読んだ時代小説シリーズ2026/01/03

少しブログに繋がりやすくなったかと思ったら、海外の方では全くダメみたいです。どうにかならないものでしょうかね。

さて、昨年に読んだもので、紹介していないものがあるので、一遍に紹介しちゃいましょう。


和田はつ子 『家族ぜんざい 料理人季蔵捕物控』
ある日、昼賄いでにぎわっている塩梅屋に酒問屋の若旦那、江戸屋治吉がやってくる。養母を刀で斬殺し、打ち首に処されたという幼馴染の和泉健治の無実の証をたてたいというのだ。手助けをすることにした季蔵だが…。

和田はつ子 『日ノ本一のおせち 料理人季蔵捕物控』
塩梅屋の安くてうまい昼賄いが好評だ。ある日、季蔵の弟分の豪助とその妻のおしんが切り盛りしている鳥料理の店、味楽里の庭で武家の娘の骸が見つかり、同じ時に塩梅屋に海苔を寄付してくれた品川屋の主と大番頭が店の近くの神社で殺されていた。辻斬りではないかと思われた。
そんな時に北町奉行烏谷は季蔵に、『四方八方料理大全』の著者であり、種々料理法の生き字引である松枝貴栄に手助けを頼み、”大江戸泉岳寺初参り”に出す日ノ本一のおせちを作り上げろと命じる。烏谷の真意は?

料理人季蔵捕物控シリーズも五十作目だそうです。長く続いていますね。
この頃、料理の記述が多くて、そこは流し読みになっています。
御節料理について詳しく知りたい方は読んでみるといいでしょう。
李蔵の思い人が今回は出てこなくて、ちょっと残念です。

麻宮好 『震える羊羹舟 おけいの戯作手帖<二>』
戯作者見習のおけいは二作目が書けずに苦しんでいたが、十一歳の弟の幸太郎には単独で妖怪絵の注文が来ていた。
そんなある日、おけいの想い人で、版元の勘助からお菓子競べに誘われる。
なんとそこで羊羹舟が宙を飛んだのだ。
おけいは羊羹舟の謎を解き、次作に書こうと思うが…。

「羊羹舟」は羊羹を作る時に使う型のことです。
おけいは一巻目よりもしおらしくなっていますww。
同じく女戯作者の桜木華絵が登場し、おけいと友だちになったので、次回は二人で謎解きをするのでしょうかね。

風野真知雄 『わるじい義剣帖(六)ありがたや』
孫愛溢れる愛坂桃太郎は相変わらず面倒な頼まれごとに悩まされている。
今回は「化け猫の墓」、「駕籠かきが消えた駕籠」、「役立たずの提灯」という謎解きだ。
こんなことばかりならよかったのだが、桃太郎は隠密同心の殺しと関わることになる。

ひょっとしたら桃太郎は次回は危ないことにまきこまれるのでは…。
有能な人はおちおち隠居もできないものですね。

坂井希久子 『撫子こがし 花暦 居酒屋ぜんや』
只次郎とお妙夫婦に子が生まれたが、産後の肥立ちが悪く、お妙はなかなか床を上げられずにいたため、お花は一人で『ぜんや』を切り盛りしている。
そんな時に一人のお侍がぜんやにやって来る。彼はお花の実母と何やらありそうな感じだ。
一方、熊吉は仕事の迷いとお花への想いから抜け出せずにもがいていた。

「どっちを向いて歩けばいいか分からないときは、周りをよく見てごらんなさい」
というお妙の言葉が熊吉の心に届くのかな。
一区切りがついたお花のこれからの活躍が期待されます。

馳月基矢 『掌 蛇杖院かけだし診療禄』
穢れが見える拝み屋桜丸が予言した通りに麻疹が江戸で猛威をふるい始めた。
桜丸の指揮の下、蛇杖院は総出で病人の世話をしていたが、小梅村にも麻疹の患者が出るようになり、やがて桜丸が倒れた。
市中には根も葉もない噂話や印施、瓦版などがばらまかれた。
薬が大手の医家に押さえられ、その医家は高い薬礼が支払える者だけに治療を施していた。
そんな頃、瑞之助の実家の長山家から甥や姪が麻疹に罹ったと手紙が来る。
瑞之助は治療のために長山家に戻り、三年ぶりに母や兄と向き合うことになる。

