知野みさき 『赤縄 神田職人えにし譚』2026/03/04

昨日、またブログが繋がりにくくなったようですね。
私も日中は繋がらないのでブログが書けず、やっと夜に書けました。
今日は繋がるようで、日によって違うのかしら?
どうにかしてもらいたいです。

いつもブログに来ていただいて、ありがとうございます。
ダメでもリロードすると繋がることがありますので、試してみてください。

さて、私の好きな職人シリーズ、「神田職人えにし譚」の最終巻がでたので、最後なので詳しく紹介いたしましょう。


第一話:十日夜
錺師の修次がやって来て、咲を芝居に誘った。喜んだのもつかの間、大店の隠居、歳永から咲を誘うように頼まれたのだとか。
いっしょに取引先の舛田屋に行くと、二人の合作の祝言の贈り物を頼まれる。
その他に刺繍入り足袋と鼻緒を新しい商品として試すことにする。
その頃、咲の長屋では猫のもらい手騒動が持ち上がっていた。
そして、咲に朗報がもたらされる。弟のおかみが男の子を産み、妹の雪が身ごもったのだ。

第二話:奇縁
修次と咲は善右衛門と桔梗の祝言に行く。彼らに二人は合作の贈り物を作り、咲は祝いに刺繍を施した足袋を贈った。
能役者の関根泰英から咲は南都禰宜となる弟子に贈る笛袋を頼まれる。
そして、何と咲に見合い話が。相手は知り合いの仕立屋の参太郎。
参太郎によると見合いは狂言で、修次と咲の仲が進まないことにやきもきした人たちが一芝居打つことにしたという。
ついでに参太郎から袋物師に橋渡しをしてもらいたいと頼まれる。
参太郎と会った帰りに咲は同じ長屋に住む新助と幸に出会う。彼らは睦月の火事で親兄弟を亡くした新治を養子にしようと思っているらしい。
彼らと長屋に帰ろうとしたところ、咲は転んだ老人の切れた鼻緒を直した男が修次の兄で鍛冶屋だった徹太郎が作った鋏を持っていることに気づく。男が鋏を長く大事に使っていることを知り、咲は修次に教えてやろうと思う。
月末に桝田屋に行くと、瑞香堂の伊麻が来ていて、郷里の弟が嫁取りしたので、咲に弟嫁のために買った懐中鏡を入れる鏡入れを、そして修次に留め具を頼みたいという。
一旦は引き受けた修次だったが、新たな大仕事が入ったのでできないと断られる。

第三話:赤縄錺
その後、修次からの訪れもなく、稲荷大明神の眷属らしいしろとましろの双子も見かけなくなり、淋しさを感じる咲。
たまたま昼餉で入った柳川で参太郎と出会い、二人は袋物師の長吉を訪ねる。そこで咲は長吉の娘、千秋から弟子にしてくれと頼まれ、月に三、四日、優しい刺繍を教えることになる。
再度、修次に鏡入れの留め具を頼んだが、修次は今の仕事がどれだけかかるかわからないといって断ってくる。咲は女の勘で、大仕事には元義姉の篠が関わっているのではないかと推察する。修次は咲が二の足を踏んでいる間に篠に気を移したのではないかと思う咲。
そういう時に、咲は徹太郎の鋏を持っていた男が幸と話しているのを見かける。
するとしろとましろの双子が現れ、その男は尚之という名で、悪者だと咲に告げ、彼が修次といるところを見たという。
大仕事に尚之が関わっているのか。「大仕事」はいかさまかなにかで、修次は尚之に騙されているのか…。
色々とおかしいことが続き、心配になった咲は篠を訪ねに品川に行く。

最後の最後に修次に危機が訪れますが、そこは神孤の化身(?)、しろとましろの二人がいますから、大丈夫。
最後にふさわしい終わり方でした。

縫箔師という仕事は今も続いているのでしょうか。
着物を着なくなり、こういう職人もだんだんと少なくなってきているのではないでしょうか。
なくなるには惜しい技術です。なんとか残してもらいたいですね。
縫箔が施された巾着とかお守り袋はどこで売っているのでしょう。
庶民の私には買えない値段でしょうか。

