畠中恵 『おにがわらう』2026/09/07

しゃばけシリーズの25作目。
いつもマンネリしてるとか言いつつも読んでしまうシリーズです。
食いしん坊の鳴家たちが可愛いのですものw。


「てあそび」
薬種問屋・長崎屋の若だんなが三度目の麻疹に罹り、一カ月ばかり寝込んでいた。
そんなところに赤月という狐が助けを求めてやって来る。この頃、狐の妙な噂が流れているというのだ。そこで妖たちが噂を探り始めると、広徳寺の寛朝や岡っ引きの白銀の親分、河童の禰々子親分、定廻り同心の筒井、猫又、田安門近くに巣くう小鬼たちなどが次々と若旦那に会いに来て噂を教えてくれる。ところがそんな時に広徳寺の秋英が何者かに斬られる。

「みょうやく」
熊吉という男が不老不死の薬を売ってくれないかと長崎屋に来るが、仁吉は断る。諦めて帰った熊吉はふく屋にその薬を持ち込んだらしく、ふく屋は二百両で売りに出すらしい。それなのに何故か長崎屋に客が押し寄せる。妙なことにならなければいいのだが。

「おにがわらう」
江戸に鬼が現れる。鬼たちは江戸で暮らしたいようだが、長崎屋に来た鬼は若旦那から無理だと言われ、江戸を鬼が支配すればいいとまで言い出す。さて、どうなる。

「なんでどうして」
寛永寺の寿真が弟子の黒羽を連れて長崎屋にやって来た。神の庭に住む大妖おぎんに仕えている化け狐の苅安が若だんなのために薬を作ったが、何故かそれが相手を意のままに動かすことができる薬効の琥珀のような薬玉になってしまう。そのため盗まれ、化け狐たちが何とか見つけ取り返したが、神の庭に持って帰る途中で奪い返される可能性があるので、おぎんに相談しに行く間に寿真に預けていく。そのため寛永寺に琥珀玉を狙った妖たちが入り込んでくることになった。寺ごと封じようとしたが、追い付かなく、広徳寺の寛朝にあずけようとしたら、広徳寺にも妖達が溢れている。そこで結界を張り終わるまで若だんなに琥珀玉を預かってもらえないかというのだ。若だんなが琥珀玉を預かったはいいが、今度は妖が長崎屋に現れる。困った若だんなたちは一計を案じる。

「ばけねこ」
妖医者の火幻が大名の猫、実は化け猫の白丸を連れてくる。殿様が毒のせいで寝付いるのが、白丸が祟ったからだということにされかねないので、しばらく預かって欲しいというのだ。ところが白丸は誰がどうやって、何の為に殿様に毒を盛ったのか調べることを高ピシャに若だんなたちに命じ、頼まれもしないのにその礼として若だんなの先々を語る。仕方なく調べ始める妖たち。

いつまでも病弱な若だんなですねぇ。
このまま続いていき、作者が亡くなって終焉となりそうですね。
一度人気が出て続くと、終われないのでしょうか。
ちょっと作者がかわいそう。
柴田ゆうさんの絵が可愛すぎるのも原因かもww。
頑張ってくださいね。

ほしおさなえのシリーズ、二冊2026/08/30

本が溜まってきたので、文庫本で読める本はこれからしばらくは何冊かまとめて紹介します。


『銀河ホテルの居候 あのときの夕日を胸に』
「第一話 二十年後のクリスマスツリー 山鳥」
杉田はテレビで銀河ホテルを紹介しているのを見て、大学時代のことを思い出す。彼は銀河ホテルの創業者・上原周造の孫である祐作と大学の同窓生で同じ文芸部に所属していた。祐作とは友人で、銀河ホテルには一度、文芸部の仲間と宿泊していた。卒業後はほとんど会うことはなかったが、祐作が亡くなっても葬儀には行かず、他の仲間に誘われても銀河ホテルに泊まるのを避けていたが、思い立って泊まりに行くことにする。ホテルで杉田は驚く。
「第二話 あのときの夕日を胸に Sunset」
一月の半ば、三葉は両親と二人の姉の五人で銀河ホテルに泊まりに行く。父は海外赴任で春から別の国に異動し、姉の一人は就職、もう一人の姉は転勤、三葉は東京の大学に入学するので、家族でいっしょに旅行できる時期は今しかなかった。
三葉は高校時代、女子ラグビー部の練習で明け暮れていたが、大学にはラグビー部がなく、ラグビーをやめた自分になにも残らないのではないのかという思いにさいなまれていた。そんな時に気まぐれな母が「手紙室」のワークショップを受けてみたいと言い始める。
「第三話 クラシックホテルで謎解きを Mysterious blue」
冬場に銀河ホテルで謎解きイベントが開かれることになる。謎解きイベントの企画会社に勤める桜井はホテルで起きた宝石盗難事件を軸とする脚本を書くが、ホテル側の窓口となったアクティビティ部門の責任者・苅部からダメ出しが続く。
やっとOKが出るが、イベントの期間に思いもかけないハプニングが起こる。

