アルネ・ダール 『円環』 ― 2025/05/28
スウェーデン・ミステリー、「Novaシリーズ」の一作目。

国家作戦局(NOD)主任警部のエヴァ・ニーマンのところに手紙が届く。
手紙は、気候変動の危機を叫ぶ一般的な抗議文に、不吉な終末論を織り交ぜながら、最近起きたふたつの事件を取り上げ、まだ起きていない爆破事件が起こることを予告していた。
ふたつの事件とは、1週間前に高速道路を走行中だった大手製鉄会社<SSAB>の部門長のBMWが爆破された事件と広告会社<フラット・ブローク>の広告マンがヴァーサ公園に吹き飛ばされた爆破事件のことだ。
<SSAB>は気候変動の加害企業で、<フラット・ブローク>は石油産業の一大広告キャンペーンを手がけていた。
エヴァは”破壊しつくされた廃墟”という手紙の中の言いまわしが気になった。
その言葉は15年前に先端技術の活用を拒否したため、誘拐事件の捜査に失敗し、警察を辞め、森で隠遁生活を送る、エヴァの元上司であるルーカス・フリセルのものだった。
エヴァが率いる捜査グループNovaが内密にこれらの事件を追うことになる。
捜査グループNovaのメンバーはエヴァの他に、ソーニャ・リド、アンニカ(アンカン)・ストルト、シャビール・サルワニ、アントン・リンドベリの四人。
ふたつの事件は気候変動を動機とするテロリスト集団による犯行なのか。
それともルーカス・フリセルによるものなのか。
予告された第三の事件はどこで起こるのか。
捜査の甲斐なく、やがて第三の事件が起こる。
アルネ・ダールと合わないのか、それとも翻訳家と合わないのか、とても読みずらかったです。
次々と爆破事件が起こりますが、なんか進み方がダルダルで、スピード感や緊迫感がなく、犯人の動機がイマイチでした。
続くみたいだけど、たぶん読まないでしょう。
珍しく、ストレスフルなミステリでした。
「プレッパー(prepper)」という言葉が出てきたのですが、「prepare」が語源で「備える人」の意です。
大災害や経済の崩壊、戦争などの緊急事態に備えて、食料を備蓄し、自給自足の生活をしたり、核シェルターを作ったりする人(「デジタル大辞泉」等参考)のことだそうです。
本の中で、ルーカスは森の中に住み、人との接触をできるだけ絶っていたようですが、プレッパーというよりもサバイバリストに近いのじゃないでしょうか。
プレッパーが一番多いのはアメリカらしいです。
土地が広いからでしょうか。
日本ではなかなか無理そうですww。
アン・クリーヴス 『沈黙』 ― 2025/05/03
イギリスの南西部デヴォン州が舞台の警部マシュー・ヴェン・シリーズの二作目。
一作目は『哀惜』なので、タイトルはこれからも漢字二字でいくみたいですね。

ウェスタコムの芸術家たちのコミューンで男性が殺されていた。
見つけたのは吹きガラス職人の娘で、作業場で父親を見つけた。
バーンスタプル署の部長刑事ジェン・ラファティは昨夜の友人のパーティで彼と話していた。
彼、ナイジェル・ヨウは元医師で現在はノース・デヴァン患者協会の所長をしていた。
ジェンに話をしたいことがあると言われたが、飲んでいたので、次の日に電話をもらうことになっていた。
マシューたちが調べていくと、死の直前までヨウが自殺をした青年のことで<国民保険サービス>を調べていたことがわかる。
青年は自殺を教唆するサイトにアクセスしていた。
殺人と何らかの繋がりがあるのか。
地道な聞き込みを進めていくが、次の殺人が起こる。
読みながら、読んだことがあるような気がしていました。
kindleで原書を買っていたので見てみると、読み終わっていました。
ブログに書くのを忘れていたようです。
ちゃんと内容がわかって読んでいたようなので、よかったですわww。
読み終わってから考えてみると、原題が『The Heron's Cry (鷺の鳴き声)』なのに日本語のタイトルは『沈黙』。内容と合っているのかしらねぇ。
このシリーズは、わたしには”シェットランド四重奏”四部作と同様に殺人事件を解くことがメインではなくて、美しいデヴォン州の風景描写とそこに暮らす人々の人生の機微を読むものです。
デヴォン州に行ってみたくなりました。
三作目の「The Raging Storm」は2023年に出版されているようで、読んでみようかどうか考え中です。
ブレンダン・スロウカム 『バイオリン狂騒曲』 ― 2025/01/16

