読んだ日本ミステリ三冊(文庫本)2024/05/12



梅雨に向けて、紫陽花が出始めました。


薔薇が盛りです。


変わった花だと思って調べてみると、「ブラシノキ」というんだとか。
見たままの名前ですね。

読んでからだいぶ経つお話もあり、記憶が薄れていますが、三冊載せときます。


米澤穂信 『冬季限定ボンボンショコラ事件』
<小市民>シリーズの五作目。
小市民を目指す小鳩君と小山内さんが学校の帰りに寄った鯛焼き屋から家に帰ろうと堤防道路を歩いていると、車が突っ込んできた。
かろうじて小鳩君は小山内さんに体当たりして衝突コースから押し出したが、小鳩君は轢かれてしまう。
病院で目を覚ますと、医師に右足の骨をおっており、手術が必要だと聞かされる。
小鳩君の大学受験は早々に終了し、浪人が決まる。
轢き逃げの犯人は見つかっておらず、小鳩君は警察の聴取を受ける。
小山内さんは犯人捜しを始める。
小鳩君は見舞いに来た友人と話しているうちに、三年前にも堤防道路で轢き逃げ事件があったことを思い出す。
その事件は彼にとって汚点だった。
ベッドに横たわりながら、小鳩君は当時のことを思い出していく。
その時の轢き逃げ事件と今度の轢き逃げ事件と関係はあるのだろうか?

<小市民>シリーズもこれで終わりのようです。
春季限定いちごタルト事件』(2004年12月)から始まり、『夏季限定トロピカルパフェ事件』(2006年4月)、『秋季限定栗きんとん事件』(2009年3月)、『巴里マカロンの謎』(2020年1月)、そしてこの『冬季限定ボンボンショコラ事件』と続きます。
小鳩君と小山内さんの出会いが書かれていて、謎が解けました。若い、もちろんまだ二人は高三ですから若いんですけど、中学生の頃の二人を垣間見られて嬉しかったです。
二人の関係性は変わりませんが、大学でもまた会えますよね。
新しいシリーズとして大学時代篇を書いてくれるといいんですけど。
<小市民>シリーズの中で一番面白かったです。

三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖<4>扉子たちと継がれる道』
扇ガ谷にある鎌倉有数の資産家の邸宅で開かれるガーデンパーティに、篠川大輔と彼の妻、栞子は招かれた。
パーティには娘の扉子も来ていて、もぐら堂の家族も招かれているという。
そして、なんと、栞子の母親の篠川智恵子までもが招待されていた。
戦中、鎌倉の文士たちが立ち上げた貸本屋「鎌倉文庫」にまつわる、三者三様の物語が語られる。

祖母、母、娘と顔も頭脳もそっくりな三人と関係する大輔君は大変だろうなと思います。一番厄介なのは、もちろん祖母の智恵子ですけどね、笑。当たり前ですが、彼女にも若い頃があったんですねぇ。
扉子が主人公になってからのお話があまり好きじゃなかったんですが、今回は智恵子がメインなので興味深く読めました。
「鎌倉文庫」は実際にあったそうです。よくこのようなお話を紡げたなと思いました。

澤村御影 『准教授・高槻彰良の推察10 帰る家は何処に』
「第一章 ミナシの家」
五月十五日、深町尚哉の二十一歳の誕生日会が行われた。祝ってくれたのは、高槻彰良と彼の友人で刑事の佐々倉健司の二人。
大学三年生になった深町はそろそろ卒後後のことを考えなければならない。
高槻ゼミではグループ発表が行われており、『ひきこさん』についての発表が行われた。
深町は高槻と一緒に事故物件の『ミナシの家』に出るという幽霊について調べる。
「第二章 消えた少年」
夏休みになり、深町は自分と同じ異能を持つ遠山の事務所でバイトする。
バイトの休みの日、大学に行くと、高槻にコーヒーを誘われる。
バイトについての話をしていると、そこにゴシップ誌の記者の飯沼が現れる。
彼は二ヶ月前に行方不明になり、神奈川県の丹沢で遺体となって発見された少年の話をする。彼の背中の皮膚が剥がされていたというのだ。
その少年は飯沼の近所に住んでいて、話をしたことがあり、死ぬ前に彼から鍵が送られて来ていたという。
高槻の事件と関係があるのか?
高槻と深町の二人が少年の家に行ってみると、異捜の刑事がいた。
【extra】花占い
高槻准教授の父、高槻智彰とバレリーナだった清花の二人の出会いと、彰良の事件後の親子の確執のお話。
【extra】向井の家の猫の話
飯沼と殺された少年、相原塔矢との関わりについてのお話。