江戸時代の医師たちは治療法も確立していない時に、知恵を出し合って患者を助けてきたのですね。
瑞之助が医師として益々成長し、頼りになってきました。
次回に思わぬ展開がありそうで、楽しみです。

料理人季蔵捕物控シリーズとおけいの戯作手帖はそろそろ読むのを止めようかと思います。
それ以外のシリーズは面白くなってきたので、続けて読もうと思います。

横山起也 『針ざむらい』2025/12/27

『編み物ざむらい』、『お茶漬けざむらい』に続く新さむらいシリーズ。


糸原佐武朗は広島藩の山中のたたら場を回って検分する鉄徒目付だ。

ある日、山から屋敷に戻ったばかりの佐武朗に親友の黒部新右衛門が訪ねてきて、誰にも渡さないようにと三冊の帳面を預けて帰っていく。

翌朝、黒部家に寄ってから登城しようとした佐武朗は、新右衛門の父、黒部伊右衛門から新右衛門が町はずれの竹藪で亡くなっていたことを聞く。
身体には剃刀でそいたような傷や服ごと肌を鋭く切り裂くようなひどい傷跡があったという。
そこに下目付の門野鷲蔵が現れ、佐武朗は番所に引ったてられそうになる。
佐武朗は新右衛門が言った「誰にも」は役人や藩の上役という意味かもしれないと推測し、日記を守るためにその場から逃げ出す。

一年後、佐武朗は江戸の神田鍛冶町で「針研ぎ かぐら」を営む浪人となっていた。
新右衛門の仇のうちの一人が江戸を拠点としていると聞いたからだ。

声聞師の青の釣り針を研ぐ仕事をしてから、佐武朗の運命は変わっていく。
果たして佐武朗は新右衛門の仇を取ることができるのか…。

横山さんは「〇〇ざむらい」シリーズをこれからも続けて書いていくことにしたのでしょうか。
それにしても「編み物ざむらい」シリーズがまだ終わらず、「お茶漬けざむらい」シリーズが今年出たばかりなのに、新しいシリーズを始めるなんて、ちょっと心配になります。
今時の出版事情では一つのシリーズをじっくり書いていくというのはできないのでしょうか。
作家さんには他のシリーズを書くことはブレーンストーミングみたいになっていいのかもしれませんね。
どうせなら次々と新しい「〇〇ざむらい」を開発していって、全員でひとつのお話に出演というのもいいかもww。

何を食べるのかを考えるシリーズ2025/12/06



ヨーキー弟はトリミング先で耳を立てて写真に写るようになったと思っていたら、二枚もらった写真のうちの一枚だけでした。
なんでなんですかね。


兄はちょうど帽子の下にお座りしています。頭にかぶせたいけど、ソフトがないのでできないです。
ヨーキー弟にはちゃんとお座りする兄の爪の垢を煎じて飲ませたいですww。

さて、今週のママは健康診断に行って、とても疲れてしまいました。
いつも思うのですが、病院には人の元気の素を吸うお化けでもいるのでしょうか。
元気のない時は美味しいものを食べたくなりますね。
というわけで、二作品をご紹介しましょう。


有馬美季子 『お葉の医心帖 であいの柚の木』
町医者の道庵の助手を務めるお葉は、道庵が留守の時に頼まれて、修行中の鍼を打ってしまう。その患者は卒中の後遺症で顔面麻痺が起こり、いつも鍼を打ってもらっていたと言ったのだ。しかし、後で道庵が診察すると、違う病であることがわかる。お葉は自信をなくし、しばらく鍼を打てなくなるが、その代わりにお灸を極めようと考える。

霜月のある日、お使いの帰りに稲荷に寄ったお葉は脚を怪我した猫を治療しようとしていた林次郎と出会う。
お葉は猫に会うことを口実に林次郎と待ち合わせをして何回も会ううちに、彼への思いが強くなっていくが、林次郎には何か秘密があるようだった。