レイ・マクミリアンはシャーロットにある自宅でバイオリンケースを開けた。
ケースの中にあったのは、白い片方のバスケットシューズと脅迫状。
バイオリンはどこだ?
チャイコフスキー・コンクールまで一ヶ月もないというのに。
盗まれたバイオリンはレイの奴隷だった曾祖父が音楽好きの主人からもらったもので、ノラおばあちゃんが屋根裏にしまっておいたのをレイがもらった。
大学四年の時、そのバイオリンがストラディヴァリウスであることがわかった。
バイオリンに価値があることがわかると、今までレイがバイオリンを弾くことに反対し、バイオリンに見向きもしなかった母親や親戚が、そのバイオリンは自分たちのものであると言い出す。
奴隷の所有者であったマークス家は、バイオリンの所有権を主張し、バイオリンを返すように言ってくる。
バイオリンはレイがノラおばあちゃんからもらったもので、レイ以外の誰のものでもないというのに。
バイオリンを盗んだのは誰なのか?
母や親戚か。それともマークス家か。
レイはチャイコフスキー・コンクールのための練習を続けながら、バイオリンの行方を捜す。
レイは黒人バイオリニストです。
バイオリンを弾くことが大好きで、才能もあるのに、母親は無関心で、バイオリンなんか止めて仕事について金を稼いでこいという人だったため、誰にも師事せず、独学で学んだのです。
たまたま運よくオーケストラのオーディションでジャニス・スティーヴンズ博士に出会い、マーカム大学で全額支給の音楽奨学金をもらえることになります。
そして、様々な差別や偏見を乗り越え、チャイコフスキー・コンクールに出場しようとしていたのです。
レイがバイオリンを弾く描写がとてもよいなと思っていたら、著者のスロウカムはレイと同じ黒人バイオリニストだそうです。
あとがきに、実際に人種差別や不当な扱い、偏見と闘ってきたことと、今も無意識の差別に出くわすことがあると書いています。
本の中に書いてあったことは実際に彼に起ったことなのですね。
レイの物語をきっかけに、どんな人でも「やりたいと思うことをやるようになってほしい」、まわりの人たちも「やりたいことをやるようにうながして」欲しいそうです。
「ひとりでは、ぼくたちは孤独なバイオリン、さびしいフルート、暗いなかで歌うトランペットです。
みんなが集まれば、オーケストラになれるんです」(あとがきより)
ミステリとしては犯人が容易に推測できちゃいますが、アメリカの人種差別やバイオリンの所有権問題、バイオリストの暮らし、チャイコフスキー・コンクールの様子など興味深く読めました。
人種差別問題に興味のある方や音楽好きにお勧めの本です。
S.J.ローザン 『ファミリー・ビジネス』 ― 2024/12/28
私の好きな<リディア・チン&ビル・スミス>シリーズの新刊。