<神田職人えにし譚>シリーズの順番
③『松葉の想い出』
④『獅子の寝床』
⑤『瑞香
⑥『相槌
⑦『南天の花』
⑧『赤縄』(本書)

上橋菜穂子 『神の蝶、舞う果て』2026/02/27

明後日から三月。
三月と言えば、卒業の季節ですね。
卒業式では泣いている同級生が不思議だったという思い出しかありませんが、今の子どもたちが羨ましく思うことがあります。
というのも、いい卒業ソングがあるからです。
私の頃は小学校では「大地讃頌」、中学校は覚えていませんが、高校では「仰げば尊し」と「蛍の光」を歌ったのではなかったかしら?
今は色々とあって、選ぶのを迷いそうですね。
毎年、卒業ソングを聞いていますが、今年、気に入ったのは、2018年のNHK『18祭』のために作られたRADWIMPSの「正解」と2013年に解散したファンキーモンキーベイビーズの「ありがとう」です。

今日の本は全く卒業に関係ないのですが、上橋さんが1999年から2001年にかけて雑誌に連載し、書籍化していなかった作品です。


ジェードとルクランはラシェラン国の<降魔士>だ。
<降魔士>は<神が下された糧>であるラムラーの花を受粉させるために、魔所でもあり、聖地でもある<闇の大井戸>の底からやってくる<神の蝶>を、彼らを喰らう魔物である<蝶の影>から守るための番人で、孤児たちの中から選ばれ、男女一組になり魔物たちと戦う。

ルクランは奇妙な癖を持っている。
<神の蝶>がやってくることを知らせる<予兆の鬼火>に激しく反応し、<蝶の影>とは戦えない状態になるのだ。

ある日、ルクランが<予兆の鬼火>に触れてしまう。
そして、その翌日、自分が育った救児院に行った後に何者かに石をぶつけらる。
腹を立てたジェードはルクランの悪い噂を流しているスーナムという男に会いに行く。
するとスーナムは、月の光の中で立っている三歳のルクランの周りを無数の鬼火が回っているのを見たことを教えてくれる。

ルクランは自分の出自を知ろうとしていたが、ちょうどその頃、ラムラーの実のつきが悪くなり、<闇の大井戸>に異変が起こる。

ジェードはラーシェル師からルクランにまつわる秘密を聞かされ、ルクランが災いをもたらすようなら、すべきことを告げられるが…。

あとがきに書いてありますが、このお話は「守り人」シリーズを書き進めている最中に書かれたもので、上橋さん自身が「この物語は熟していない」と思い、出版を断念したそうです。
読んでみると、残念ながら「守り人」シリーズや「獣の奏者」シリーズと比べると物語が単純で稚拙ですが、後に書かれる物語の萌芽が見られます。
新しく<神の蝶>シリーズとして書いていってもよさそうです。
是非、お願いしたいです。

ほしおさなえ 『銀河ホテルの居候 満天の星を見あげて』2026/02/26



「第一話 満天の星を見あげて Wolfgang Amadeus Mozart」
都内の大手文具店で筆記用具コーナーの担当をしている有村は銀河ホテルの手紙室のことを常連客から聞いていた。
今は付き合いはないが、大学時代のバンド仲間でメジャーデビューをした宮田が突然の休業宣言の後、今年の春に復帰し、軽井沢でミニコンサートを開催すると聞き、同じバンド仲間だった大橋に誘われて彼の家族と一緒にコンサートに行くことにした。そのついでに銀河ホテルに泊まり、手紙室のワークショップを受けることにする。
宮田の歌を聞いた後、ワークショップに行った有村は書くのは手紙以外でもいいと聞き…。

「第二話 誕生から死までの線分 Canyon Rust」
銀河ホテルの料理長の吉田には今年の誕生日で満二十歳になる息子の直樹がいる。
吉田は手紙室ができた年の息子の八歳の誕生日からずっと続けている恒例行事があった。
手紙室でワークショップを受け、息子には渡さないが、彼宛の手紙を書くのだ。
今年、吉田は迷っていた。
一体いつまでこの行事を続ければいいのか。
止め時はいつなのか…。