妊婦や脚気、狭心症、火傷の患者などが道庵のところにやって来ます。
脚気は「江戸わずらい」と言われ、江戸で大流行しましたが、白米を食べて偏った食事をしていたことが原因だったそうです。
お葉は脚気や狭心症、火傷の患者のために道庵から教わった病気によい食材を使い、料理を考えていきます。
脚気よりも心臓によい食べ物が現代には必要なので、書いておきますね。
いいのは青魚、野菜、果物、キノコ類、大豆から作られたもので、ダメなのはお酒、塩分、甘いもの、脂っこいものです。
お肌には玄米や若布の味噌汁などがいいそうです。
江戸時代からわかっていたのですね。
玄米は脚気にもいいのですが、よく噛まないと消化しにくいという欠点があるので、気をつけましょう。

思いもかけないお葉の初恋ですが、これからいろいろとありそうです。
悲恋にならなければいいのですが。

仙川環 『食べてはダメとは言いません 暮林医院栄養室』
暮林怜奈は祖父が開設した内科医院で管理栄養士として働き始めた。
これまで二つの職場を経験している。
最初の職場は神奈川県西部の中規模病院で、尊敬していた女性上司が突然退職したのをきっかけに辞め、次にフリーの管理栄養士の個人事務所でメディア向けの仕事をしていた。しかし、病院で担当していた肥満症の女性から減量に成功したという暑中見舞いのハガキをもらい、もう一度栄養指導の仕事をしたいと思い始め、捨て犬を拾い、飼おうと思ったこともあり、西荻窪の実家に戻ったのだ。
祖父が亡くなり、大病院の内視鏡部長をしていたが、部下へのパワハラで自主退職を促された父が医院を継いでいる。
父は怜奈が栄養指導をすることに反対だったが、ベテラン看護師兼事務長の今川美佐子を味方につけ、なんとか認めてもらった。
最初は閑古鳥が鳴いていたが、怜奈の頑張りが功を奏し、徐々に栄養室を訪れる患者が増えてきた。

怜奈が栄養指導を行った人たちは高血圧、栄養失調、痛風、貧血、誤嚥性肺炎、糖尿病、狭心症などの患者やその家族ですが、おもしろいことに、色々とあるんです。
例えば、本人は高血圧ではないのに、高血圧のふりをして薬を欲しがったりする人。怜奈はすごいですよ。そういう人の嘘を見抜くんですから。
それ以外にも患者のためにわざわざ近所のスーパーやコンビニに行き、買える食品や食材のリストを用意し、頼まれれば、レシピも考えて用意します。
時間外なのに自宅に行って相談を受けたりもするんです。
患者のために全身全霊を賭けています。
怜奈のような栄養士が現実にいますかね?

私は二つの病院で栄養相談をしたことがありますが、一つは役立ち、一つはひどかったです。
この頃思うのは、医師でも看護師でも栄養士でも、隣人でも友人でも通りすがりの人でも、いい人に出会ったら儲けもの。
出会いに感謝しましょう。

もし本に書いてある病気の方、もしくは家族の方は読んでみるといいでしょう。
役に立つことがあるかも。

最後に怜奈の言葉を載せておきます。

「いきなり完璧を目指す必要はない。挫折せず、長く続けられる方法を考え、実践してほしい。コツコツやっていけば、身体はきっと応えてくれる」

麻宮 好 『お内儀さんこそ、心に鬼を飼ってます おけいの戯作手帖』2025/10/27

私は結構本をタイトル買いすることがあります。
特に時代小説は面白いタイトルが多いような気がします。
この本もタイトルに惹かれて読んでみました。


おけいは火事で両親を亡くし、十一歳の弟と共に戯作者の祖父のところに身を寄せている。
祖父の筆名は「寄木古茶」といい、おけいは祖父の原稿の清書をしている。
おけいは戯作者志望だが、まだ書けていない。
弟の幸太郎は幽霊の類が見える。
幸太郎は「見えないものが見える」ことから祖父書く読本『雪姫道中奇談』の挿絵を描き、評判になっている。