深町くんが進路を決めました。彼の将来が輝かしいものになるように祈っています。
それにしても高槻先生のお母様は怖い。ゾーとしました。幽霊よりも怖いかも。
飯沼はそれほど悪い人ではないのね。殺された塔矢君はかわいそう。
高槻先生、無茶はいけませんよ。
次回に何が起るのか、楽しみなシリーズです。

三冊とも、お勧めです。


<この頃のわんこ>


ママの布団の上で眠っている兄。まだ右足を上げて歩きます。
意外と素早い動きをします。
お散歩では歩かせず、スリングの中に入れて行きました。
今週、獣医に行きます。なんとかなってくれるといいのですが。


元気いっぱいの弟ヨーキー。
荒々しい動きをするので、兄の足のために、これから別々のスペースで過ごさせようと思います。

堂場瞬一 『野心 ボーダーズ3』2024/05/09

ボーダーズ・シリーズの三作目。
今回の主人公は朝比奈由宇警部補です。
五人の階級がわかりました。
キャップの結城新次郎が警視、サブキャップの綿谷亮介が警部、八神佑と朝比奈が警部補、最上功太が巡査部長です。
ちなみに警察官の階級は九種類あり、上から、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査だそうです。


朝比奈由宇は警部補の昇任試験に合格したので研修を受けており、久しぶりにSCU(特殊事件対策班)に戻った。
由宇は結城から昇進のご褒美をもらい、ついでに異動の話が出ていることを聞く。
警察には本部勤務のものが巡査部長から警部補に昇任すると、一度所轄に出るというルールがあるのだ。

その日、八神の同期で捜査二課の宮原がある情報を持ち込んでくる。
五年前の特殊詐欺事件の首謀者とみられていた秋山克己という男が、かつての詐欺グループを再起動しようとしているようだが、二課は捜査しないというのだ。

SCUは秋山を張り込みすることにする。
由宇と八神が張り込み中に秋山は動き出す。
尾行していくと、彼は有楽町駅で降り、銀座シャインに入っていった。
由宇たちは彼を見失ってしまう。
彼を探している時に爆発が起り、由宇は現場に駆けつけるが、二度目の爆発が起り、爆風で飛ばされ気を失う。
不運にも爆発時に宝石店で強盗事件が起り、由宇はその時の行動に判断ミスがなかったかどうか、監察官の事情聴取を受ける。
女性初の部長を目指している由宇にとって、これは汚点になるのか…。

翌朝、野川に浮かんでいる秋山の遺体が発見される。
秋山の死は宮原の件と関係があると判断したSCUは捜査を続けていく。

キャップ結城のご褒美が早々に出てしまい、ちょっと残念。
本の最後の楽しみだったのよぉww。

今回のヒロイン由宇は社会に出た女性が否が応でもぶつかざるおえないことで悶々とします。ガチガチの男社会の警察ですからねぇ。
ガラスの天井をぶち壊すほどのヴァイタリティがもっと欲しいですね。
そういえば、警視庁総合支援課の柿谷晶が由宇と友だちだったなんて、意外です。
好きか嫌いかと言えば、嫌いな方に入るキャラの柿谷ですが、今回はそれほど嫌ではなかったですわ。
まあ、二人とも三十代前半ですから、まだまだひよっこですねぇ。
これからも色々と大変なことがありますわよ。