銀河ホテルの居候シリーズの五巻目。
第一話に出てくる恵比寿ガーデンプレイスのバカラのシャンデリア、懐かしいです。最近は恵比寿に行かなくなりました。三越デパートは閉店したそうで、残念ですが、今でもクリスマスになるとバカラのシャンデリアは点灯されているようです。今年、見に行ってみようかしら。

今回、第一話では、銀河ホテル二代目社長の祐作と三代目となっている祐作の妻、由香のことが書かれています。
少しずつホテルのオーナー家族のことが明かされていっています。
私としては苅部のことを書いて欲しいのですが、出し惜しみですかね。
彼の意外な才能のひとつが第三話でわかったので、今回はいいとしておきましょうねw。



『天蚕の糸 琴子は着物の夢を見る』
柿彦が本庄呉服店の社長の妻、小春のからの頼み事をもって琴子のところにやって来る。他界した往年の名女優・久川芳子の回顧展が八王子で開かれることになり、愛用した着物も展示されるので、本庄呉服店が展示を手伝うという。出所のわからない着物が多いので、古い着物に詳しい琴子にいっしょに見に行ってもらえないかというのだ。
小春たちと久川の家を訪れた琴子は天蚕糸で織られた萌黄色の着物に引き付けられる。
着物に宿る記憶が見える琴子は何を見たのか…。

シリーズ四巻目。
だんだんと琴子の出生の秘密が明かされていきます。
一体、彼女の母親は琴子を置いて、どこに行き、今、何をしているのでしょうか。

着物は兄の結婚式で着て以来、着たことがありません。
体型的に着物が似合いそうだと言われたことがありますが、何しろ着付けができませんし、お高いという印象がありますから着ようとは思いません。
今はベルトのような帯があるらしいです。
着物も改良して着やすく、買いやすくしていかなければ、益々衰退していくのでしょうね。
着物は残していきたい日本の文化のひとつですね。

今回の二つのシリーズは共にいいお話でした。
気になった方は手に取ってみてください。


<今週の美味しいもの>
胃の調子が悪くなってからたまにカフェなどで軽い外食はしていましたが、本格的な外食はまだでした。
そろそろ大丈夫かなと思い、イタリア料理を食べに行ってきました。


前菜の盛り合わせ。ちょっと酸っぱかったですが、食べられました。


シラススパゲティですが、麺がアルデンテ過ぎて、硬くて、消化に悪そうだったので半分も食べませんでしたが、味はよかったです。


土日しか営業していないことを知らずに、二、三回行って閉まっていたレピキュリアンにやっと入れました。
人気のミルフィーユはまだなかったみたい。
今年になってからスイーツ断ちをしていたので、舌がバカになっているらしく、私には甘いとしか言えませんわww。
もうスイーツは美味しく食べられないみたい(悲)。
ここはカードが使えず、現金のみで、お札はきれいでないと断られるらしいですので、注意しましょう。


ボランティアで知り合った台湾の人からいただいたものです。
お茶は「京盛茶」の十全十美御守袋禮盒。
台湾のお茶は美味しいですし、夏なので水出しで飲みましょうか。
お菓子は台湾の老舗食品メーカー「義美」のお菓子「義美小泡芙(イーメイ シャオパオフ)」三種類で、台湾ではロングセラーになっているらしいです。
「台湾人800人に聞いた!日本人に絶対食べてほしい台湾土産ランキング」の一位のお菓子です。
まだ食べていませんが、一個が小さいので私には最適です。

食べられるようになっていますが、体重は少しずつ減ってゆく感じです。
こうなれば20代の頃の体重まで頑張りましょうかねww。

谷瑞恵 『小公女たちのしあわせレシピ』2026/08/21

ちょっとエグイものが続いていたので、可愛らしいものをご紹介しましょう。
児童文学とお菓子作りが好きな方向けの本です。


メアリさんが死んだ。
彼女は県庁所在地にある全二十室のちいさなホテル、”ホテルのはな”に十年ほど前から泊まる常連客だったが、身元不明なので行旅死亡人として扱われた。

