ホーマー・ヒッカム 『アルバート、故郷に帰る』2019/04/14



映画『遠い空の向こうに』の原作、『ロケット・ボーイズ』を書いた人の作品です。

アルバートはアリゲーター。
アリゲーターって日本語では「ワニ」のことですが、クロコダイルもいるんです。
頭の形の違いや歩き方、住んでいる場所などで「ワニ」をアリゲーターとクロコダイルに分けているらしいけど、獰猛なのがクロコダイルで比較的温厚なのがアリゲーターってことでいいでしょうかね。

ヒッカムさんのお父さんとお母さんが結婚する時に、お母さんのボーイフレンドからお祝いとして送られてきたのがアルバートです。
結婚祝いにアリゲーターなんか送る人がいたのですね(笑)。
だんだんと大きくなって、炭鉱の社宅で飼えないぐらいになってきたので、故郷のフロリダに帰そうということで、二人と一匹+小鳥さんたちがウエストバージニアからフロリダまでドライブします。
その道中に様々なことが起こり、2週間の予定を大幅に上回ってしまいます。
工場のストライキを先導する、船に乗る、野球選手になる、映画に出演するetc.

お母さんは生まれ育った炭鉱町が嫌で嫌でしょうがなく、何度か出ようとしたのですが、炭鉱夫のお父さんと結婚してしまい、仕方なく炭鉱町に住んでいました。
彼女はチャレンジャーで、お転婆で、自己中。
旅行中何度もお父さんをふがいなく思い、わがままを言って衝突し、いつも離婚しようかと考えています。
お父さんはお母さんとは正反対で、真面目で温厚な人で、旅行中も彼女にいいように振り回されています。
お父さんの一途さがわからないお母さんって・・・。
人間たちは何ですが、アルバートはかわいい♡です。
陽気な時にヤーヤーヤーと声を上げます。
お父さんの危機の時に彼を助けます。
名前のない鳥さんも出てきますが、彼(?)は最後まで謎です。

読んでいると、お母さんの自分勝手さが嫌になって、何度か本を閉じたことがあります。
でも、ホーマーさんが生まれたということは、その後、それなりに仲良くやっていったってことですよね。

事実を元にしたファンタジー小説かな?
いかにもアメリカ的な話でした。

ボストン・テラン 『その犬の歩むところ』2018/05/20



数奇な運命を辿ったギヴと名付けられた犬の話です。

飼い主のモーテルを経営している女性の元から、窃盗しながらミュージシャンをしている(ミュージシャンをしながら窃盗もしている?)二人組によって盗まれたギブ。
やっと落ち着ける場所が得られるかと思ったら、ハリケーン・カトリーナで運命が狂い、過酷な体験をするのですが、自分の才覚でそこを抜け出し、イラク戦争を経験した退役軍人に助けられ、彼に連れられ、元飼い主を捜しに行くことに・・・。

犬の立場から書かれている話ではないけれど、彼を巡る人々と彼の関わりが感動を呼びます。
上手く作られた話かもしれませんが、犬にはこういうこともあるのではと思わせられる何かがありますよね。
内容はいかにもアメリカ的ですが(笑)。

犬好きな人なら楽しめる本です。
もちろん、犬好きじゃなくても。



「ママさん、この頃、僕たちをかまってくれませんね。全然写真も撮ってくれないし・・・。この写真はこの前のトリミングの写真ですか。ひどいです。僕たちママの言うことを聞きませんよ」by 兄&弟。

「この本を読んでごらんなさい。そうすれば、自分たちがどれだけ恵まれていることがわかるでしょう」 by ママ。

「僕たちは文字が読めません(プンプン)」by 兄&弟。



ポール・ギャリコ 『トマシーナ』2013/01/26



ぶたぶた図書館』で取り上げられていた『トマシーナ』をやっと読みました。
絵本ではなくてファンタジーですので300ページ以上ありますが、サクサクと読めます。

獣医をしているのに動物に愛情を感じられないマクデューイ氏の娘メアリ・ルーはトマシーナという猫を飼っていました。
マクデューイ氏は医者になりたかったのですが、獣医をしている父親に無理やり後を継がされた上に、妻は動物から病気を移されて亡くなってしまいます。
そのため彼は娘以外に愛情を感じられなくなっていたのです。