そうそう、イケオジになり、捜査一課に復帰した大友鉄も爆破事件の担当として登場し、由宇にいいアドバイスをしています。
「誰にでもミスはある。問題は、その後どうやってリカバーするかだ」
「部下ができた時、絶対ミスするな、なんて言わない方がいいよ」
ひ弱になった今時の若い刑事はすぐに辞めるそうです。どこも同じなのね、笑。
岩倉剛ことガンさんもちょっとだけ登場しています。

美味しそうな食べ物と別のシリーズの主人公たちが登場するのが、このシリーズのいいところですww。
次は武道の達人、人間凶器・綿谷が主人公かな。楽しみです。

このシリーズの順番を載せておきます。

③『野心 ボーダーズ3』

堂場瞬一 『夢の終幕 ボーダーズ2』2024/05/06

ボーダーズ・シリーズの二作目。


前回は警視庁SCU(特殊事件対策班)の八神佑が主人公でしたが、今回は一番の若手、最上功太が主人公です。
SCUは「どこが担当するかはっきりしないような事件を扱う警視総監直轄の特殊な部署」です。
なんと使える車が二台とバイク一台。
指揮車のトヨタ・ランドクルーザー(510万~)と移動用のルノー・メガーヌRS(599万~)、そしてバイク、KTMアドベンチャーR(157.5万~)。
車のことを知らないので何とも言えませんが、普通よりも少し高いお値段でしょうか?

最上が中央道でKTMを走らせてから一服していると、八神佑から電話が来る。
『フリーク・アウト・シアター(FOT)』という人気のエモ・ポップ・バンドのメンバー四人と運転手、マネージャーの六人が、長野でライブがあり、東京に戻る予定だったのが、帰って来ていないという。
バンドメンバーの車は八王子インターで降りてから、行方不明になっていた。
最上は新宿にある彼らの事務所の『アフターマス』で八神たちと合流することになる。

実は最上は工業高校の時にバンドでギターを弾いていたが、実習中に工作機械に巻き込まれて左手の薬指を骨折してしまい、プロになってステージに立つという夢を諦めていた。
そんなことから彼が主導を取ることになる。

FOTに関する情報を収集していくが、明確な手がかりは見つからない。
そんな時に、青梅市の梅郷の林道でバンドのマネージャーが遺体で発見される。
殺人事件の方は捜査一課が捜査し、SCUはバンドメンバーの捜索を引き続き行うことになる。
そこに運転手が現れ、保護される。
バンドメンバーと一緒に小屋に監禁されていたという。

行方不明なっていたバンドメンバーが見つかり、デビュー前にバンドを辞めさせられていた村上という男が捜査線上にあがる。
しかし、バイクで大阪へ行ったという村上はが山梨県の林道で遺体となって発見される。
SCUはここで引き上げることになる。

次にSCUは結城が個人的に相談を受けたという代議士の関係者の脅迫事件を担当することになるが…。

なんかSCUって中途半端な感じがしますね。
そういう役割だということはわかっていても、八神ではないですが、物足りなく感じます。
なんにも関係なさそうな事件が最後に繋がっていって、エンディングを迎えるというのが、このシリーズのパターンのようですね。
そうそう、合間に美味しそうなご飯が出てきて、どこのお店か探したくなりました。新橋にあるサンドイッチのお店はどこかしら。
カレーは刑事に取って、飲み物みたいなものねww。
前に読んだ堂場さんの本では食べ物がそんなに気にならなかったのだけど、「検証捜査」シリーズやこのシリーズでは色々とお店が出てきて、捜査同様(以上かも・笑)に気になります。