ビッグ・ブラザー・チョイが心臓発作で亡くなった。
彼はチャイナタウンギャングのボスで、1980年代、リ・ミン・ジン堂のニューヨーク支部の新しいボスとして香港から送り込まれていた。
ベイヤード・ストリートとモット・ストリートが交差する区画に高層タワーマンション、フェニックス・タワー建設という再開発計画が持ち上がっている。
その建設予定地にあるリ・ミン・ジン会館は売却に応じていなかった。
フェニックス・タワーはチャイナタウンを破壊すると、チョイが売却を断固拒否していたからだ。
そんな頃、リディアのところにガオおじいさんが電話をしてくる。
スミスとともに彼に会いに行くと、そこにウー・マオリ(メル)がいた。
チョイはメルの伯父で、彼女にリ・ミン・ジン会館を遺した上に遺言執行人にも指定しているので、彼女は会館の最上階にある伯父のアパーメントを確認し、建物全体も見て回りたいらしい。
そして、今や堂のトップであるチャン・ヤオズが彼女に電話をしてきて、チョイが残した会館の今後の扱いに影響するメッセージを伝えたいと言っているので、リディアとビルに同行してもらいたいというのだ。
リディアとビルはメルの護衛をすることになる。
チョイの葬儀の翌日、リディアとビルはメルを伴い、リ・ミン・ジン会館に行く。
ところが会う予定だったチャン・ヤオズはチョイのアパートメントで殺されていた。
チャン・ヤオズを殺したのは誰なのか。
殺人は再開発計画に関係があるのか。
チョイのメッセージとは一体何なのか。
リディアとビルはチャイナタウンを揺るがす、容易ならない事態を収捨させるために奔走する。
中国系アメリカ人たちの間にある文化的な約束事は、他の文化を持つ者たちにはうかがい知れないものです。
著者のローザンさんは中国系ではないのに、よく調べて書いているなぁといつも思います。
リディアの家族の中で唯一、ビルとの関係に反対していた兄のティムが、とうとう折れたようです。
自分に恋人ができると、コロッと変わるのが人間の性ですかね。
今回はリディアの回だったので、次回はビルですね。
十五作目『The Mayors of New York』はアメリカで昨年の12月に出版済みです。
リディアとビルはニューヨーク市長の十五歳の息子の失踪事件に関わります。
一年に一冊と決めているのかもしれませんが、さっさと翻訳して発売してくれませんかね。
<リディア・チン&ビル・スミス>シリーズ
①『チャイナタウン』
②『ピアノ・ソナタ』
③『新生の街』
④『どこよりも冷たいところ』
⑤『苦い祝宴』
⑥『春を待つ谷間で』
⑦『天を映す早瀬』
⑧『冬そして夜』
⑨『夜の試写会』(短編集)
⑩『シャンハイ・ムーン』
⑪『この声が届く先』
⑫『永久に刻まれて』
⑬『ゴースト・ヒーロー』
⑭『南の子共たち』
⑮『その罪は描けない』
⑯『ファミリー・ビジネス』
①から⑥まではブログには書いていませんので、東京創元社のあらすじを参考にしてください。
在庫なしが結構あって、残念です。古本屋でさがすしかないですねぇ。
電子書籍で発売してくれるといいのですが…。
ジェフリー・ディーヴァー 『ウォッチメイカーの罠』 ― 2024/10/26
リンカーン・ライム・シリーズの十六冊目。