”ホテルのはな”の娘で、菓子パンメーカーの契約社員のつぐみは、母から家をリフォームすると聞き、自分の部屋の片づけをするために三連休中に実家に帰った。
片づけをしているときに、ふと本棚にある『小公女』が目につく。
どうしてここにこの本があるのだろう。
つぐみには見覚えのない本だった。
本をめくっていくと、”ホテルのはな”の客室に置いてある便せんに書かれたレシピが挟まっていた。
誰のものか聞いていくうちに、つぐみはそれがメアリさんのものだったのではないかと思い始める。

交際相手の両親と会っていた親友の沙也佳が急にやって来た。
二人で行ったイギリス旅行の思い出話をしていると、本の間に挟まっていたレシピがロンドンで食べた名物パンのことで、『小公女』に出て来たものではないかと思いつく。
つぐみは沙也佳と二人でレシピ通りに作ってみる。

それ以来、つぐみはメアリさんの歩いた跡を辿り、遺した本を探し、義姉の助けを借りて、本の中のレシピ通りにお菓子を作っていく。
いつしか新しい縁が紡がれ始める。

メアリはピンクの服を着て、本の詰まったキャリーバッグを引きずり、ムシャムシャというピンクのブタを連れた記憶喪失のお婆さんです。
彼女が県庁所在地の町で一体何をしていたのかがこの本の鍵になります。

メアリさんの児童書とレシピのお菓子を書いておきますね。
『小公女』フランシス・ホジソン・バーネット・・・チェルシーバンズ
『トムは真夜中の庭で』フィリパ・ピアス・・・トライフル
『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル・・・トリークルタルト
『ドリトル先生アフリカゆき』・・・スエット・プディング
『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース・・・ジンジャー・パン
『秘密の花園』フランシス・ホジソン・バーネット・・・オーツケーキ

どの児童書も定番の有名なもので、私は全部読んでいます。
でも、メアリさんとは違って、出てくるお菓子は全く気になりませんでした。
子どもの頃はあまりお菓子に興味がなかったのかもしれません。
田舎ですし、昔ですから、ケーキや和菓子以外にたいしたお菓子が売っていなかったからでしょうしね。
そういえば子どもの頃は普段、お菓子なんて滅多に食べていなかったような…。

唯一、お菓子ではないのですが、未だに覚えている料理(かな?)があります。
ドイツの児童文学書で、エーリッヒ・ケストナーの『点子ちゃんとアントン』の中に出てくる、アントンが作るスクランブルエッグです。
調べてみると、卵に「塩ゆでじゃがいもと小麦粉を加えた特性スクランブルエッグ」らしいです。細かくは覚えていなかったわw。
「かき卵」の作り方がアントンとは違ったように思います。
母の作るものは火を通し過ぎて、ポロポロだったもの。

ちゃんと章ごとにレシピが書いてありますので、読んだ後に作ってみるのも一興かと思います。
私はどのお菓子も食べたことがないのですが、作って食べる気にはならず、読むだけでしたけどねww。
今は甘いものはあまり食べたくないです(悲)。

メアリさんの存在のファンタジーっぽい感じがよく、久しぶりにほかほか気分になれるお話でした。

西條奈加 『二月に憂鬱な君へ お蔦さんの神楽坂日記』2026/07/24

神楽坂日記シリーズの五巻目。


七編の短編集。
かつて芸者で女優もしていたお蔦は、今は神楽坂の本多横丁で多喜本履物店を営んでいる。
孫の滝本望は両親が北海道に転勤したので、入学した中間一貫校に通うためにお蔦の家に住んでいる高校一年生の男子。

「向日葵の少女」
お蔦のところに塚本知佐子という女性がやって来る。母親が亡くなり、手元にあった母の若い頃を描いた肖像画を画家の父、谷伊織に渡して欲しいという。というのもその絵は切り裂かれており、そんな状態の絵を自分で渡したくないというのだ。一体誰がやったのか。

「青い鳥」
望は幼馴染の洋平と肉まんを買いに行った時におばあさんと一緒にいた洋平の同級生、乃木と出会う。彼女はおばあさんは荒井里子という赤の他人で、転んだのを助けてからたびたび様子を見に行って、話し相手になっているという。望は乃木の態度に引っ掛かりを覚える。
ある日、洋平から里子さんが警察に行くと言ってきかないという電話がくる。急いでお蔦と里子の家に行くと…。