最後にまた結城さんが…。彼は本当に謎です。
最上君がギターを弾く日を楽しみにしています。
その場面を是非このシリーズ中に書いて下さいね。

堂場瞬一 『ボーダーズ』2024/04/28

ママ、頑張りました。おやつを持って、お散歩です。
昨日のツツジのところで、リベンジです。


笑顔、いただきました。(何故かお座りしないけど…)


いい笑顔です(親バカ)。


おやつを見て、ペロリと舌を出す兄。
君はおやつがないと、前を向いてくれないのね。
お水を飲ませるためにお休みすると、兄はおやつをくれないかとママの顔を見ます。
おやつ>ママ>パパ>弟。こういう順番なのね。


だんだんと暑くなり、舌が出てきました。
まだ4月なのに、これからどうなるのでしょう。



東都相互銀行新橋支店で立て籠もり事件が発生した。
犯人は行員と客の五人を人質にして立て籠もっているという。
SCUに新橋署から連絡が来たので、SCUのメンバー2人が様子を見に行く。
すぐに犯人は確保されたが、人質だった男性一人が心肺停止状態になり、亡くなる。
犯人は六十歳の親日自動車の社員で、開発二部でエンジン関係の開発をしていたという。
次の日の捜査会議で被害者の藤岡泰が四十年前の代々木事件で機動隊員一人を殺し、指名手配されおり、公安に追われていたことがわかる。

SCUとは英語の「Special Case Unit」の略で、「特殊事件対策班」のこと。
犯罪が多様化する中、あらゆる事件の現場に介入できることを許された警視総監直轄の組織でチームは5人。
キャップは結城新次郎。公安一課出身で謎の人物。
サブキャップの綿谷亮介は父親が元岩手県警釜石警察署長。組織犯罪対策部から異動してきた。警視庁内で幅広い人脈を持つ。柔道四段、剣道二段、空手二段、将棋がアマ三段で合わせて十一段。人間凶器と呼ばれていて、逮捕術も拳銃操作も上級。趣味は総合格闘技観戦で、好きな映画は「リーサル・ウェポン」。
八神佑は一ヶ月前に捜査一課から異動してきた。38歳で結婚しており、妻は元警官で交通総務課に勤めていた。双子の娘がいる。童顔で高所恐怖症。とにかく「目」がよく、他の人が見逃しがちなものによく気づく。一年前のことでSCUに左遷されたと思っている。
朝比奈由宇は三十歳。一年ほど前に生活経済課からSCUに異動してきた、唯一の女性刑事。実家が名古屋のイタリア料理店で、東京にいる伯父が警察官。
プレゼン能力が高く、リーダーシップに優れている。初の女性部長を目指している。
一番若手の最上功太は工業高校出身で、交通捜査課から異動してきた。180㎝、 85㎏と体がでかい。SCUの捜査車両の運転と整備担当で、自動二輪の免許や大型特殊免許も取っている。ネット系にも強い。

結城の指示で、八神と朝比奈は藤岡を調べ、綿谷と最上は特捜に入り込んで情報を探ることになる。

新シリーズみたいなので、興味半分、期待半分で読みました。
SCUのメンバーたちは個性豊かでいいのですが、お話の展開が今一でした。
SCUはどんな事件にも介入できるというのですが、中途半場な感じです。
銀行の立て籠り事件が解決しないままに手を引き、次は放火事件、そして脅迫事件に介入と、八神じゃなくても不満が残ります。
まあ事件が繋がっていったからよかったのですが。
最初はメンバー紹介ということで、笑。

最後に結城さんのお茶目な場面があり、この人どんな人という興味が芽生えました。
三巻まで出ているようなので、続けて読んでいきますわ。
今回は八神が主役でしたが、次は誰でしょうね。