NYの高層ビル建設現場にあった大型クレーンが倒壊。クレーンの運転手が死亡し、周囲に多大な損害を与えた。
ニューヨーク市長宛にコムナルカ・プロジェクトと名乗るグループからの犯行声明が届く。
彼らの要求に応えないと、ニューヨーク市は24時間ごとに惨事に見舞われるという。
その頃、リンカーン・ライムたちはニューヨーク市都市整備建設局のインフラ整備関係資料データの持ち去り事件を捜査していたが、一時棚上げにして、クレーンの倒壊事件を調べることになる。
次のターゲットはどこか。
捜査していくと、リンカーンの宿敵、チャールズ・ヘイルことウォッチメイカーが関係していることがわかる。
彼を雇ったのは誰で、ウォッチメイカーの真の目的は何か。
リンカーン・ライムとウォッチマイカーの最後の戦いが始まる。
パターンが決まっているので、どうせ助かるんでしょと思ってしまい、この頃、あまりドキドキ、ハラハラはしなくなりました。
どんでん返しもそれほどではなく、慣れてしまったみたい。
ウォッチメイカーのソシオパス風が薄まり、少し人間味があったのは意外でした。
前は、よく覚えていないけど、こわかったような…。
次は新たな敵と対するのでしょうか。
もっとリンカーン・ライムとアメリア・サックスが活躍し、絡む場面を増やして欲しかったです。
介護士のトム君ももっと出て来て、ライムとやり合ってもよかったのではないでしょうか。
最高の出来ではないですが、安定した面白さでした。
シリーズの順番を載せておきます。
①『ボーン・コレクター』(1999年9月)
②『コフィン・ダンサー』(2000年10月)
③『エンプティ・チェア』(2001年10月)
④『石の猿』(2003年5月)
⑤『魔術師(イリュージョニスト)』(2004年10月)
⑥『12番目のカード』(2006年10月)
⑦『ウォッチメイカー』(2008年5月)
⑧『ソウル・コレクター』(2009年10月)
⑨『バーニング・ワイヤー』(2012年10月)
⑩『ゴースト・スナイパー』(2014年10月)
⑪『スキン・コレクター』(2015年10月)
⑫『スティール・キス』(2017年10月)
⑬『ブラック・スクリーム』(2018年10月)
⑭『カッティング・エッジ』(2019年10月)
⑮『真夜中の密室』(2022年9月)
⑯『ウォッチメイカーの罠』(2024年9月)
①から⑤まではブログを書く前に読んだので、記録がありません。
訳者あとがきによると、コルター・ショウ・シリーズがTVドラマになっているそうです。
『トラッカー』といって、日本でもディズニープラスで見られます。
そのうちにアマゾンのプライムビデオで見られるようになると思うので、待ちますわ。
アンソニー・ホロヴィッツ 『死はすぐそばに』 ― 2024/09/20
<ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズの第五弾。
今回は趣が変わって、ホーソーンとホロヴィッツがいっしょに事件の調査をしません。
ホロヴィッツの代わりにホーソーンの助手を務めるのが元刑事ジョン・ダドリー。
というのも事件は五年前の2014年に起きたので、まだホーソーンとホロヴィッツは出会っていなかったのです。
そのため本書はホーソーンが提供した資料をもとに、ホロヴィッツが書いた三人称視点の過去の記述と、ホロヴィッツ自らの取材過程を一人称で語る現在の記述が交互に描かれています。

ロンドンのテムズ川沿いの閑静な高級住宅地リヴァービュー・クロースで、ベッジファンド・マネージャーをしているジャイルズ・ケンワージーがクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。
この殺人事件を担当することになったカーン警視は面倒な事件だと思い、部下の提案を受け入れ、ホーソーンを外部顧問として呼ぶことにする。
リヴァービュー・クロースには六軒の住宅があり、門と塀で外部と隔てられている。住んでいるのは以下の住民。
≪森の家≫にはスター御用達の歯科医、ロデリック・ブラウンと病に伏せっている妻のフェリシティ。
≪切妻の家≫には元修道女で書店経営者のメイ・ウィンズロウと同居人のフィリス・ムーア。
≪井戸の家≫には引退した法廷弁護士のアンドリュー・ペニントン
≪厩舎≫にはチェスの名手、アダム・シュトラウスと妻のテリ。
≪庭師の小屋≫には家庭医のトム・ベレスフォードと宝飾デザイナーの妻のジェマ、そして双子の娘。
≪リヴァービュー館≫には殺されたジャイルズ・ケンワージーと元客室乗務員だった妻のリンダ、そして二人の子どもたち。
この他に女性の庭師とベレスフォード家の子守、ハンプトン・ウィックに暮らす老婦人の面倒をみているオーストラリア人女性がいる。
六つの家族が穏やかに暮らしていたのに、ケンワージー一家が越してきた時から様子が変わる。
騒音、度重なるパーティ、やんちゃな子どもたち、私道の独占、井戸で死んだ犬、壊れたチェスの駒etc. そして、プール建設計画。
住民達は我慢に我慢を重ねてきて、最後に話し合いを持とうとしたにもかかわらず、ジャイルズは現れず、住民の怒りは最高潮に達する。
そんな中で殺人が起った。
住民の誰もが殺害動機を持っている。
ホーソーンは果たして犯人を捕まえることができるのだろうか。
読むたびに思うのですが、2010年代に起った事件のようには思えません。わざとそう見えるようにしているのでしょうか。
クリスティやらポワロがいる時代に起った事件のようです。
イギリスにはまだそういう感じが残っているのかもしれませんね。
ホロヴィッツってパソコン使えるのかなぁ?
だんだんと暴かれていく住民たちの過去には驚きます。どんな人にも隠していることがあるんですね。
残念なのは、後の方で犯人が明らかにされてしまうことと、気持ちのいい終わり方ではないというところです。
時間が過去から現在に変わるところも、話が途切れてしまうので、あまり好きではありません。
このシリーズはあまりわたしとは合わないのかもしれません。
それでもホーソーンのことがわかるまで、読んで行きますけどww。
シリーズの本を載せておきます。
①『メインテーマは殺人』(2019年9月)
②『その裁きは死』(2020年9月)
③『殺しへのライン』(2022年9月)
④『ナイフをひねれば』(2023年9月)
⑤『死はすぐそばに』(2024年9月)
だいたい年に一冊、翻訳されているようですが、今のところ新刊が出版されていないようなので、来年は<ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズは読めないかもしれませんね。
シリーズとしては10巻まで出版される予定らしいです。
ラモーナ・エマーソン 『鑑識写真係リタとうるさい幽霊』 ― 2024/09/13