「二月に憂鬱な君へ」
図書館に行った望は、たまたま図書委員の千曲弥生(チマ)が『記憶の記録』という本の中に挟まっていた手紙を見つけた場に居合わせる。気になった望はチマと同級生の彰彦と三人で手紙の謎を解いてみることにする。

「渦中の人」
不倫がバレ、今や時の人となった女優の志月美琴をしばらくお蔦の家であずかることになる。そこに奉介おじさんの娘の楓がやって来て、美琴を見て、不倫をして、人の家庭を壊すような人は許せないと怒り狂い、帰っていく。戸惑う望。

「春の朝」
望は好きな楓がこの前急に帰って行ったことで悩んでいた。そんな頃、お蔦が留守の時に、店に南米か中東出身の外国人女性が来て、祖母の着物を譲りうけたので、それに合う草履を選んで欲しいと頼まれる。この女性、どこかで見かけたような…。

「深い緑の部屋」
望と洋平は神楽坂で個展を開く女性画家の絵の展示を手伝いに行く。
展示作業が終わった時に気味の悪い、スーツ姿の男が現れる。どうもその男はコレクターという名のストーカーのようだ。
女性画家を彼から守るために、洋平たちはお蔦に相談し、策を練ることにする。

「家路」
近所の鈴木フラワーの央子が結婚で悩んでいると聞き、望は相手の息子に話をしに行く。
そんな頃、画家である奉介おじさんの絵が完成した。望は楓たちも呼び、完成祝いに特別な料理を作ることにする。
祝いの食事の後、奉介はみんなに完成した絵をみてもらいたいと言う。
はたしてみんなは描かれた絵に何を思うのか。

今回はお蔦さんの活躍が少なくて、残念です。
その代わりに望の学校生活と料理の割合が増えています。
「お蔦さんの神楽坂日記」ではなくて、「望の神楽坂日記」か「望のお料理日記」に変えた方がいいですよww。
決して望君が嫌いというわけではないので、お間違えなく。
ただきっぷのいいお蔦さんを読みたいのです。
それに挿絵がこんなにありましたっけ?章ごとの絵はいりません。
大人向きからYA向きに路線を変えるのかしら?

話が面白くないと言うのではないのですが、お蔦さんのファンの方、心して読んでくださいね。


神楽坂日記シリーズの順番
⑤『二月に憂鬱な君へ』(本書)

寺地はるな 『雨が降ったら』2026/07/19

わんこのおもちゃが壊れたので、新しい鳥のおもちゃを買いました。
すると、ヨーキー弟が食いついてきます。


兄も興味を持ったのですが、弟がママが手に持ったおもちゃをジャンプして取ろうとしたので、諦めたみたいです。
人間も犬も弟に物を譲るのは同じですね。
その代わりに兄にはおやつを少し多くあげときますw。
(スイカを少し多くあげたらくだってしまいました。弟は大丈夫。兄は気をつけないと)



ある商店街にある『わかば洋傘店』に纏わるお話。
店はスノさんと呼ばれている母親と、元居酒屋店主の息子、大志が経営している。

やって来るお客は、離婚し古いアパートで一人暮らしを始めた初佳。
恋人と別れ、ひとりでUSJに行くことを満喫している杏子。
小さい時から自分の家に住みたいと思い、二年前に家を買ったみつほ。
家族を常に優先することに飽き飽きしている苑美。
母を亡くし、母の喪から未だ心の整理ができていない美彌子。

スノ以外の登場人物たちは40代で、自分たちのささやかな幸せを探している、あなたの隣にいそうな誰かです。
登場人物たちに共感できるところが沢山あります。

幸せってスノさんみたいに、「好きな服だけ着て生きていく!」って開き直れば手に入るんじゃないかしら。
人にどう見られるかじゃなくて、自分は何を着たいか。
世間体とか常識とかをごちゃごちゃ考えるのではなくて、「雨が降ったら傘をさす」、「さしたくなかったら、ささなくてもいい」みたいに単純にね。
そして「いい日にも、悪い日にも、終わりがある」
大志の言うように、終わりがあることは「希望」なのでしょう。
だから今を大切にしていきたいものです。