読んだ文庫本2024/04/19



次々と花が咲いてきました。藤の花が美しいです。


サマーカットにしたので、日焼けがしないか心配です。
特に弟は背中の皮膚が透けて見えるです。
夏用のタンクトップを着せて散歩しようかしら。


「ママ、変な洋服着せないで下さいね」というように、ママの顔を見る兄です。

文庫本が溜まってきたので、三冊一篇に紹介します。


小路幸也 『花咲小路二丁目の寫眞館』
桂樹里は三代続いている写真館、<久坂寫眞館>で働くことになる。
社長は身長180センチを超える、細マッチョな久坂重。あとは彼の母親の聖子がいるだけだ。
一週間前に父親が亡くなったので、急遽重が北海道から戻り、写真館を継ぐことになったらしいが、重は自分では人間の写真を撮らない。幽霊のようなものが写ってしまうからだという。
試しに樹里の写真を撮ってみると、歩いて移動している男性が写っていた。
今度は動画を撮ってみようとすると、急に停電になる。

気づくと二人は三十年前にタイムトラベルをしていた。
困った二人はドネィタス・ウィリアム・スティブンソンこと矢車聖人、すなわちセイさんに助けを求めることにする。
写真館を出ようとすると、重の父親宛への手紙が置いてあった。
手紙の書き手は菅野好美で、樹里の母親だった。
それは別れの手紙で、二人は何があったのか確かめるために好美のところに行こうとすると、運よく駅の発売機のところに好美がいた。
早速彼女に理由を聞くと、騙されて、<久坂寫眞館>の土地と権利書を取られたという。
これはセイさんに頼むしかない。
二人は手紙を書いて、セイさんを公園に呼び出すことにする。

花咲小路シリーズの七作目です。
花咲小路は何丁目まであるのか知りませんが、これまでの題名から四丁目まであるのはわかりました。
今回とうとうタイムトラベルしちゃいましたwww。

内山純 『魔女たちのアフタヌーンティー』
前屋敷真希は都内大手の不動産会社の開発部に勤めているが、先月、とんでもない失態をやらかしてしまった。このままでいると左遷されるので、白金七丁目の”プラチナの魔女”が住むという屋敷の土地を手に入れ、汚名返上しようと目論む。
運が味方したのか、ひょんなことから出会った少女みのりに魔女の屋敷のお茶会に誘われる。
美味しいお茶と手作りのお菓子に癒やされる真希。
それからお茶会に来る様々な年代の人と交わるうちに、いつしか真希はお茶会が楽しみになっていく。

アフタヌーンティーという題名につられて読んでしまいました。
忙しい日常にホッと一息できるお茶の時間を持つといいかもしれませんね。
スーさんのような女主人が催すお茶会ならもっといいです。招かれてみたいです。

午鳥志季 『君は医者になれない2 膠原病内科医・漆腹光莉と鳥かごの少女』
戸島光一郎は波場都大学医学部三年生になったが、血を見ると、相変わらず気持ちが悪くなる。
指導医は変わらず、コーヒーとジャンクフード好きで、身の周りの整理のできない社会不適合な膠原病内科医の漆原光莉だ。

「第一章 去りゆく人・高木セツの追憶」
誤嚥性肺炎で救急外来に運ばれてきた八十歳、全身性強皮症の高木セツは戸島の採血の練習台となってくれ、「逃げちゃダメよ」と励ましてくれた。
彼女のために戸島、走ります。

「第二章 新人看護師・幹元華の秘密」
漆原先生が珍しく飲み会に参加するが、ジャージを着てくる。その上、鞄から取り出したのが、カップラーメンと魔法瓶の水筒。やっぱり変人だぁ、笑。
幹元が何気なく、心因性で月に一回微熱が出て、体がだるくて、動きたくなくて、急に仕事を休み、前の病院を首になったことを話すと、漆腹がポツリと「心因性かな?」と言葉を吐く。漆原は何に気づいたのか。

