「リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界」を観る ― 2025/05/14

原題は「Lee」。
実在したリー・ミラーの主に1937年から1945年までを描いた映画です。
リーの一生を簡単に紹介します。
リー・ミラーは本名エリザベス・ミラー。
1907年、アメリカのニューヨーク州キポキプシー生まれのファッションモデル、写真家、戦争特派員で、芸術写真と戦争報道の両方で重要な足跡を残した。
中産階級の家庭で育ち、父親のセオドア・ミラーはアマチュアの写真家でエンジニア。娘のリーをモデルにして撮影をし、ティーンネイジャーになるまで娘のヌード写真を撮っていたという。娘を溺愛しており、リーにはファーザーコンプレックスがあったようだ。彼はリーに写真技術の基礎を教えた。
映画でも触れられているが、七歳の時に知り合いの家で性的虐待にあって、性病に感染したという。
この事が後の彼女に深い影響を及ぼしたのは明らかだ。
十九歳の時にニューヨークで交通事故に遭いそうになったときに、偶然(?)ヴォーグ誌の編集者のコンデ・ナストに助けられ、これが縁でモデルとなり活躍する。
しかし、彼女の写真が生理用品の広告に使用されたことからモデル業を辞めざるえなくなる。
1929年に単身パリに渡り、マン・レイに弟子入りし、やがて男女の関係になり、彼のミューズとなる。
この時にパブロ・ピカソやジャン・コクトーなどと知り合う。
三年ほど関係は続くが、マン・レイと別れた後、1934年にエジプト人の大富豪、アジス・エルイ・ベイと結婚し、カイロに行く。
1937年、イギリスのシュールレアリストで画商のローランド・ペンローズと出会い、1939年、イギリスへ渡り、ロンドンでペンローズと暮らす。
1940年からイギリス版ヴォーグでカメラマンとして活躍する。
1942年、リーはヴォーグ誌の従軍記者として、ライフ誌のカメラマン、デイブ・シャーマンと組み、ヨーロッパ大陸に渡り、連合軍と共にヨーロッパ各地の前線に赴く。ノルマンディー上陸作戦、パリ解放、ダッハウ強制収容所の解放など激動の現場を記録していく。
この時に写したダッハウ強制収容所の写真やヒトラーの自宅の浴槽で写した写真が有名である。

戦後もミラーはヨーロッパにとどまり、戦後の様子も写真に収める。
1947年にエルイ・ベイと正式に離婚し、ペンローズと結婚し、9月に息子のアントニーを産む。
1949年にサセックスのファーリー・ファームに居を構える。
1950年代にはヴォーグから離れ、写真家としての活動をほぼ止める。
リーは心的外傷後ストレス障害、うつ病、アルコール依存などの問題を抱えるようになっていた。
リーは写真の代わりに料理の世界に創造性を注ぐようになる。
フランス料理に通じ、独自のレシピを持ち、自宅に来たピカソやマックス・エルンストなどの芸術家や知識人の訪問客に実践的な料理を振る舞った。
「料理こそが自分の”サルベージ(救済)”だった」と語っていたそうだ。
1977年、イギリスのチディングリで逝去。
息子のアンソニーは母が育児に関心がないように見え、甘えようとしても冷たく扱われ、母を恐れていたという。
リーの死後、彼は実家の屋根裏で未整理のネガ、手紙、戦争写真、日記などを見つけ、母の戦争での壮絶な経験や隠された苦悩を知ることになる。
それからのアンソニーは母の人生と作品を世に広める活動をしている。
現在もイギリス・サセックスのファーリー・ファーム(Farleys House & Gallery)
を拠点に、リー・ミラーのアーカイブを管理し、展覧会や書籍を通じてリーの業績を伝えている。
アンソニーは伝記『The Lives of Lee Miller(リー・ミラー:自分を愛したヴィーナス)』を書いている。
彼はこの映画の制作に協力し、リーの複雑な人物像を描くことに貢献し、「母の人生を通して、ようやく本当の母を知った」と語っている。

初日に見に行ったのではないのですが、入場者プレゼントのステッカーをもらいました。
リーはこのローライフレックスの二眼レフカメラでダッハウ強制収容所や戦場の惨状を収めたようです。
主演のケイト・ウィンスレットが映画の制作総指揮をした、渾身の出来の映画です。
リー・ミラーという女性が戦場に行き、自ら傷つきながらも、何故、撮らずにいられなかったかを描いた映画です。
目をそらしたくなるような場面が多々ありますが、それが戦争なのです。
ポール・エリュアールの詩「自由(Liberté)」がでてきます。
昔、読んだ、好きな詩です。
ネットで探すと出てきますので、読んでみて下さい。
参考:
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