「第三話 順境にあっても虐境にあっても Ultra Green」
真奈は大学の同窓生の修太と銀河ホテルで結婚式を挙げる。
銀河ホテルは修太の家族の想いでの場所だった。
修太の母は真奈にとって交際相手の母というだけではなく、仕事上の尊敬できる人生の先輩だったが…。
結婚式の前に修太と真奈は手紙室のワークショップを受ける。
真奈と修太が選んだ手紙の相手は…。

「いいことも、悪いことも、わたしたちの人生の一部」。
そうはわかっていても、わたしたちはいいことよりも悪いことの方を大きく取り扱ってしまいがちですよね。
真奈よりも大分年を取っている私は、これからは悪いことはできるだけ軽くあしらい、いいことだけを味わうようにしようと思いましたww。

どのお話も心に沁みてきます。
ひとつひとつゆっくりと愛でながら読みたいと思いました。

いつも思いますが、ワークショップに参加し、千色のインクの並んでいるところを見てみたいです。

第一話に出て来た曲を探してみました。

ドビュッシーの「レントより遅く
ジョン・ダウランドのリュート曲

リュートの音色がいいです。

追記:章題の後に書いてあるのは主人公たちが使ったインクの名前です。

伊与原新 『翠雨の人』2026/02/21



猿橋勝子は大正九年三月に生まれた。
三月生まれのせいか小学校ではクラスで一番体が小さく、ひ弱な甘えん坊だったが、第六高女では鍛えられ、「スポーツ万能の猿橋さん」で通っている。
勝子は雨が好きだ。
雨の一滴が、勝子の知らない広い世界のことを何でも知っているような気がする。
そして雨の日は、一人静かに考え事をするのに向いているから。

勝子には自分の将来に対する悩みがある。
親は何も言わないが、母のくのは娘は二十歳ぐらいで見合いをし、家庭に入るのが娘の一番の幸せで、女子は学歴が高すぎると結婚相手を見つけるのに苦労すると思っているようだ。
勝子は数学と物理が得意で、それを活かせる職業について自立したい。
尊敬する東京女子医学専門学校の創設者である吉岡彌生のように、医師になりたいという夢があるのだ。
しかし結局、親には言い出せず、勝子は親戚が紹介してくれた生命保険会社に就職する。

その四年後、二十一歳になろうという春に、勝子は憧れていた東京女子医学専門学校の受験が叶い、筆記試験を突破して面接試験までいく。
だが、面接試験で勝子が「先生のような立派な女医になりたい」と言うと、吉岡はたやすくなれるものじゃないと一笑した。
この時、吉岡に対する敬慕の念は跡形もなく消え、勝子は医師になるのをやめようと思った。
面接試験の後、校門のところに立っていた男に渡された帝国女子理学専門学校の学生募集のチラシを見て、そこに行こうと決めた。

勝子は帝国女子理学専門学校の第一期本科生となり、理数科で物理学を専攻し、入学早々、小隊長を拝命する。
二年生になった夏休みに、雨や気象に興味があることから、勝子は中央気象台の三宅康雄のもとで実習をすることになる。
三宅は東京帝大の化学科出身で、地球化学という分野の日本における若き先駆者だった。
三宅は勝子に『ポロニウムの物理・化学的研究』という研究題目を与える。

この三宅との出会いが勝子に科学者としての道を進ませ、戦後、彼と共に行った大気および海洋の放射能汚染の調査研究が核実験の抑止に貢献することとなる。

猿橋勝子さんのことは全く知りませんでした。
2007年に87歳でお亡くなりになっているので、知っていてもおかしくないのですが(恥)。
大正、昭和と女性の幸せは結婚することであり、学問は必要ないと思われていた時代に、自立を考え、自分の好きなことをしようと決心する勝子さんもですが、そんな娘の気持ちをくんで、好きなことをさせた家族も稀有な人たちですね。
そして三宅さん。男女の区別なんかを考えず、同じように扱うなんて、当時の男性でなかなかできる人はいませんよ。
吉岡医師、よくぞ言ってくれた。あなたのおかげで素晴らしい科学者が生まれました。
いい人たちとの出会いが勝子さんを一流の科学者としての高みに引き上げてくれたのですね。