「第三章 膠原病患者の母・山波泉の悔い」
十七歳の『抗リン脂質抗体症候群』の女の子、山波瑞羽が他の大学病院からの紹介でやって来る。
母親の泉は単刀直入に漆原に「治せるか」と聞く。もちろん漆原は「治せない」と答える。どうも母親は娘の病気を受け入れられていないようだ。
ある日、戸島は困っていた瑞羽を助け、それから話すようになり、本まで借りるようになる。
しばらく瑞羽は漆原のところに来ていたが、泉が埼玉の病院への紹介状を書いてくれと言い出す。
仕方ないという漆原だったが、瑞羽の採血を確認すると…。

「第四章 車椅子の少女・山波瑞羽の願い」
山波瑞羽は「劇症型・抗リン脂質抗体症候群」の可能性があり緊急入院する。
しかし、瑞羽は死にたいといい、治療を拒否する。
漆原は治療を望まないなら、その意思を尊重すると言う。
「……逃げるな」
戸島、瑞羽を救うために立ち上がる。

戸島君がだんだんとたくましく医師として成長していく姿が頼もしいです。
血が怖くたって、内科医になれば問題ないしね。
彼のような医師の方が患者の立場に立って考えてくれそうですよね。
膠原病ってあまり一般的ではないので、よくわかりませんが、この本を読むと少しわかってきました。
瑞羽ちゃんみたいになると、親も子も大変だなと思いますが、戸島君同様、どこまで気持ちが分かるか、自信がありませんわ。

イチオシは「君は医者になれない」シリーズです。
漆原先生の変人さが気に入りましたwww。

中山七里 『ヒポクラテスの悲嘆』2024/04/15

「ヒポクラテスの誓い」シリーズの五作目。


アメリカの引き籠もりは一千万人、日本は百五十万人。

「一 7040」
ミイラ化した遺体が見つかる。遺体は四十歳の女性で、大学受験に失敗した後、二十年以上も引き籠もっており、両親は引きこもり相談支援センターや民間のNPO団体に相談したという。
亡くなる前、三週間近く部屋に閉じ籠もって一歩も外に出ておらず、様子を見に行った母親が娘の死体を見つけた。
事件性はないと思われたが…。

「二 8050」
新卒で入った会社を辞めてから引き籠もっていた五十歳の男が屋根裏部屋で餓死しているのを八十歳の父親が発見する。
彼は妻が入院治療をするので、三週間泊まりがけで付き添いをしており、食料品は一ヶ月程度買いだめして置いてきたという。
検視官は自分に絶望して餓死を決意したというが、捜査員たちは疑念を抱く。

「三 8070」
浴室の浴槽で男が死亡していた。十歳上の八十歳になる彼の妻はで認知症。
二人はおしどり夫婦で有名だったが、男はホステスに入れあげていたという。
検視官は事故死と見做すが、埼玉県警捜査一課の刑事・古手川は死体が語りたがっていると思う。

「四 9060」
九十二歳になる民生委員をしていた知人の様子がおかしいとの通報が入る。
彼は息子と二人暮らしで、息子は資材会社を辞めてから引き籠もっているという。
自宅を訪れると体調不良で出られないというのに、近隣住人の話では毎日散歩に出かけているという。
古手川が通報者と一緒に自宅に行ってみると、息子がインターフォンに答えて、父は外出しているという。だが、近所の人はついさっき帰宅したばかりだと教えてくれる。
翌日、古手川が朝の散歩途中に話しかけてみると…。

「五 6030」
JR浦和駅東口で通り魔事件が起る。犯人は逃走し、行方は不明。
しかし翌日の朝方、空き店舗で容疑者の男が死体となって発見される。
容疑者は経産省のキャリア官僚の息子で、父親が出頭してくる。
息子はここ十年は仕事もせずに引き籠もっており、先の通り魔事件の犯人に心酔していたようだ。
父親が息子を殺したのか?