まあ、感動はしませんが、読み終わると心が軽くなるお話です。
短時間で読める、なんかいい本をお探しならどうぞ。

そろそろ日傘を新しくしたいですね。
そういえば傘屋ってどこにあるんだろう。
私の住んでいる町には一軒もありません。

丸山正樹 『夢見る言葉 デフ・ヴォイス』2026/07/15

「デフ・ヴォイス」シリーズの五冊目で完結編です。


コーダの手話通訳士の荒井尚人は飯能署に勤める警察官のみゆきと彼女の連れ子で埼玉県内の私立進学校に通う美和、そして特別支援学校に通うろう児の瞳美と暮らしている。
みゆきは刑事課に戻るために警部補の昇進試験を受ける。
刑事課に配属されるには一つ条件がある。
みゆきは未だ踏ん切りがついていなかった。

「第1話 伝わらない想い」
美和はタンスの引き出しから離婚届を見つけた。母とアラチャンの間にどことなくひんやりとした空気が流れているのに気づいていた。きちんと確かめなければと思うのだが。

そんな頃、幼馴染の漆原英知と『手話ベース』に行ってみた。そこでいとこの司が会社の仲間とのトラブルで仕事を辞め、給料のいいところ、効率よく稼げるところを探していると聞く。どうも彼はトラブルに巻き込まれているようだ。

「第2話 夜の海の底から」
荒井はNPO法人フェロウシップから前のイベントのスポンサーだった財団の人が都内の障害者作業所を訪問するので、通訳を頼まれる。
荒井はNPO法人フェロウシップの代表である手塚瑠美が「盲ろう者向け通訳・介助者養成講習会」を受けていることを知る。

荒井は一年ほど前に関わった案件で被告人だった女性の再就職の祝いに参加する。そこで話題になった遊園地で起きたことが「不当な差別的取扱い」に該当するのではないか、メディアに訴えで報道してもらおうということになるが、荒井はその前に遊園地の運営会社と話し合いをする方がいいと助言し、手話通訳者として同行することになる。

「第3話 君の歌が聞こえる」
サイン・ミュージック・パフォーマーのHALが公演をすると聞き、荒井家と漆原家のみんなで観に行くことになる。
ちょうどその頃、文化祭で美和のクラスの出し物として手話歌が出され、美和はやりたくないと思っていた。

「第4話 移ろいゆく季節」
美和は司が付き合っているろう者好きの女性と会う。『ろう者だから好き』という彼女に何かおかしいと思うが、英知はよく分からないようだ。彼は誰かを好きになったことがないという。では彼にとって自分はどんな存在なのかと思う美和。

瞳美のクラス担任が病気で辞める。代わりに担任になったのは『音声併用クラス』の担任だった教師で、日本手話ができない。担任が代わってから瞳美は学校の授業がよくわからないと言う。
保護者たちが教育委員会に申し入れをするが、かえってきたのは木で鼻をくくったような返答だ。保護者と学校側と話し合いの場が設けられたが、校長からは保護者たちの望むような返答は得られなかった。保護者の一人が県を相手に控訴を起こす。

「第5話 夢見る言葉」
荒井たちは家族会議を開く。荒井は裁判に協力をすることにし、その間、瞳美はしばらく学校を休むことになる。瞳美はフェロウシップでケアをしてもらい、学習の遅れは荒井とみゆきが交互に補うことになる。

判決の後、荒井家は新たな家族の形を模索し始める。

この巻でお話が終わりになるのは残念です。
最初の頃は荒井が関わる事件を扱っていましたが、だんだんと聴者でありながらろう児の母になったみゆきやろう児の妹を持つ美和のことに話の流れが変わってきました。
このシリーズは普通に日常生活を送っていると、知らないで通り過ぎてしまうことを、立ち止まって考えさせてくれます。
それはろう者だけのことではないからです
大事なのは、裁判の最後に荒井が言った言葉だと思います。

「わたしたちのことを、わたしたち抜きで決めないでください」

この本で初めて「コーダ(CODA、Children of Deaf Adults)」という言葉に出会いました。
今回は「ソーダ(SODA、(Siblings of Deaf Adult)」という言葉があることを知りました。
「ソーダ」は「聞こえない・聞こえにくいきょうだい」をもつ「聞こえるきょうだい」のことです。(「きょうだい」とは、上下男女のない「兄弟姉妹」を意味する言葉だそうです)
この本では美和のことですね。

本書で扱われた言葉はこの他にも色々とありますので、詳しくは説明せずに言葉のみを書いておきますので、是非、本を読むか、調べてみてください。

「手話べり、書記日本語、音声日本語、日本手話、日本語対応手話、盲ろう者、触手話、指点字、接近手話、電話リレーサービス、手話歌、アセクシャル、アロマンティック」など。


「デフ・ヴォイス」シリーズの順番
①『デフ・ヴォイス』(2011)
⑤『夢見る言葉 デフ・ヴォイス』(2026・本書)