ここには書きませんでしたが、放射能汚染の調査研究でアメリカから横やりが入り、勝子が代表としてアメリカに行き「道場破り」をしますww。
その時に三宅がこう言います。

「一流と呼ばれる人は皆、困難や逆境に打ち勝つ意志と力を持っている。だからこそ、誰もなし得なかった研究を成功させることができるのです。(後略)」
「わたしはあなたの力を信じている。あなたも自分を信じなさい。あなたにとって、それが最後に必要なステップです」

アメリカでの頑張りはこういう恩師の叱咤激励があったからこそですねww。

50歳以下の女性科学者に与えられる日本でもっとも権威のある賞、「猿橋賞」がありますが、名づけの親は三宅だそうです。
何故五十歳以下かというと、受賞から定年まで、受賞者自身でも後進の育成に努めてほしいという期待が込められているそうです。
「恩送り」とはいい言葉です。

紹介しなかった勝子が科学者となった後半がこの本を読む醍醐味です。
昔、リケジョだったのに文系に行ってしまった私は、理系に行っていたらどうなっていたかなぁと思いながら読んでいました。
こういう人がいたと知っていたら、高校の時の進路が変わっていたかも…?。
専門用語などがあり読みにくいところもありますが、日本の女性科学者の先駆けとしてこういう人がいたということで、リケジョの皆さん、是非読んでみてください。

夏川草介 『エピクロスの処方箋』2026/02/12

スピノザの診察室』の続編で、本屋大賞2026のノミネート作品。


雄町哲郎は母を喪った甥を引き取ることになり、京都の洛都大学の医局を辞め、消化器疾患を専門とする地域の小規模病院、原田病院で働いている。

哲郎が原田病院で担当するのは、主に高齢で終末期医療の患者だ。
三ヶ月前から訪問診察をしている、脳神経が萎縮していく難病患者、八十八歳の胃瘻増設術を受け、肺炎で入院している女性、膵臓癌の女性など。

一方、洛都大学の消化器内科准教授、花垣辰雄から押し付けられる患者は、哲郎の高度な内視鏡技術が必要な患者だ。
七十四歳の胆管癌による閉寒性胆管炎で、右6番のステント交換が必要な患者と八十二歳の膵臓の頭部に大きな石がはまり込んでいるために慢性膵炎を繰り返し、三回もERCPを受けている患者。
八十二歳の男性患者は、浅からぬ因縁がある人の父親だったため、哲郎は余計な悩みを持つが。

今回は哲郎と元精神科医の秋鹿との会話がいいですね。
「確かに世の中には、治せない病気が山のようにある。けれども癒せない哀しみはない」
「もし世の中に名医というものが存在するのなら、その真っ暗な道の歩き方を知っている医師のことだと僕は思うんですよ」
「勝ち負けなんて、短い人生に何の意味がありますか」
なんかひょうひょうと生きているような秋鹿医師ですね。

哲郎は甥の龍之介君にエピクロスの話をします。
「エピクロスは平穏で物静かな精神状態を快楽と定義し、これを乱すものは、不愉快なものだけでなく、愉快なものでも遠ざけるべきだと言っている」そうです。
哲郎なりにスピノザの哲学にアレンジを加えたのが、「幸も不幸も、突然空からふってくるようなものじゃない。雑多な物事とともに我々の足下に埋もれていて、私たちがそこから何を見つけるかということなんじゃないかな」だそうです。
幸せは自分で見つけるものなんですね。
龍之介君、わかるかな?

他にもいろいろと現代の医療に関することが書いてありますが、全て書けないので、読んでください。
一番言いたいのは、「技術さえ身につければ、優れた医師になれるわけじゃない。大切なのは哲学だよ」かな。
医師に哲学を求めることは、とても大事なことだと思います。
でもねぇ…。

<今日のわんこ&ママ>


ママが夜中に咳をして、何回も起こされている兄犬。
昼間よりも夜中の方が咳が出るのよね。
やっとママは病院に行きましたが、喘息疑いが再度出てきました。
でも、コロナ前に調べたら、喘息ではないと言われたのよね。
気管支が弱いだけだと思うけど。
医師の出した咳止めがシロップタイプで、とっても甘いのよww。
もしかして子ども用?
できるだけ咳をしないように、水分を取り、飴をなめていると、口の中が気持ち悪い~!。
わんこは風邪をひかなくていいわね。