埼玉県警捜査一課の刑事・古手川が扱う不審死の遺体を浦和医大法医学教室の光崎教授たちが解剖し、自殺か事故死か他殺かを突きとめていくというシリーズです。
今回はロスジェネ世代(1970年から1984年ごろに生まれた40代から50代前半)の引き籠もりと老老介護がテーマになっています。
古手川刑事の上司、渡瀬警部と浦和医大の助教・栂野真琴の上司の光崎教授の出番がそれほどなく、今回は若手の古手川と栂野の二人がメインで動いています。
テーマが重くて、他人の不幸だとは思えませんでした。
いつ自分に降りかかってくるかわかりませんからね。
最後に意外なことがありますので、お楽しみに。気づいた人、すごいわ!

章のタイトルが何か最初は分からなかったのですが、「8050問題」が出てきてわかりました。
ちなみに「8050問題」とは、若者の引き籠もりが長期化することで、80代の親が50代の子どもの生活を支えるために、経済的にも精神的にも強い負担を請け負うという社会問題のことです。
章のタイトルは登場人物たちの年代を表しているんですね。

面白いシリーズですので、是非読んでみてください。

⑤ヒポクラテスの悲嘆


<今週のおやつ>




素敵な包装のカフェタナカのクッキー。
缶は薄いピンクです。
四種類のうち、わたしはナッツの入ったクッキーが好きです。

麻見和史 『追憶の彼女 警視庁文書捜査官』2024/04/12

警視庁文書捜査官シリーズの10作目。


警視庁文書解読班の矢代朋彦は、休日を使って、幼馴染みの水原弘子が七年半前に田端一丁目の階段から落ちて亡くなったという事件を個人的に調べている。
M302という古い機種のフィルムカメラを持っていた男が事件に関係しているという情報があり、矢代はM302を手に入れ、そのカメラを持って事件現場付近を歩き、聞き込みをしている。

矢代がいつものようにカメラを持って歩きながら、カメラ好きの人たちが集まる掲示板を見てみると、田端第二公園のフリーマーケットでM302が出品されているという書き込みがある。
早速行ってみると、まさしくM302。出品していた少女の祖母のものだが、残念ながら、彼女の祖母は七年半前の事件の後すぐに亡くなっていた。
少女の家はあの階段の脇だという。
ボディを確認すると、フィルムが入っていた。
現像してみると、写真が六枚写っていた。

南千住で殺人事件が起き、文書解読班に出動要請が出る。
被害者はフリーランスのデザイナー、皆川延人、三十九歳。
遺体の口は接着剤かなにかで塞がれ、目はスキンステープラーの針で留められていた。
そして見つかったチラシには、血で二文字が書かれていた。
矢代と夏目は鳴海主任の分析をサポートするために、情報収集をすることにする。

翌日、本庁捜査一課から江東区住吉で南千住事件と手口が似ている殺人事件が発生したという連絡が入る。
被害者はコンサルティング会社の社長、桐原哲生。
遺体の喉はハサミで、体は何度もカッターで傷つけられたようだ。
矢代は桐原の顔が田端で買ったカメラのフィルムに写っていた顔であることに気づく。

二件の殺人事件と七年半前の弘子の事件に関わりがあるのか…。

このシリーズも10冊目。予想に反して長く続きますね。
今回は鳴海主任ではなく、倉庫番の矢代が主人公です。
生きていたら、もしかしたら結婚していたかもしれないと思われる彼女のために、矢代、頑張ります。

今回は文書解読がそれほど役に立っているようには思えません。(いつもだったっけ?)
血文字の件では、詳しくは書きませんが、わたしの読みの方が正しかったようです。
事件を解決するには、聞きこみが大事なんだと思いますよ、笑。