ある日、大伝馬町の油問屋・安房屋の主人夫婦の心中事件が起こる。
友だちのお奈津にのせられたおけいは戯作のネタになるのではないかと思い安房屋に行ってみると、因縁のある岡っ引きの伝三郎に会ってしまい、ほうほうの体で逃げ帰ってしまう。

それからしばらくして、安房屋に夜な夜な幽霊が出るという噂が出る。
よせばいいのに、おけいは俄然興味を持ち、幸太郎を霊験あらたかな神司の格好にし、安房屋に乗り込む。
すると、別の拝み屋とかち合ってしまう。
うまくその拝み屋に取り入り、共に幽霊を待つが、何かおかしい。

おかしなことは続き、伝三郎からおけいと幸太郎の二人も探索に加えると言われる。
おけいは事件を探りながら、祖父の言葉、「人の心は見えぬ。おまえはその見えぬものを見ようとしている。そして、それを言葉にしたいのだろう」を胸に執筆を続けていく。

おけいは私の好きなタイプじゃないですが、弟の幸太郎がとても姉思いのいい子で、彼が出てくるのを楽しみに読み進んでいきました。
事件の真相は目新しくありませんが、今では誰もが知っている精神疾患が出てきて、麻宮さんは初読みなのでわかりませんが、こういうものを取り入れながら時代小説を書く人なのでしょうか。
おけいが事件に関わる人の胸の内をどのように書いていくのかが読みどころとなっています。

タイトルはそれなりにお話の内容を表していますが、イマイチですねぇ。
二作目も出ていて、『震える羊羹舟』だそうです。
まだこっちのタイトルの方がよさそうですねww。

天羽 恵 『もゆる椿』2025/10/26



金木犀の香りがしたと思ったら、すぐに寒くなってしまいました。
秋と春がなくなり、夏と冬だけになってしまうのでしょうか。

わんこたちはシニアなので、心配です。
特に兄犬は今年、暑くなったとたんに調子が悪くなったので、今は天気のいい日中にお散歩させています。
ママも寒くなると痛めていた腰と、今年から手が腱鞘炎になり痛みが出てきました。
わんこたち共々、できるだけ身体を温めて動かすようにしますわ。


第六回大藪春彦新人賞を受賞した天羽恵さんのデビュー作を読んでみました。


二十歳の真木誠二郎は三人兄弟の次男坊の冷や飯食い。
弟の文三郎は長崎で蘭方医になるべく遊学中だが、誠二郎は唯一の取り柄である剣術で身を立てようとしたが、彼のような腕前の剣客は履いて捨てるほどいると諦観するようになっていた。

しかし、チャンスが訪れる。
裏目付の佐野に見込まれ、士官への道が開かれたのだ。
御役目は尊王攘夷派の黒幕を謀殺するために江戸から京まで赴く刺客の共をするというものだ。
刺客は”里の者”と呼ばれる殺生を生業とする者だという。
”鬼のような刺客”との御役目を無事に果たすことができるかと不安に思う誠二郎。

指定された品川宿の播磨屋に行くと、現れたのは下女奉公の町娘そのものの十二歳の美津という娘だった。
美津は傍若無人の大食い。何故か誠二郎を気に入ったようだ。
こんな子どもが刺客役という荒事をできるのかと疑問を持つが、美津は目に天賦の才があり、里で刺客の技を仕込まれていた。
「生来の臆病者で切った張ったは苦手だが、いざという時はためらわず刀を抜ける男でありたい」という誠二郎に美津は剣の稽古をつけてやると言う。

こんな二人に待ち受けていたのは…。

お美津が今時のギャルっぽくて、彼女に翻弄される誠二郎が面白かったです。
十二歳の少女には壮絶な過去があり、刺客になったのにも深い事情があったのです。
そのことを知って、人を切ったこともない誠二郎がお美津を護ろうとするところがいいですね。