ある日、トマシーナが病気になります。
メアリ・ルーは父親に診てもらおうと、禁じられていた動物病院にトマシーナを連れて行きます。
しかし、ちょうどその時、目の見えない年よりの目の代わりになっていた犬が車に轢かれ、その犬を助けるために難しい手術を行わなければならなくなります。
マクデューイ氏はトマシーナを一応診るのですが、彼女の病気は治らないからと安楽死を申し渡します。

メアリ・ルーの友人たちはトマシーナのために盛大なお葬式をしてくれました。
メアリ・ルーの心はトマシーナと共に死んでしまいました。
マクデューイ氏がそれに気づいた時、メアリ・ルーは衰弱しており、彼女の命は風前の灯火でした。

しかし、奇跡は起こります。


昔、萩尾望都の『トーマの心臓』を読んだ時に自分に息子が生まれたら冬馬という名前にしようかと思ったことを思い出しました。
トーマは男名でトマシーナが女名なんですね。

犬用本でいい本があったら、どなたか教えてくださいませ。
ミステリーでは頭のいい猫、シャム猫ココとかトラ猫ミセス・マーフィとかが出てくるのですが、犬は思い当たりません。
犬って愛想がよくて人間に懐き過ぎて、頭がよさそうに見えないからなのでしょうね。

さて、うちの犬ですが、40分ぐらい散歩したのですが、まったく疲れを見せません。散歩の最期までグイグイとリードを引っ張っていました。
ちゃんとお散歩しているように見えるやり方を覚えました。
簡単です。リードを短く持つことです。そうするとリードを引っ張れないので、ちゃんとお散歩しているように見えます。
不思議なのは風に吹かれて飛んでいる葉っぱを追いかけて咥えることです。
散歩中、ずっと葉っぱを咥えています。
途中で出会うどの犬を見ても葉っぱなんて咥えていません。
家の犬だけ特別なんでしょうか?

私にかまってもらえない時はベッドで遊んでいます。


「コラ!」と声をあげると・・・。


「僕、何にも悪いことしてないもん」という顔でこちらを見ます。


普通にしているとかわいいのにね。

森谷明子 『れんげ野原のまんなかで』&『床下の小人たち』2012/05/17



ススキ野原のど真ん中にある図書館に絡んだ、日常の謎を解く話です。

文子は秋葉市の中央図書館に勤めている新人司書です。
図書館は秋葉市の北部にあり、『秋葉のだんな』からの土地の寄付で建ちました。
場所が場所なので誰も借り手がいないと思われ、隣市の図書館から絶対書架にあるからと大至急の貸出依頼がくるほどです。
同僚は4人。のんびり館長と頼もしい先輩司書で謎解きの達人の、文子があこがれている能勢、理数系の専門知識が豊富で語学力もある、誰もが優秀と認める日野、そして事務担当の工藤です。
利用者を増やすことが彼らの懸案でしたが、市で福祉バスを新設したのに乗じて、一日四回、図書館前に止めてもらうことになりました。
おかげで利用者数が二十パーセントアップしましたが、利用者の平均年齢もアップすることになります。

こんなのんびりした図書館で次々に不思議な出来事が起こります。
不思議な忘れ物、絵本のいたずら、コンビニに残された一枚のコピーの謎、秋葉家の雪女の話、誰かが置いていった『床下の小人たち』。

『床下の小人たち』は読んだことがないので、図書館で借りてみました。
子どもの時に読んでいたら、空想の世界が広がっただろうなと思いました。
本には読むべき時がありますね。
もちろん、いい本は大人になって読んでもいいのですが、子どもの頃とは感じ方が違うでしょうからね。

この本も、続編が待ち遠しいですね。意外と図書館はワンダーランドかもしれません。
司書さんの仕事を知りたい人も読んでみるといいでしょう。
お仕事本のひとつに入れましょう。

カズオ・イシグロ 『浮世の画家』2011/10/21



戦前は優れた画家として尊敬され、弟子もたくさんいた小野は、戦中に犯した罪のため戦後は筆を折り、古い屋敷に娘と共に暮らしていました。
上の娘は結婚して息子が一人いますが、下の娘はまだ嫁いでいません。
縁談が上手くいきそうだったこともあるのですが、破談になってしまいます。
原因は何だったのか。
自分の戦中の行為なのか。