ナバホ族の遺留地で育ったリタ・トダチーニはニュー・メキシコ州アルバカーキ市警鑑識課の写真係をしている。
彼女には特殊な能力がある。幽霊が見え、話ができるのだ。
ナバホ族は死を強く怖れ、口にすることすら嫌う。そのためリタの能力はおおっぴらにはできなく、できるだけ霊には近寄らないようにしてきた。
しかし、仕事柄そうはいっていられないし、これが役立つこともある。
被害者の幽霊がリタに他の捜査官が見逃す手がかりを教えてくれ、リタは多くの事件を解決に導いてきたのだ。
ある日、高速道路の跨道橋から落下した女性の轢死現場を撮影していたリタの前に、その女性の幽霊が現れる。
彼女はアーマといい、自分は殺された、犯人を突きとめなければ生き地獄を味わわせてやるとリタを脅すだけではなく、しつこくつきまとうようになる。
仕方なくリタは独自に彼女の事件を調べることにする。
英語の題名『Shutter(シャッター)』が『鑑識写真係リタとうるさい幽霊』になりました。
原題よりも内容をよく表しています。
題名と表紙のイラストからコミカルなミステリなのかと思いましたが、違っていました。
この本では、リタの家族の歴史と彼女の生い立ち、そしていかにしてカメラと出会い、アルバカーキ市警に働くようになったかということと、リタが関わる事件が交互に描かれています。
そして本の半分以上がリタの過去とアルバカーキに起る事件現場に臨場するリタのことです。(グロい表現があるので注意してください)
アーマの事件はいつ調べるのかしらと思っていたら、半分以上たってからちょこっと調べてあっけなく終わった感じです。
事件よりもリタの素性の方が面白いからいいんですけどねww。
とにかくリタはわがままな幽霊のアーマには振り回されますが、リタの特殊能力を知っている祖母とまじない師のミスター・ビッツィリーがリタに会いに来て、お節介ではありますが、色々とアドバイスをしてくれます。
ナバホ族社会に溶け込めなかったリタでしたが、この二人がいてくれてよかったですね。
二人が次の事件でも登場してくれるといいなぁ。
作者のラモーナさんがナバホ族について詳しいのは何故かと思って調べてみたら、彼女はニュー・メキシコ州トハッチのディネ族出身で、現在アルバカーキに住んでいる作家兼映画制作者だそうです。
この本は三部作になる予定で、二作目の『Exposure(露出)』は今年の10月にアメリカで出版されるようです。日本では来年ですね。
次はニューメキシコ州ギャラップで起る貧しい先住民を狙った連続殺人事件。
犠牲者の幽霊が見える探偵が出てくるみたいですが、リタとどう関わるのでしょうかね。
サラーリ・ジェンティル 『ボストン図書館の推理作家』 ― 2024/09/02