読んだ文庫本(日本文学)2026/07/10

本が溜まってきたので、一遍に四冊紹介します。


宮島未奈 『成瀬は信じた道をいく』
「ときめきっ子タイム」
北川みらいは大津ときめき小学校の四年生。総合学習の時間にときめき地区で活動している人というテーマが出され、好きなゼゼカラを取り上げることにする。
「成瀬慶彦の憂鬱」
成瀬あかりの父は悩んでいた。ノートパソコンの検索履歴で「京都 一人暮らし 物件」というのを見つけたのだ。まさかあかりは京大に受かったら一人暮らしをしたいのか…。
「やめたいクレーマー」
呉間言実はクレーマー。行く先々で些細なことが気になり、耐え切れなくなりクレームを入れる。ご近所のスーパー、フレンドマート大津打出浜店ではクレームの常連になっている。ある日、店員から話しかけられる。
「コンビーフはうまい」
篠原かれんは三代連続でびわ湖大津観光大使になる。しかし、喜びもつかの間、いっしょに大使になった成瀬あかりが変わっていて、うまくやっていけるかどうか自信がない。あかりと接するにつれ、なんの疑問も持たずに祖母や母のいうままに観光大使になった自分に疑問を持ち始める。
「探さないでください」
東京に転居し、東京の大学に入学した島崎みゆきはサプライズで大晦日に成瀬家に泊まりに行く。しかし、在宅しているはずのあかりがいない。「探さないでください あかり」という書き置きが残されていた。一体あかりはどこへ行ったのか。心配した父の慶彦とともにみゆきはあかりを探しに行く。

成瀬は天下を取りに行く』の続編で、この本は一作目ほどのインパクトを感じませんでした。
成瀬の変人さに慣れたのか、大学生になってから少し大人しめになったのか。
三巻目『成瀬は都を駆け抜ける』はあかりの大学生活が書かれているようですが、図書館で借りようと思ったら、まだ800人以上の人が予約(すごいですねぇ)をしていいました。
来年、文庫本になったら読んでみますわ。

ほしおさなえ 『言葉の国のお菓子番 扉を開けて』
一葉の属する連句会「ひとつばたご」は文芸マーケットで雑誌を販売することになり、少しでも多くの人にブースに足を運んでもらえるようにオンライン連句会を開くことにする。
大輔と一葉の父は前回同様に文芸マーケットで『坂道ノート』と写真を販売する。一葉はポップやポスターを作る。
オンライン連句会の後、対面連句会を開催することになり、そこで一葉は初めて「捌き」をやることになる。

淡々と進む日常生活。一葉の歩みはのんびりしているけれど、少しずつ変化し、成長していっています。
終わりが見えませんが、どこで一区切りになるのでしょうかね。
大輔とのことも何もなく終わりそうです。

青山美智子 『リカバリー・カバヒコ』
日の出公園に古いカバのアニマルランドがある。自分の治したい部分とカバの同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで「リカバリー・カバヒコ」。
日の出公園の近くに建つ新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒルに住む人々がカバヒコに密かに悩みを打ち明けると…。

なんとも不思議なお話ですが、悩みを持った人たちがいい方向へ一歩踏み出せるのは喜ばしいことです。
実際には本人が思うほど悪くないことの方が多いのかもしれませんね。
私も悪いことばかり考える方ですから、そう思います。

水生大海 『真夜中に彼女たちは 社労士ヒナコ』
ヒナコちゃんが立派な社会保険労務士(社労士)になっています。
シニアの深夜労働問題や退職代行、カスハラ、やりがい搾取など現代の会社組織に潜む問題を扱っています。
なかなか変わらない企業文化。
社員が声を上げるのはなかなか勇気のいることです。
ヒナコのような社労士は実際にいるのかな?

成瀬と言葉の国のお菓子番シリーズは続けて読んだ方がいいかもしれませんが、四冊とも面白いので、お暇でしたら手に取ってみてください。

群ようこ 『サチコ』2026/07/03



スズキサチコは55歳で長年勤めた会社を早期退職するまで、なんの苦労もせずに、のほほんと生きて来た。
親が年を取ってからの子どもで、兄とは十三歳、姉とは十二歳違いだ。
両親からは溺愛されて育った。

サチコは内向的で、愛想がなく、読書さえしていれば幸せだった。
学校も就職先も親がすべてお膳立てをしてくれ、サチコはそれに乗ればいいだけ。
一人暮らしをしようとすると、父親が投資用に買っていたと言ってはいたが、実はサチコのために買っていたマンションをあてがわれる。