ママは医師に期待していますが、パパはしていないんだってさ。
命にかかわる病気になったらどうするんだろうね。
兄わんこ君、ママは君が一番先だと思うよ。
さて、どうなるかなぁ…。
(嫌なママですね、わん)

宮部みゆき 『新しい花が咲く ぼんぼん彩句』2026/02/10



宮部さんの俳句集だと思って読まずにいたのですが、全く違いました。
あとがきによると、宮部さんが十四年ほど前(単行本2023年刊行)に仕事を通して親しくなった同年代の人たちとつくった「BBK(ボケ防止カラオケ)」のメンバー十五人が、2012年に宮部さんが「怖い」俳句に興味を持ったことから句会も開くようになりました。
もちろん「BBK」は「ボケ防止句会」という意味もつくようになりましたww。
しばらく楽しく句作を続けていたのですが、宮部さんが俳句を小説の題材にできないかと考え始め、BBKで生まれた句をタイトルにして短編小説を書こうと思いついてできたのがこの本です。
気をつけてください。普通のお話ではないですよ。
「怖い」句をもとにした短編小説ですよ。

どんな感じか、ちょっと紹介してみましょう。
「枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる」
寿退職したアツコだったが、婚約者に一方的に破談され、うつうつとした日々を送っていた。ある日、アツコは急に思い立ち、ハローワーク近くのバス停からバスに乗る。アツコが終点で出会ったのは…。

「鋏利し庭の鶏頭刎ね尽くす」
夫、智之と彼の家族が知花に隠していたことがある。そのことを知っても知花は軽く考えていた。しかし、あることを知り、限界を悟った知花は最後に一つ、智之たちに意趣返しをしようと思う。

細部はぼかしていますが、こんな感じで十二句に「怖い」お話がついています。
どのお話も、流石、宮部さん、と思える出来です。
作家の想像力は底知らずですね。

宮部さんは続編も考えているようなので、楽しみです。
どうぞ宮部さん独自の怖い世界をお楽しみください。

恩田陸 『spring another season』2026/01/30

spring』のその後のお話。
本を読んで彼らのその後を知りたい方は、この後は絶対に読まないでくださいね。


HALこと萬春(よろずはる)はダンサーをやりながら振付を続け、世界的に有名になった。
還暦になっても踊りと振付は続け、これから某バレエ団の芸術監督に就任する。
今はいいパートナーがいて、彼が面倒をみてくれるので、待望の柴犬、イナリ二世を飼っている。

元恋人のフランツは許婚と結婚し、二人の子をもうけている。
40歳に引退し、父親の後を継いだ。
次男がダンサーとして活躍している。

彼らの他に深津、ヴァネッサ、ハッサン、師匠ジャン・ジャメ、滝澤美潮などの過去とその後が描かれている。

前回の『spring』よりは面白く読めました。
春の振り付けはオリジナルがないのかな。はぼすべてが歌やら詩やら文学作品などからインスパイアされて作ったみたいですね。
短編なので、物語に深さがなくて、私には物足りないです。
ガチな文学作品を読みたい方にはお勧めしません。
漫画のようなお話でした。


<今日のわんこ>


今日はママが家にいるので、わんこは午前中、ベッドの上でぐっすり寝ていました。
ホットブランケットの上にかけるブランケットを薄いものにしたら暖かくて気持ちがいいのか、こんな風に寝ていました。
夜もママが寝ようとすると、犬部屋から出てきます。
犬の寝姿は幸福感が半端なくて、いいですね。

髙森美由紀 『陽だまりランチボックス』2026/01/25



日葵は三十一歳。
ブラック企業を辞めたばかり。
ハローワークに通ってはいるが再就職への意欲はわかず、銀行の通帳の残高を見てはため息をつき、不動産屋の前で手ごろな物件がないか探している。
食事は安くて調理いらずで空腹を満たせるカップ麺と食パン、卵。