オーストラリ在住の推理作家のハンナはアメリカのボストン在住の作家志望のレオとメールのやり取りをしている。
彼に彼女が書いているミステリ小説の原稿を読んでもらい、ボストンに関する情報や本に対する意見をもらっているのだ。(beta readersというらしい)
小説はボストン公共図書館の閲覧室で偶然隣り合わせに座った四人の男女が突然館内に響き渡る女性の悲鳴を聞いたことから始まる。
主人公はオーストラリアの新人作家、ウィニフレッド・キンケイド(フレディ)。
奨学金をもらい、ボストンに滞在し、ミステリ小説を書いている。
彼女が悲鳴をきっかけに知り合い、友人になるのは、ベストセラー作家のケイン・マクラウドと心理学専攻の学生のマリゴールド・アナスタス、法学専攻の学生のウィット・メターズの三人。
部屋に帰ったフレディはテレビで、ボストン図書館で若い女性の死体が発見されたことを知る。
殺された女性は地元のタブロイド紙で働いているキャロライン・パルフリー。
四人は悲鳴を聞いただけだったはずなのに、次第に事件に巻き込まれていく。
レオのメールとハンナの小説が交互に現れ、小説が進んで行くにしたがい、レオのメールが不穏な感じになっていくのが不気味です。
小説の中にもレオという登場人物がいるので、馬鹿な私はメールを書いてるレオと登場人物のレオと混同してしまいました。
それが作者の狙いかしら?
メールと小説の作中作という作りになっているのですが、小説の方があまり好きじゃありません。
今の二十代ぐらいの若者のことをよくは知りませんが、そんなに簡単に友だちになりますか?私にしたら、四人の間も不気味でした。
彼らはサイコパスか、ストーカーかww。
変わった作品でもあるので、興味を持った方は読んでみてください。
面白くなくても、私のせいにしないでね、笑。
ピーター・トレメイン 『風に散る煙』 ― 2024/08/31
七世紀のアイルランド、モアン王国の王の妹で、弁護士・裁判官の資格を持つ修道女フィデルマの活躍するシリーズの長編、10作目。

カンタベリーに向かっていたフィデルマとエイダルフは船が時化に遭い、ダヴェッド王国沿岸の港、ポルス・クライスに寄港する。
エイダルフは頭を打ち、まる一日眠っていたが、その間に船は出航していた。
そんなときに、フィデルマは聖デウィ修道院のトラフィン修道院長から食事に招かれる。
彼はフィデルマたちが数々の謎を解決してきたという評判を耳にしているという。
翌日、修道院に行ってみると、修道院長から謎の解明を頼まれる。
そこにはダヴェット王国の王グウラズィエンが来ていて、彼はひとつの小修道院の修道士が全員消えうせてしまった。この修道院には王の長男が修道士として入っていると語る。
フィデルマは捜査を引き受けるが、エイダルフは乗る気ではない。
というのもダヴェッド王国はブリトン人の国で、昔サクソン人に侵略されたことがあり、サクソン人を嫌っていたからだ。
一応書いておきますが、エイダルフはサクソン人です。
フィデルマは知力も優れていますが、身の危険を避ける術も身に付けているスーパーウーマンです。
エイダルフにはもったいない(ゴメン)。
なんとなく、二人の間に不穏な雰囲気が漂ってきつつある感じがします。
カンタベリーに行くまでにどうかなるのかな。
翻訳されているのが三分の一ぐらいなので、急いで欲しいです。
日本で発行された順番を載せておきます。
①『蜘蛛の巣』(2006年10月)
②『幼き子らよ、我がもとへ』(2007年9月)
③『蛇、もっとも禍し』(2009年11月)
④『死をもちて赦されん』(2011年1月)
⑤『サクソンの司教冠』(2012年3月)
⑥『翳深き谷』(2013年12月)
⑦『消えた修道士』(2015年11月)
⑧『憐れみをなす者』(2021年2月)
⑨『昏き聖母』(2023年3月)
⑩『風に散る煙』(2024年7月)
短編集
①『修道女フィデルマの叡智』(2009年6月)
②『修道女フィデルマの洞察』(2010年6月)
③『修道女フィデルマの探究』(2012年12月)
④『修道女フィデルマの挑戦』(2017年12月)
⑤『修道女フィデルマの采配』(2022年2月)
短編は読んでいない可能性があります。
『消えた修道士』は読んでいると思うのですが、探せませんでした。
<美味しいランチ>
この前、元同僚とフレンチランチに行って来ました。
使われている食器がビレロイ&ボッホで、今は販売されていない柄のようです。