小野の取り留めもない過去の記憶と独白。
戦前の古い価値観と戦後の新しい価値観の狭間で、自分は何も恥じることをしなかったと思う小野ですが…。

失われつつある日本文化に対する哀感漂う、どことなく浮世離れしたイシグロ・ワールドです。

「食べて、祈って、恋をして」を観る2010/09/01

 

ジュリア・ロバーツが主演をしている映画が上映されているようです。
彼女、やっと日本にやってきましたね。
まだ映画は見ていませんが、DVDになってから見ますわ。
 
本の内容は、もろアメリカ女と私は思うのですが、どうでしょう。
イギリス女は『ブリジット・ジョーンズの日記』。アメリカ女と言えば、これでしょう。
この本を書いたエリザベス・ギルバートは自分のことを、赤裸々に書いています。それがちっとも嫌らしくないのです。

エリザベスは14、5歳の時から途切れるときなくボーイフレンドがいました。
二十代で結婚をし、幸せな生活を送っていたはずですが、三十一歳のある日、「これ以上、結婚生活をつづけたくない」という自分の心の声を聞いて、バスルームで泣き明かします。

やっと夫と別居をしたと思ったら、次の男、デーヴィッドと暮らし始めます。
忙しいですねぇ。
デーヴィッドとは、何度も別れて何度もよりを戻すという腐れ縁。
ひとりで暮らすうちに、これでは駄目だと思い始め、男断ちをして自分探しの旅に出かけることにします。

それでやったことが、イタリア語会話を習いたいとずーと思っていたから、まず「①イタリアに行く」。
デーヴィッドのアパートメントを初めて訪れた時に、ドレッサーの上に飾られていた写真の美しい女性に惹かれます。
彼女がインドのグルだと知り、彼女のアシュラムに行きたいと思いました。
それで、次に「②インドの彼女のアシュラムへ行く」。
最後は、雑誌の取材旅行で訪れたインドネシアでバリ人の治療師に会い、彼にバリに来て自分と四ヶ月暮らす運命だと言われたのを実現するために、「③インドネシアを再訪する」。
それぞれの土地に四ヶ月、合わせて一年です。

彼女が雑誌などに文を書く人だったから、こんな風に自由に時間が使えたのでしょうね。
日本の普通の勤め人だったら、仕事を辞めて一年も海外に暮らせるかどうか相当悩みますよね。
それにイタリア、インド、インドネシアという、何の共通点もない国に行こうと思う人は滅多にいないでしょう。
エリザベスの人間性もあるのでしょうが、それぞれの土地でいい出会いがあり、彼女はどこに行っても楽しく過ごしています。
このヴァイタリティが流石アメリカ女。(特に意味はありませんが)
最後は、とってもいいおまけまで手にいれちゃって、いいですねぇ。

ふとした疑問。自分探しに遠くにいく必要があるのかしら?
私も思い切って一年ぐらい海外で暮らしてみようかしら。
行くなら、イタリアはまだ行っていないからいいのですが、インドはパスします。一度行って10キロぐらいも痩せ、みんなに病気でももらってきたのと言われましたから、今は行きたくないわ。
バリ島は知り合いがいいホテルを紹介してくれると言っているので、一度は行ってもいいけれど、住みたくはないわね。
私が選ぶならイタリア、イギリス、そしてフランスかしら。
ちょっとおもしろくないですねぇ。あ、フランスではなくて、スウェーデンがよさそう。
これでもバラエティがないですね。

まあ、この年になって運命の人がどうのこうのと言えませんから。
ちょっとスピリチュアルなことに興味のある人が読むと、おもしろいと思います。インドのアシュラムの生活なんか、よさそうです。
私は映画を観てから、バリ島の治療師に会って手相を見てもらいたいと、まじに思っています。

リー・ツンシン『小さな村の小さなダンサー』2010/07/23

単行本での題名は『毛沢東のバレエダンサー』でした。文庫本にするにあたって題名を変えたようです。『毛沢東のバレエダンサー』の方がこの本の内容を表していますね。


リー・ツンシンは1961年に中国の山東省新村に生まれました。
家は大家族で六部屋しかないのに、二十人ぐらいが一緒に暮らしていました。
父親は畑を耕すかたわら、建設材料の運搬をしていました。
兄弟は男ばかり七人。ツンシンは六番目の息子として生まれました。