勤めて二十年ほど経ったときに、父親が亡くなり、しばらくして母親も亡くなる。
兄夫婦は両親の財産を多くもらおうとするが、久しぶりに会った姉は、遺産には興味がないようだ。
サチコはいかに自分が彼らに守られてきたかを知る。

五十代半ばになり、サチコは早期退職をする。
何もすることのなくなったサチコは不安になり、アルバイトを探す。
近所のスーパーマーケットでアルバイトをするが変な噂を流され、抗議をしてから辞める。
そんな時に自宅から歩いて三分の食堂キングでアルバイト募集の張り紙を見て、応募してみると、すぐに採用される。
サチコの新たな人生が開幕する。

こんな風にサチコさんの日常が淡々と描かれたお話です。
こんな女性はさがせばどこかにいそうですね。
食堂キングの奥さんとご主人、常連さんたちがいい人でよかった。
意地の悪い人たちだったら続かなかったでしょう。
それにしてもサチコさんは体が丈夫なんですね。
わたしならすぐに辞めてます。
仕事が事務職で趣味は読書といいますから、体に無理をしていないからかしら。
普通なら腱鞘炎になったり、腰痛になったり、色々と体が悲鳴を上げると思いますけど。
恵まれていますねぇ。

食堂キングの行く末も、謎の女スズコのことも明らかになっていないので、続編がありそうですね。
淡々と行くのもいいけど、サチコさんの心がもっと波立つことが起こることを期待しています。

美味しい洋食屋のお話2026/06/30



長月天音 『キッチン常夜灯 満月のキッシュロレーヌ』
高坂あかりは仙台から上京し、ファミリーグリル・シリウスで働き始めた。
研修は神保町シリウスで行われ、配属希望は神保町だったが、駅ビルのレストランフロアーにある池袋店に配属された。
研修と実際の仕事は想定していたこととは大違いで、不甲斐ない自分に情けなく思うあかりだった。
心身ともに疲れが溜まった頃、店長のいつきがあかりを連れて行ってくれたのは、「キッチン常夜灯」だった。

今回のヒロインは新入社員のあかりです。
今の若い人のことは全く分かりませんが、あかりみたいな承認欲求の強い人が多いのでしょうか。
彼女や彼女の同期の女の子みたいな人は苦手なタイプだな。
後輩にいたら、困ってしまいそう。
その点、店長のいつきさんは上手くやっています。
常夜灯のみなさんがあかりを暖かく迎え、励ましを与えてくれるのがいいですね。
そんなお店が私が新入社員のときに欲しかったです。
ファミレス業界がブラックだと言われてから何十年も経っていますが、未だにブラックなのでしょうか。
働き方改革とは言われていますが、早く働きやすい職場になるといいですね。

沖田円 『丘の上の洋食屋オリオン 雨上がりのごちそう』
「第一話 おすすめはポテトサラダ」
侑喜は父母がやっている弁当屋『かわひろ』で働いている。他にやりたいこともなかったので、専門学校を出てから就職はせずに手伝い始めたが、この頃、このままでいいのかと悩んでいる。常連の三ツ矢にその話をすると、彼の祖母の開いた洋食店を継いでいる妹の店に行かないかと誘われる。
「第二話 あの日のコーンクリームコロッケ」
28歳になる千早は結婚が決まり、夏休みのような一カ月を過ごすために実家に帰って来た。近所のおばちゃんに騙されて犬の散歩をしている時に、洋食屋オリオンの前を通った。千早にある思い出が蘇る。
「第三話 雨上がりのぶどうのタルト」
広場恐怖症と診断された深月は仕事を辞め、姉の弥生と暮らし始める。ある日、散歩の途中でオリオンという洋食屋を見つけた深月は弥生と行ってみるが、店の中で症状がでてしまい、料理を食べられずに帰ってきてしまう。しかし、店員が料理をパックづめしてくれたので、家で食べた。深月はオリオンにお礼をしに、看板猫のバンダナを作ってもって行く。
「第四話 カツサンドとふたりの足跡」
豊と蒔子夫婦は晴ケ丘唯一の書店、『春木堂書店』を経営しているが、店を閉めることにした。洋食屋オリオンと同じ頃に開店した店だった。閉店の日…。
「第五話 はれの日のビーフシチュー」
パティシエを目指している中学二年生の日向乃は職場体験学習の体験先で、第三希望の『飲食・レストラン』になってがっかりしていた。行先は『洋食屋オリオン』で自分ひとりで行くのだ。不安だったが、行ってみると…。