アミューズ。プリンみたいですが、ちょっと甘くて熱かった。

ムール貝が一粒入っています。残りの汁はパンにつけて食べました。

北海道帆立貝、セップソース。

国産牛頬肉の赤ワイン煮込み。肉が下に隠れていて、残念。前面に出した方がいいような気がしますが、牛肉が値上がりしているのかな。
この他にデザートとコーヒー。
ご馳走様でした。
オマール海老がオススメとのことなので、次回食べてみたいです。
M.W.クレイヴン 『ボタニストの殺人』 ― 2024/08/27
ワシントン・ポー・シリーズの五作目。

国家犯罪対策庁の重大犯罪分析課の部長刑事、ワシントン・ポーは”ばね足ジャック”の張り込み中に、ノーサンブリア警察からの電話で、病理学者のエステル・ドイルが殺人容疑で逮捕されたと知らされる。
ポーはすぐに駆けつける。
ドイルは彼女の父親の殺害容疑で逮捕されていた。
ニューカッスル・シティ・センター警察署のテヨン・リー主任警部によると、彼女の両手には射撃残渣という物的証拠があり、家周辺の雪には家に入っていく彼女の足跡しかなかった。
そして、1年前、父親が新しい遺言状を作り、彼女が家を一軒相続できるようにしたため、父親の気が変わるのを恐れて、殺害したとの仮説を立てているという。
ポーが捜査を開始しようとしたところ、ロンドンに呼び戻される。
その年最大の議会スキャンダルを起こした、シェフィールド東部地区選出の保守党の下院議員、ハリソン・カミングズのところにきのう、詩と押し花が送られてきた。
その詩と押し花は、『モーガン・ソームズ・アワー』にゲストとして招かれていたケイン・ハントが番組放送中に自分のもとに送られてきたとして見せたものと似ていて、同一犯人が作ったものと思われた。
ハントはそれを見せた後に倒れ、亡くなった。毒殺されたものと見られた。
ポーたちが捜査を始めようとしたときに、カミングズ議員が死んだという連絡が届く。
二十四時間態勢で警備されていたというのに、一体どうやって毒をもったというのだ。
そこにボタニストと名乗る犯人から電話がくる。
元ジャーナリストのヘニング・シュタールに連絡を取ってもらいたい。
三人目を殺したらすぐに彼と話したいと言うのだ。
ドイルの事件と二件の毒殺事件、そして新たな予告殺人。
果たしてポーはこれらの事件を解決できるのか。
被害者は世間の嫌われ者で、殺されても仕方のない奴ばかりです。
毒で殺されたのはわかっても、どうやって毒を摂取させたのかがわかりません。
一方、ドイルの事件は密室殺人と思われます。
しかし、どちらもトリックがわかってしまうと意外でもなんでもなかったです。
初っぱなに西表島が出てきたので日本が関わることが何かあるのかと思ったら、あまりいいことではなかったです。
ポーとティリーの掛け合い漫才みたいな会話は期待どうりで、楽しませてもらいました。そこに二人のストッパーとしてフリンが入り、三人はいいチームです。
最初のミルクには吹き出しましたけど、笑。
この三人の会話をずっと読んでいたかったです。
そうそう、ここに書きませんけど、ポーの私生活に関するアッと驚くことがありますよ。
次は『The Mercy Chair』という題名で、身体に難解な暗号が彫られた男の殺人事件らしいです。
今回はティリーの活躍が少なかったので、次回に彼女の出番が多いといいですね。
是非ともポーと二人で捜査に乗り出してもらいたいものです。
このシリーズの順番を載せておきます。
①『ストーンサイクルの殺人』
②『ブラックサマーの殺人』
③『キュレーターの殺人』
④『グレイラットの殺人』
⑤『ボタニストの殺人』
お勧めのミステリですので、最初から読んでみて下さい。
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