そんなある日、おじいちゃんが連れているミニチュア・シュナウザーに導かれ、古民家のお弁当屋を見つける。
弁当などを買う余裕はないと思いながらも、焼き肉の香りに誘われ、列に並ぶ。
残念ながら弁当はおじいさんのところで売れ切れてしまい、待っていてた男性が怒り出す。
日葵はつい男性に余計なことを言ってしまうが、おじいさんが弁当を譲り、一件落着。
このことが縁となり、日葵はこのお弁当屋の古民家にあるシェアハウスに引っ越すことになる。

お弁当屋「旬菜厨川」の店主はぶっきらぼうで愛敬もない菜月という女性で、シュナウザーの飼い主、照井はご隠居さんと呼ばれている常連さん。
他に喫茶店『Beans&Leaves』のマスター藤森氏と喫茶店のバイトの谷地さんことやっちゃんがほぼ毎日店にやって来る。

日葵は調理の手伝いやご隠居さんたちと庭の植物の世話をしながら、地域の人たちと交流するようになり、やがて自分を取り戻し、新しい一歩を踏み出すこととなる。

よくあるお話と言ってしまうといけませんが、同じような設定の話をいくつか読んだ覚えがあります。
女性が会社の仕事に疲弊し、辞めてしまうということが、この頃多いのでしょうか。
心身を壊してまで働かなくてもいいとは思いますが、働かなくては暮らしていけませんものね。
仕事をすると、本当に色々なことがあります。
若いからこそできるということも多々あります。
年を取った今やれといわれても絶対にできませんものねぇww。

登場人物にそれぞれ隠された不幸な出来事があり、それがほどよいところで描かれています。
本のようにうまくいかないのが現実かもしれませんが、読み終えると元気になれるお話です。
仕事に疲れてしまい、何もしたくない時に、手に取ってみてください。
何か食べたくなったら大丈夫。
明日も生きていけます。

村山由佳 『しっぽのカルテ』2026/01/15



信州の森の中にある『エルザ動物クリニック』では、ぶっきらぼうな院長で獣医の北川梓(39)と頼れる二人の動物看護師、柳沢雅美(37)と萩原絵里香(31)、そして心に傷を負う受付と事務を担う真田深雪(25)の女性四人が働いている。

第一話:天国の名前
職人の土屋高志は外構の工事をしている時に一匹の生まれたばかりの子猫を見つける。母親と他の四匹の兄弟は死んでいた。
去年の正月に外構工事を請け負ったクリニックのことを思い出し、急いで子猫を連れていく。
子猫は助かり、高志にも懐き、高志もまんざらでもないようだが、頑なに子猫を引き取ることを拒む。何故なのか?

第二話:それは奇跡でなく
年老いた中型犬ロビンの飼い主の新井久栄は悩んでいた。夫が亡くなり、ロビンには自分しかいないというのに、持病の心臓が思わしくなく、ロビンには介護が必要だ。
どうしようもなくなって、思い切って『エルザ動物クリニック』に行って、安楽死の相談してみる。

第三話:幸せの青い鳥
新婚の里沙には自分にはもったいないと思うほどのイケメンの夫、直輝がいるが、直輝は里沙が愛してやまないオキナインコのタロウのことを嫌っている。
ある日、タロウが直輝が食べていたチョコレートを食べてしまう。
急いで『エルザ動物クリニック』に連れて行くが、直輝は自分がしたことを軽く考えているようだ。
北川はタロウと里沙のために、禁じ手を使う。

第四話:ウサギたち
あれから高志は『エルザ動物クリニック』のハーブガーデンの整備や薪置き場作りの仕事を引き受けていたが、それ以外にもお金の発生しないボランティア作業をやりに『エルザ動物クリニック』に来るようになっていた。
たまたま仕事で行っている学校の教頭からウサギの引き取り手の心当たりがないかと聞かれ、『エルザ動物クリニック』に相談する。
その後、引き続きウサギは学校で飼うことになるが、そこにはある男の子の必死の訴えがあった。

第五話:見る者
院長北川梓の過去と深雪の現在の話。

よくある動物病院の軽いお話かと思って読んでみたら、とんでもありませんでした。
院長の生い立ちからして変わっていて、動物と飼い主のことだけではなく、人間関係や社会問題もしっかりと書かれていますし、生きとし生けるものの命について深く考えさせられるお話です。
特に第二話が今の私に刺さりました。二匹のシニア犬がいるのですもの。