今までにない時代小説で、若い人に受けるかもしれません。
時代小説なんて読んだこともないけれどどういうものか読んでみたいと言う身体も心も若い方は是非一読をww。

朝井まかて 『どら蔵』2025/10/21



「どら蔵」こと寅蔵は、大阪の道具商「松仙堂」のドラ息子だが、店の跡を継ぐには主家の骨董商「龍仙堂」で七年間丁稚奉公を勤めねばならない。
しかし、目利きにちょっとした自信のある寅蔵はとんでもないヘマをしてしまい、修行は頓挫し、それを知った父親に勘当される。
大阪にはいられなくなった寅蔵は江戸に行くことにする。

なんとか江戸に辿りついた寅蔵はひょんなことから道具屋「白浪屋」の親分、権兵衛に拾われ、一日中、屑や欠片を拾い歩く毎日。

ある日、親分に連れていかれた先で、無謀にも入れ札をしてしまい、勝ったはいいが、蔵の中は一つを除いて屑ばかり。
その結果、寅蔵は権兵衛に三十三両もの借金をしてしまう。

寅蔵は権兵衛に借金を返すまでこき使われる運命か。

権兵衛に富山の薬売りの共をさせられるが、その時に義太夫の竹本桃之助と出会ったことから寅蔵の運が変わっていく。

関西人と関東人は違う人種(?)と言われていますが、寅蔵の口のよく回ること。
なんでも一言、言わずにおれないという性格で、江戸の人たちは飽きれます。
大阪人の知り合いはいますが、寅蔵ほどではないんですけど、実際はどうなんでしょうね。

意外と(失礼)人のいい寅蔵が江戸の狡猾な人たちにコケにされながらも、頭を働かせ、目利きの骨董商として成長していきます。
知らなかった富山の薬売りや骨董屋の世界が垣間見られるお話です。
400ページ以上の厚い本ですが、半分を過ぎた辺りから俄然面白くなりますので、我慢して読んでみてください。
寅蔵以外の登場人物たちがいいキャラなので、シリーズになってもいいぐらいです。ひょっとしてシリーズ化しようと思って最後がああなのかな。


<今朝のわんこ>
兄はいつも朝食が終わるとママの寝床にきます。(というかママが連れてきます)


ママが本を読んでいると、いつの間にか寝ています。
でも、背中を向けると、わざわざ起きてママのところまで来ます。
ママが眠くなり二度寝しようとすると、起こしに来ます。迷惑なのですがぁ。

髙田郁 『志記(一) 遠い夜明け』2025/10/19

髙田さんの新しいシリーズの開幕です。


黒兼藩で代々藩医を勤める家系である蔵源家の一人娘、美津は文化元年(1804年)、如月の清明の日に生まれた。
彼女の祖父、教随は秘密裏に腑分けを行い、藩校としての医学校「青雲館」創設に尽力し、父の恵明は「青雲館」を引き続き、その発展に尽くした。

十五の歳から美津は青雲館で医学を学び始めた。
開校以来初めての女の学生であるため、美津は後ろ指を差されないように、三年間常に首席を取り続けた。
最終年の首席者は京、大阪、江戸のうち、好きなところへの遊学が許されている。
しかし、美津は女であるが上に遊学先を見つけられずにいた。
藩主に付いて江戸にいる恵明は見かねて、江戸で美津の遊学先を探し始める。

美津と同じ時に生まれた備前の刀鍛冶の一族の娘、高越暁は刀工を目指し、江戸の神田紺屋町の刀工、三石真達の弟子となる。
暁の祖母は『女忠光』と異名を取った女刀工だった。
女であるが上に、兄弟子たちからの嫌がらせが続いていた。

医学を志す美津と刀工を目指す暁。
二人の人生が江戸で交差する。


美津の後見人、精華院尼が言った言葉、『灯りを高々と掲げて、その道を行くがよい』は前に読んだ『らんたん』に通じるものを感じました。

江戸時代に困難な道を歩こうとする二人の女性の人生を、これから描いていくのでしょうね。
帯に「私のライフワークとなる新シリーズ」と書いてありますので、今まで以上に面白いお話になりそうで、楽しみです。

