遠藤彩見 『虹を待つ 駆け込み寺の女たち』2024/06/28

ちょっと忙しいので、一冊だけ紹介します。


鎌倉の東慶寺と同じ縁切寺で有名なのが、上州満徳寺です。
現在の群馬県太田市にあります。
日本橋から歩いて二日かかると書いてありますが、googleさんによると徒歩17時間強みたいです。
すごいですね。一日8時間以上歩き続けるとは。それだけ離縁への気持ちが強いということですね。歩かない場合は駕籠を使っていますけどww。
寺には尼住職の慈白と尼弟子の智栄、寺男の慶造、そして寺役人がいます。
寺に次々と訳アリ女たちが駆け込んできます。
さて、どういう人たちなのでしょうか。

第一話 妻の鏡
なつの亭主、大工の倉五郎は陽気で優しい男だったが、祝言から一月が過ぎたあたりから帰りが遅い夜が増えてきた。不思議に思って仲人に相談すると、倉五郎は玄人女と遊ぶのが好きで二十五まで独り者だったということがわかる。
結婚し心を入れかえたのかと思っていたら、さにあらん。倉五郎は仕立屋のはるという女と逢い引きをしていたのだ。
なつはお試しをするために満徳寺に駆け込むが、そこに夫の情女のはるがいるではないか。一体、何故?

第二話 小姑の根っこ
しずは亭主の岩吉と八つの娘のひさ、岩吉の両親と貧しいながらも穏やかに暮らしていた。しかし、夫を亡くした義姉のひさが息子二人を引き連れて出戻って来てから生活が変わる。
ひさは働かない上に義父母を通じて小遣いをねだるので、岩吉としずの負担は増え、夫婦喧嘩が絶えなくなってきた。
二年間我慢に我慢を重ねていたが、娘のおみよに義姉たちが自分たちのやるべき仕事を押しつけるようになっているのを見て、しずは決心した。

第三話 箱入り娘の呪い
十七歳の宇多は十歳年上の米問屋の跡取り、磯右衛門に嫁いだ。
大地主の箱入り娘で大人しい宇多には商売人の家は荷が重く、姑の言うことがことごとく不器用な宇多を嘲るように感じられるようになっていく。
祝言から二月経った頃、宇多は彼女をこっそり見張る人がいるとか、磯右衛門が幼馴染みの女と浮気をしており、宇多に毒を盛って殺し、その女を後添えに迎え入れようとしているとか思うようになり、とうとう我慢できなくなり、寺に駆け込んだ。

第四話 継母の呼び名
勢は夫の桐生直秀が離縁を許してくれないと行って寺に来た。
先妻の光子が病の床についてからの三年間、勢は光子の代わりに彼女の七歳の娘、千代の世話をしてきた。そして光子が亡くなってから、後添いに入ったのだ。
しかし、あれほど勢に懐いていたはずの千代が、勢が後添いに入ると知った日から別人のようになり、それで勢は身を引こうと思ったのだ。

最終話 駆け込み女たちの芯
町名主の治左衛門に嫁いだ紋は、夫の殴る蹴るの暴力に堪えきれず、離縁を考えたが、それに気づいた夫は彼女を家に閉じ込める。ある日、下女が縁切寺の話をしているのを聞き、紋は心を決め、家から逃げ出し、寺に駆け込む。

なつは夫との縁を切ってからも満徳寺に残っている。
彼女は満徳寺の世話役になって、駆け込み女たちを助け、彼女たちが幸せになる手伝いをしたいと思っているのだ。

浮気男やDV夫はいつの世にもいますよね。そういう夫の場合は離縁した方がいいですよね。
でも、互いの思いがちゃんと相手に伝わっていない場合は、誰かいい相談相手がいると、復縁できそうですよね。
その役割を担うのが、尼の慈白さんで、彼女の人を見る目は確かです。
第一話に出てきたなつが寺に残って、慈白の片腕として、駆け込み女たちの面倒をみそうな感じで終わっています。
なつの活躍が見たいので、シリーズになって欲しいです。

一見、不幸な女たちのお話のようですが、何故かそんな風には思えない、すがすがしいお話です。
人生では、何度でも”雨宿り”をして、止んだら歩き出せばいいんです。
そんなことを思わせられるお話です。

コメント

_ ろき ― 2024/06/28 18時29分52秒

今悩んでいる女性の力にもなりそうな本ですね。
昔は女性からの離婚は、男性からと比べて難しかったんですよね。
うまく一人になれた場合、そこから自立するにはどんな道があったのかな。

_ coco ― 2024/06/29 08時37分17秒

離縁すると、女性は親元に帰ることが多いようです。帰っても、また結婚させられたりするみたい。手に職を持っていると違うんですが。どちらにしても大変ですが、嫌な男と暮らすよりはいいんでしょう。

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