探すことになる。

記録を調べているうちに、連絡係の丸山勇の様子がおかしくなる。
彼は一身上の都合で有給を取る。
一体彼に何があったのか?

やがて、三つの痣を持つ第三の凍死体が見つかる。
二年前の冬、四十八歳の女性が公園で凍死していたのだ。
北海道、福島、岩手と、三人全員が東北以北で死んでいて、雪女みたいな女が目撃されていた。

潜入班は現地に飛び、捜査を始める。

やっとまとまってきた潜入班も途中で勇が抜けてしまい、これまでかと思ったら、最後は家族のようにまとまりましたね。
四人が四人ともに、訳アリっぽいです。福子さんにも隠された過去があるのかな?
そうそう、福子さんが50歳ぐらいなんて、意外とお年だったんですね。
次回も同様に福子さんが活躍してくれるとよさそうです。

シリーズの順番を載せておきます。
④『COLD 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花』


帝国防衛医大の特任教授・坂口信は、八十三歳で亡くなった恩師の如月の妻から呼び出され、自宅にお邪魔する。
奥さんは遺品を整理していて、鍵のかかった研究データを見つけたので、役に立つかどうか調べて活用してもらいたいというのだ。

坂口が仕事の合間に恩師のデータを確認していると、ホルダーの裏側に隠すようにしてあるCDを見つける。
それは映像データで、如月が保管庫の奥にサンプルをしまう映像が写っていた。
助教の二階堂と保管庫責任者の黒岩准教授と三人で保管庫の棚列を探っていくと、如月のサンプルは映像のとおりに凍結保存されていた。

数日後、黒岩が興奮して現れ、如月のウイルスを感染させた実験用マウスが全滅したと言ってくる。
しかし、坂口が見に行くと、死んだはずのマウスが生き返り、共食いを始める。
ウイルスはインフルエンザの感染力と狂犬病の致死率を持つ、ゾンビ・ウイルスと呼ぶべきモノだった。
ワクチンはなく、感染すれば凶暴化した後に自らをも喰らって死ぬのだ。
坂口は処分することにする。
しかし、妻が倒れたという連絡があり、坂口は処分を二階堂と黒岩に頼む。

妻が亡くなり、やっと日常を取り戻しつつある時に、坂口の家に二階堂が来て、黒岩が急に亡くなったと告げる。
葬儀の後、坂口は神社の森の中で女に話しかけられる。
女は警視庁刑事部捜査支援分析センターの海谷と名乗り、黒岩のことを調べているという。
坂口は知らなかったのだが、黒岩は真夜中に散歩に行き、発見されたのが午前三時過ぎで、顔や手は指を噛みちぎろうとしたみたいに血だらけだったそうだ。

黒岩の葬式の翌日、坂口は二階堂からとんでもないことを知らされる。
廃棄したはずの、あのウイルスのクライオチューブが一本足りないというのだ。
保管庫をくまなく調べても見つからない。
黒岩はチューブを持ち出したのか?

そんな時に電波ジャックが起り、ビルの巨大モニターに大学で撮ったウイルスに感染したマウスのビデオが写る。
首相官邸にゲーム開始を宣言するメールが送られてくる。
解答者は内閣総理大臣。
解答を間違うと起爆するというが、送られてきた問題は正解のないものだった。

犯人の目的は何なのか?
ゾンビ・ウイルスは犯人の手に渡っているのか?

坂口は警察を当てにせず、ウイルスを探しに駆けまわるが…。

主人公がなんと六十五歳の大学教授。
妻が亡くなってからの生活がわびしいです
米とぎに洗剤を入れるなんて、ありそう。
某有名校の生徒が家庭科の料理実習で実際に洗剤を入れて研いでいたと聞いたことがありますものww。
私は黒岩よりも二階堂が怪しいと思っていましたが、全く予想が外れました。
いつウイルスがばらまかれるのか、ドキドキしながら読み進みましたが、最後はな~んだで終わってしまいました。
出てくる人たちのキャラがよくて、それがうまく活用できていないのが残念です。
はねっ返りでハブられているらしい警視庁刑事部捜査支援分析センターの海谷やら大学の守衛のジジイたち、俗名「ケルベロス」、そして、元生徒でライドシェアをしているというチャラなど、いいキャラしてます。
シリーズになるなら、この人たちを上手く使って欲しいですね。

内藤さんは他にもシリーズを書いているので、読んでみようかと思っていますが、何しろ本が溜まっているので、読めないかも。
ちょっと変わったミステリがお望みなら、読んでみて下さい。

<今日のおやつ>


夏みかんの大福を買ってきました。
酸っぱいかと思いながら食べてみると、甘かったです。