畠中恵 『まろ丸伊勢参り』2025/10/01



1830年、六十年に一度のおかげ参りの年に、両替商の三男坊・九郎は姉のおふさから嫁ぎ先の東屋に呼ばれた。
六つになる娘の結に、大阪の大店・花沢屋の跡取りになるという養子話が舞い込んだので、伊勢まで結を連れて行って欲しいと頼まれたのだ。
何故か花沢屋からの迎えは来ないという。
義兄は誰が何のつもりでお結を伊勢へ呼んだのか、調べて欲しいと言う。
おふさからは結を身勝手な花沢屋の人たちから守って欲しいと頼まれる。
父と兄からあっさりと許しが出て、九郎は結と拾ったばかりの仔犬のまろ丸を連れて伊勢まで行くことになる。

行く先々で、様々な出来事や困難と遭遇するが、途中から上方へ戻るというお以登たち三人といっしょに旅することになる。

お以登たちは何者なのか。
九郎は無事に結を伊勢へ連れて行くことができるのか。
そして、旅の先には何があるのか。

お伊勢参りというと、西條奈加さんの『御師弥五郎 お伊勢参り道中記』を思い出しました。
旅する道は同じように思うのですが、こちらは子どもと犬がいるのでちょっと違います。子どもと犬は川を怖がり、渡るのが大変そうでした。
川って道中に結構あるんですね。今は橋がかかっているから、あまり川の印象がないのでしょうね。

題名が『まろ丸伊勢参り』なので、わんこのまろ丸が主人公で活躍し、お話を語るのかと思っていたら、章の初めにちょろっと出てきて、ちょこっと活躍するぐらいでした。
主人公の九郎がなにやらしゃばけシリーズの一太郎っぽくて、三男坊ですが、お店の出来た息子は似たようなキャラになってしまうのですか。
もう少し違うキャラだったらよかったのに。
それにお以登のことはすぐにわかりました。
気がつかない九郎がおかしいですねぇ。

江戸からおかげ参りに行くとどういう道を通り、どんな宿場を通り、どんな食べ物があるのかがわかり、自分も旅している気分になれます。
とにかく九郎の今後が気になります。

西條奈加 『初瀬屋の客 狸穴屋お始末日記』2025/08/16

わかれ縁』に続く、狸穴屋お始末日記シリーズの二作目。


狸穴屋は公事宿。
村と村、町と町、あるいは家と家の諍いや同じ屋根に住む者同士の悶着などの公事、つまり訴訟を手助けするのが公事宿だ。
狸穴屋は離縁に特化した公事宿。
絵乃は借金と浮気を繰り返す亭主と離縁するために狸穴屋で手代見習いとして働き始めた。
そして、離縁が叶った後、ふた月が経った。

「祭りぎらい」
女将の息子、佐枝吉の知り合いの笛師が女房の父親から離縁を申し渡された。何とか離縁に至らぬように力を貸して欲しいというが。

「三見の三義人」
三見村が上林村を相手に二百五十年前から公事を起こしているが、いつも負けている。今回は勝てるのか。捨て身の三見村の三人の客が考えた策は・・・。

「身代わり」
評定所留役の浅井南堂の養子である浅井集堂が南堂を訴えた。何か理由があるのか。調べていくと・・・。

「夏椿」
『鶴勢屋』という商家の大女将が三十年連れ添った伴侶と離縁したがる理由とは。

「初瀬屋の客」、「証しの騙し絵」
三十年前に公事師を辞めさせられた元夫、日賀蔵と離縁し、今は別の夫と『初瀬屋』という旅籠を営んでいるお笠が狸穴屋にやって来る。日賀蔵が江戸に現れ、『初瀬屋』に宿泊している山縣屋と何か企んでいるようだというのだ。調べても特に何も出ては来なかったが、ひと月近くを経た師走半ばに、山縣屋の主人が狸穴屋にやって来て、いま一度訴を起こしたいという。

江戸時代の訴訟のことがわかるお話です。
公事師はただ単に公事を扱うだけではなく、客の幸せのために一肌脱ぐ公事師もいたのですね。
離縁でき、母親と一緒に暮らし始めた絵乃が落ち着いてしまい、あまり活躍していないのが残念です。
これなら女将の桐が主役の方が面白かったかもしれません。
次回に期待します。