もう持って来いはしなくなった11歳のヨーキー弟。


13歳兄は寒さに弱くなったみたいで、朝、震えていたので、今は私のベッドの上に電気毛布を敷き、その上で寝せています。
気持ちいいのか、なかなか起きませんww。

そういえば私も「野生のエルザ」を見て、獣医になりたいと思ったことがありましたww。
続編希望のおすすめの本です。

朝井まかて 『グロリアソサエテ』2026/01/10



大正十三年(1924年)、サチは昨年の地震の後、京都に居を移していた宗教哲学者、柳宗悦(1889-1961)の家で女中として働き始める。
サチは東京で生まれ育ったが、地震で父を亡くし、兄の勧めで大阪の遠縁の家に避難したが、京都の家で女中を求めていると追い出され、奉公先が決まるまで出町柳の八百久で居候をさせてもらっていた。
柳家は八百久から紹介された。

柳家には声楽家の奥様、兼子と子どもが二人、そしてばあやがいる。
時にばあやにいけずをされるが、奥様や子どもたちは優しく、柳家はサチには居心地のいい家だ。

柳家の家計はすべて兼子の稼ぎによりまかなわれている。
柳は好き勝手に金を使うばかりで、金を稼ごうとはしない。
その上、家ではいつも不機嫌で黙っている。
兼子がやっと留学費を貯め、ドイツに行きたいと言っても、反対するばかりで、兼子のことを「エゴイスト」だとまで言う。
兼子は女性たることと芸術家たることを両立したかったのだ。

柳宗悦の家には陶芸家の河井寛次郎や英国帰りの陶芸家の濱田庄司たちが訪れ、共に小道具市を巡り、「下手物」を買い、日用の品に美を見出していた。
彼らはそれらを後に「民藝」と名付ける。
サチはそんな彼らを身近で見守るが…。

このお話では1924年から1937年までのことが描かれています。
柳は1924年から木喰仏の調査を行い、1925年から「民藝」の言葉を使い、1926年に「日本民藝美術館設立趣意書」を発表、1934年に日本民藝協会設立、1936年に東京駒場に日本民藝館を創設し、柳は初代館長になります。
その後、この本に関係することでは、沖縄への工芸調査とそれにともなう方言論争などの活動をしたそうです。

私は柳宗悦よりも兼子(1892-1984)の方が気になりました。
兼子は凄いですよ。スーパーウーマンです。
柳と兼子は恋愛結婚で、声楽を続けることを条件に結婚したそうです。
彼女の声楽でお金が稼げると思っていたのかどうかはわかりませんが、柳の民藝運動の大きな助けになったことは確かです。
他の有名人の伝記などを読むと、柳だけを責めることができません。
この頃は何かを成し遂げるためには男は家庭を犠牲にし、金のような下賤なものなんかには構わず、大義のために戦うべきだという感じですものね。
兼子はお金のためもあるんですが、様々な場所でリサイタルを行い、夫の反対にもかかわらずドイツに留学し、ベルリンではドイツ人を驚愕させるほどのリート歌手だと言われながらも日本に戻り、夫を支え続けます。
戦中は軍歌を歌うことを拒否し、1961年に柳が死んでからも歌い続け、85歳まで公式のリサイタルを行い、92歳で亡くなる二カ月前まで後進の指導をしていたんですって。
やっと80歳になって歌が歌えたなという気がする。長生きしてよかったと思うというようなことを言ったそうです。
ひょっとして柳が亡くなってからの方が歌に集中できてよかったかもしれませんねぇww。

この本はサチの視点から書かれていますが、兼子の視点から書かれていたら、どんなになっていたでしょうね。
読んでみたかったです。
もしよろしければ、どなたか、兼子のことを書いてくれないでしょうか。

サチの隠された身の上が意外なものでしたが、最後に幸せになりそうな感じで終わっていたのでよかったです。
面白く読めましたけど、どことなく現実感のない柳家のことよりも、柳兼子のことが知りたいと思いましたけどねww。