1961年は毛沢東の大躍進運動が始まって三年目。中国は世界史上まれにみる飢饉にみまわれていました。
家は貧乏で食べるものさえろくにない状態でした。
日本は高度成長期に入っていた時に、中国では飢饉が起こっていたなんて、このことを知っている人は日本にどれぐらいいたでしょうね。

前半の大部分を使って、1960年代中国の農村の生活、貧しいけれど家庭生活が幸せだった様子が描かれています。

ツンシンが十一歳になろうという時に、彼の人生が変るきっかけがありました。
校長が四人の大人を連れて、教室に入ってきました。
四人は毛沢東夫人、江青の名代として北京から来た先生で、北京でバレエを学び、バレエを通して毛沢東の革命に貢献する生徒を選ぶためにやってきたのです。
彼らが教室から出て行こうとした時、担任のソン先生がツンシンを指差し、「あの子はいかがでしょう?」と言ったのです。
この時からツンシンの人生は変わりました。このことがなかったら、彼は他の兄弟と同じように村で暮らし続けていったでしょう。
バレエなど見たこともないツンシンは色々な検査やテストに合格し、北京舞踏学院でバレエを学ぶことになったのです。
十億人に一人の幸運でした。
始めはホームシックや劣等感で勉強に身が入らないツンシンでしたが、二度目の休みを故郷で過ごし、自分の幸運をあらためて思い知り、未来へ向かって前進することを誓うのでした。

それからの彼は努力を重ね、主役を踊るまでになっていきます。
そして、彼の人生を永遠に変えることが起こります。
アメリカから振付師ベン・スティーブンソンがやってきて舞踏学院で授業を持つことになったのです。
彼の授業に出られる二十人にツンシンが選ばれました。
その上、毎年夏にテキサスのヒューストン・バレエ・アカデミーで開かれるサマースクールに招待される二名の中の一人になったのです。

アメリカに行ったことで、彼の中には疑問が沸き起こることになります。
「毛主席や江青、そして中国政府はアメリカについてなぜうそをついたのだろう?なぜ中国はこんなにも貧しいのか?そしてアメリカはなぜこんなに豊かなのだろう?」
中国でのバレエの訓練法にも疑問を抱くようになったツンシンは、もう一度アメリカに渡りバレエの練習をしたいと思います。
ベンに相談すると、中国副総領事にかけあってくれ、中国に帰国した後、二ヶ月したらふたたびアメリカに戻り、ヒューストン・バレエで一年間研修できることになりました。
ところが中国に帰った後、ツンシンが若いため西側の悪い影響を受けるのではないかという恐れから、アメリカ行きが認められないという連絡が来たのです。
がっかりしたツンシンですが、どうしてもアメリカ行きを諦めきれず、色々と手をつくします。
やっと無事にアメリカに渡ったツンシンですが、一年間の研修が終わり帰国が迫った時に、彼は重大な決断をします。亡命という・・・。

ローザンヌ・バレエ・コンクールなどを見ると、中国人のダンサーが活躍しています。これらのダンサーのさきがけがツンシンなのですね。

ツンシンは1999年にバレエを引退し、現在は夫人のメアリー・マッケンドゥリーと三人の子供とオーストラリアのメルボルンに住んでいます。
文庫本に載っている写真は映画からのが多く、宣伝効果を狙ったのでしょうが、それよりももっとツンシン本人の写真を見たかったです。

映画は八月からBunkamuraル・シネマとシネスイッチ銀座で上映されます。一人前になったバレエダンサーが昔を思い出すというような構成になっているのではないかと思います。
オーストリア・バレエ団やバーミンガム・バレエ団の協力でバレエ場面がすばらしようです。
暇を見つけ映画を見に行こうかと思っています。
  