美味しいフレンチと日本の洋食が出てきて、目だけで十分でした。
今の私にはポテトサラダ以外は食べられそうもないのです。
もう若い頃のように食べられないので、あっさりした和食で美味しいものをゆっくりと味わえるようになりたいものです。
どのお話もほっこりとした気持ちになります。
洋食屋は本来そういう場所なのでしょうね。

一色さゆり 『モナリザの裏側』2026/06/27

旅行に行っている間に本が溜まってしまいました。
内容を忘れないうちに書かなければと焦っています。
まず図書館の本から紹介します。


「オスロで光の種をまく」
エドヴァルド・ムンク ≪月光≫1895年、≪叫び≫1893年

大江沙弥夫は人前でうまく話せなくなり、仕事を辞め引き籠りの生活を送っていた。ある日、テレビでオスロのムンク美術館を見て、急に思い立ち、フォローしていたオスロ在住の照明デザイナー、Ilyaのインスタグラムを見ると、ムンクの≪月光≫が載っていた。沙弥夫はオスロに行こうと思い、Ilyaに会いたいとメッセージを送る。

「青い馬の瞳」
フランツ・マルク ≪青い馬の塔≫ 1913年

ナチスが政権を把握してから四年。近代美術を弾圧・嘲笑するために退廃美術展が開催された。日本大使館に勤める島田野似はひょんなことからガブリエレという女性と知り合い、ナチスに処分されてしまう絵を帰国するときに持ち出してもらえないかと頼まれる。

「富士山のハンマープライス」
フィンセント・ファン・ゴッホ ≪医師ガッシュの肖像≫ 1890年

バブル真っ盛りの頃、ゴッホの≪医師ガッシュの肖像≫が競売に出されることになり、静岡の缶詰会社の前会長、油谷福造が落札しようと名乗り出た。オークションハウスに勤めている日比野真美は湯谷に付き添うため一人息子を連れてニューヨークに行く。真美は息子とうまく行っていないことに心を痛めていた。

「千年のあこがれ」
エドゥアール・マネ ≪すみれの花束をつけたベルト・モリゾ≫ 1872年

老舗呉服屋の娘の白船ぼたんは絵を描きたい気持ちと黒川薫子への憧れから私塾の京都画廊で薫子とともに洋画を学んでいる。家族からは早く嫁に行くことが望まれている。
京都美術展で京都画廊から一人、ぼたんが審査員特別賞を受賞したが、ぼたんは嬉しくなかった。何故薫子ではなく自分が選ばれたのかわからなかったからだ。会場に絵を設営する日、ぼたんの絵に何者かが白いペンキをかけた。「女の敵は女」と思う男たちはその犯人は薫子であると断定するが、ぼたんはそうは思わなかった。

「モナリザの裏側」
ティッツァーノ・ウェチェッリオ ≪田園の奏楽≫ 1510年頃

19歳の夏、絵未子の母親が乳がんで入院する。母は絵未子とルーブル美術館に行きたいという。ルーブルで母から絵未子は父と母の出会いとふたりの秘密を聞くことになる。それはモナリザの後ろに飾られていたある絵に関することだった。


過去、現在、未来と様々な時代に生きる人たちの絵画に纏わるお話です。
章の下に絵のタイトルを載せておきましたので、読むときにどんな絵か調べてみて下さい。
私はマネとゴッホの絵以外は見たことがないです。

ノルウェーのムンク美術館は奇抜な立派な建物で、一度行ってみたいと思いました。
ナチス時代にどれほど多くの芸術作品が廃棄されたことか。
お話のように日本人が少しでも貢献しているといいですね。。
昔の女性たちが現状打破しようとする生き様を読み、現状に甘んじている自分をちょっと情けなく思いました。

この本でいいと思った言葉を載せておきます。

「たった一点でいい。これしかないと思える作品と出会えれば、それだけで幸せだと思うよ。人との出会いも同じじゃないかな。絵未子だって今までたくさんの人と出会ったと思うけど、自分にとって本当に大事だと思える相手は、そんなに多くはなかったでしょう?もちろん大事な人がたくさんいるのも素晴らしいことだと思う。でもたった一人でも特別な出会いがあったのなら、それだけでも幸運だよ」

たったひとつの特別な出会いがあればいい。それが幸せ。
そう思えるといいですね。
これからの残り少ない人生に、特別な出会いがあることを祈りながら生きていきますわww。