読んだ時代小説2025/08/13

また読んだ文庫本が増えてしまったので紹介します。


馳月基也 『拙者、妹がおりまして 8~10』
ずっと前に読んでいたのですが、紹介するのが遅くなりました。
8巻では、勇実がものもらいになり、蘭方医に手術をしてもらいます。
江戸時代にもものもらいの手術ができたのですね。
火牛党がまだ生きていることがわかります。
龍治はごろつきに絡まれていた辰巳芸者を助け、惚れられます。千紘はどうする?
勇実は雨宿りで菊香と船宿へ。そこに鼠小僧が現れ、全然色っぽくない話になってしまいます。
そして、最後に手習所のみんなが秘密の務めを始めます。可愛いです。
9巻では、医者の三男坊、大平将太に妹ができます。本当の妹ではなくて、相手方との家柄の釣り合いが取れるようにと養女になったのです。その妹に将太は一目惚れをしてしまいます。
10巻は最終巻で、やっと終わりますww。
勇実と菊香、そして龍治と千紘、この二組の運命はいかに。

10巻まで伸ばしに伸ばしたという感じですが、それなりに収まるところにおさまりました。
登場人物、皆に幸あれと祈るばかりです。

馳月基也 『義妹にちょっかいは無用にて 1~7』
長崎から一人、嫁に行くために江戸に出てきて大平家の養女になった理世ですが、破談になってしまい、長崎へ帰ることもできず、大平家に残ります。
将太は妹であるがうえに、自分の気持ちを伝えられません。
いつか将太の気持ちは理世に届くのでしょうか。

悶々とする将太に呆れながらも、読んでいってしまうお話です。
将太は今でいう発達障害児なのでしょうね。
文政七年(一八二四年)のことだそうです。外国船が続々と日本に現れている頃で、翌年、異国船打払令が出ています。
『拙者、妹がおりまして』の勇実たちのその後が書かれているのが嬉しいです。
是非、『拙者、妹がおりまして』から続けて読んでください。

山本攻次 『千夏の光 蘭学小町の捕物帖』、『千夏の時 蘭学小町の捕物帖』
十八になる千夏は蘭方医の畠中順道の娘で、普通の女子が興味を持つことに全く興味がなく、縁談にも見抜きもしない。父の診察に付き添い、指示に従い薬を用意している。難事が大好物で、好きな蘭学を使い次々と解き明かしていく。

避雷針とか種痘など今では当たり前のことが出てきて、江戸時代から知られていたということがわかります。意外と江戸時代は進んでいたのですね。
好奇心旺盛で、お転婆の千夏は何にでも首を突っ込んでいくので危ないです。

山本攻次 『角を曲がれば謎がある 大奥様陽だまり事件帖』
主人公は四百五十石の旗本、羽鳥弥左衛門利宣の母親で六十三になる嬉代。
普段は書を教えたり、句会を催したりして過ごしているが、持ち前の観察眼と頭の回転が評判で、よく彼女のところに相談事が持ち込まれ、嫡男の娘で孫の那美を片腕にし、次々と厄介事を解決していく。

山本さんは「八丁堀のおゆう」シリーズを書いている人なんですね。知らずに読んでいました。
女主人公に特徴がありますが、男性を主人公にした時はどうなんでしょうね。
今回の本は可もなく不可もなし。次が出ても読まないかもしれません。

おすすめは馳月基也さんのシリーズです。


<今日のわんこたち>


脚の毛が伸びてきて、普通に毛が乱れているわんこに見えてきました。


ヨーキー弟はお口周りとお目め下が相変わらずのバッチさ。


犬部屋から脱走することがあるので、特別室を用意しましたが、ここからも脱走します。鉄のドアを力まかせにこじ開けるのです。すごい力です。
いつもはドアをリボンで結び開かなくしています。
上にのっているおもちゃが気になり、チンチンしています。絶妙のバランス感覚。