ジータ・アナンド 『小さな命が叫ぶとき』2010/04/02


ハリソン・フォードが映画にし、今夏スクリーンに登場するそうです。
難病物で、後記に書いてあるような話です。

「これはまさにアメリカの物語です。希望と、意志の力と、お金の賜物に他なりません。ハッピー・エンドになるのだと信じているからこそ成し遂げられたことです」


三人の子供のうち下の二人がポンペ病という、治療法も薬もない病にかかった家族の物語です。

ポンペ病は筋力が徐々に弱くなり、歩けなくなり、顔の表情もなくなり、食べられなくなり、呼吸もできなくなり・・・やがて死んでいくという病です。
遺伝子異常で、グリコーゲンを分解する酵素が不完全だったり、全く存在しなかったりすると引き起こされるそうです。

アメリカに住んでいるジョン・クラウリーはポンペ病の子供のために、コンサルティング会社を辞め、ポンペ病の財団を設立し、新薬を開発するための会社を作り、薬を開発し、自分の子をその薬の臨床試験の対象になるようにと頑張ります。
しかし、臨床試験の対象は1歳以下の子供に限られており、彼の子供は大きいため、治療対象にはなれません。
ジョンと妻アイリーンの苦悩は計り知れません。

ジョンという人は努力家で、アメリカン・ドリームの体現者というにふさわしい人です。
彼のようなバイタリティー溢れる人がいたからこそ、彼の子供たちは病気ながら、恵まれた暮らしが維持できています。

普通の家族なら、どれほどのことを子供にしてあげられるのかしらと、思ってしまいました。
もし、日本なら、どういう暮らしになるのでしょう?
子供手当や高校無償化もいいけれど、切実に助けの必要な人たちのために税金を使って欲しいなと思います。

ジュリー・パウエル 『ジュリー&ジュリア』2009/11/18

私は知らなかったのですが、ジュリア・チャイルドという人が実際にいて、TVで1960年代からアメリカにフランス料理を紹介していたそうです。


普通のおばさんという感じですね。
その彼女が書いた『フランス料理の達人』という本に載っているすべてのレシピを実際に作ってみようということに挑戦したのが、ニューヨークに住んでいて、政府機関でOLをやっているジュリー・パウエルです。

彼女はブログで『フランス料理の達人』のレシピ、524を365日で全て作ると宣言します。アマゾンで見てみると、この料理本、本当に売ってました。


いかにもアメリカ女性らしい内容の本です。料理をして人生が変るなんて、ありえないと思うのですが、彼女のブログが評判になり、OL辞めて作家になっちゃったんです。
アメリカン・ドリーム?
それにしても、1年間もバターの多いフランス料理を材料を探しまくり作り続けると言う根性はすごいと思います。私はあまり料理が好きじゃないので、すぐに止めてしまいそうです。

メリル・ストリープが出演している映画が好評のようです。12月にロードショーだというので、暇なら見に行こうかと思っています。
 

カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』2009/01/07

カズオ・イシグロは名前からわかるように、日本の長崎で生まれ、後にイギリスに帰化した作家です。
5歳でイギリスに渡ったため、すべての作品は英語で書いています。
本人曰く、親との会話は日本語でも5歳の日本語だと。

『わたしを離さないで』の舞台は、ある目的のために作られた施設ヘールシャム。
そこで主人公である介護人キャシー・Hは育ったのです。
最初、ヘールシャムのことはイギリスの寄宿舎のようなものかと思っていました。
読み進むうちに、だんだんと明らかになってくるのですが、そこは臓器移植のためのクローン人間を集団で育てる場だったのです。

介護人とは、臓器提供者のそばにいて、精神的な支えになるような係りのことです。
キャシーは介護人を11年以上もやっていますが、今年限りで止めようとしています。
本には書いてありませんが、介護人を止めるということは、臓器提供者になるということなのでしょう。

キャシーの記憶の中にあるヘールシャムと友人の思い出が淡々と語られています。
クローンでも感情はあるから、楽しいこともあれば、悩むし、苦しむ。
でも彼らは外の世界のことを知りながら、ヘールシャムから出ようとはしません。
ヘールシャムから出されても、臓器提供者としての自分達の使命を静かに受け入れるのです。

何故なんだろう?
そういう思いで読み進みました。

何度も出てくるヘールシャム。
子供時代の記憶は人の人生で生きるための糧になりうるのかもしれません。

英語でもう一度読み返してみたいと思います。