主人公が矢代の方が落ち着いた雰囲気で、わたしは気に入りました。
鳴海は…。
次は是非とも夏目に活躍してもらいたいです。

坂木司 『うまいダッツ』2024/04/10



明治天皇荻窪御小休所。雨で桜が散っています。


井の頭恩賜公園の桜も盛りを過ぎました。


桜が咲く前には人が沢山来ていたのに、終わるとすぐにいつもの姿に戻ります。
しゃれた大型犬がお散歩していました。



とある高校では、生徒全員が必ず何かの部に所属しないといけない。
「何もしたくない人」用の抽選のないクラブといえば、『喫茶部』だ。
高校一年のライトオカルト野郎のアラタと鉄オタのコウ、アニメと声優オタクのタキタ、家が空手道場というでかいセラの四人は、『喫茶部』で出会い、ジャンクなスナック菓子が好きだという好みが合ったため、つるむようになった。まぁ『喫茶部』の中の『おやつ部』って感じ。
活動はというと、ぶっちゃけて言うと、駄菓子を食べておしゃべりしているだけ。
そんな彼らが出会った謎とは…。

うまいダッツ
「うまい棒一本で、世界の秘密がわかるらしい」という噂がクラスで流れた。
興味を持った四人はショッピングモールへ未来の予言をするというおっさん探しに行く。
おっさんとは一体誰なのか?

チロル・ア・リトル
コウはおばあちゃんに呼ばれた。家のどこかに落としたブローチを探して欲しいらしい。
セラが唐突に一緒に探したいと言い出し、四人でおばあちゃんちに行くことになる。
コウを呼んだおばあちゃんの隠された意図は?

バカみたいにウケない
三年のテラウエ先輩からおやつ部にインスタライブのお菓子クイズに参加するので、勝つために協力してくれと頼まれる。
勝敗は?そしてテラウエ先輩の真の目的は?

それは王朝の
タキタに今週の日曜日にモールで開かれる声優のミニライブに付き合ってくれと頼まれる。SNSで出会った同じ声優推しのサノイという子と会いたくないのだが、向こうが近付いて来ては嫌みを言うそうな。
彼女はタキタの何が気に入らないのか?

百年の愛
四人は二年生になり、三人の新一年生が『喫茶部』に入ってくる。
先輩になったはいいが、四人は憂鬱。というのも、一年が真面目すぎで、お菓子を食べている四人を冷たい目で見ているようなのだ。
おやつ部が研究しに今週末モールに行くと聞くと、一年も行っていいかと言い出す。
モールを七人で歩いていると、「無料でおいしい和菓子を食べたくない?」と話しかけられる。『茶道教室の無料体験』に人が来ないので、要するにサクラになって欲しいというのだ。
果たして彼らはちゃんとお茶を飲めるのか?

可愛い(おばさんからしたら高校生は可愛いのよww)高校生たちがいいです。
今の高校生ってこんな感じでしゃべっているのでしょうかね。
わたしは高校生よりもおばあちゃんに近い年齢ですから、コウのおばあちゃんのことは身に染みました。
出てくるヘルパーみたいに老人を子ども扱いしたり、『困ったおばあちゃん』扱いする人は多そうです。そうされるのは嫌ですわ。
自分も年を取るんですよ。その時に同じようにされたら、どう思うんでしょうね。

ライトな感じの高校生ミステリですので、どなたでも楽しめると思います。
出てくるおやつはみんなが知っているものばかり。
適当に書き出しましたが、さて、あなたはいくつ食べたことがありますか?

「キャベツ太郎、うまい棒、菊水堂のポテチ、ビックカツ、いかフライ、餅太郎、おやつカルパス、チロルチョコ、おにぎりせんべい、アポロ、ロアンヌ、ヴェルタースオリジナル、ポテロング、なげわ、チョコボール、ボールチョコ、カントリーマアム芋ようかん、ハッピーターン、ばかうけ、シルベーヌ、マリービスケット」

わたしは21個中11個。少ないかな。


<今日のおやつ>


駄菓子にすればよかったのですが、美味しそうだったので、たねやの柏餅三種類とよもぎ餅を買いました。

堂場瞬一 『共謀捜査』2024/04/08

「検証捜査」シリーズの六作目で、最終巻です。


警察庁のキャリア官僚、永井はフランス東部の町、リヨンにある「ICPO(国際刑事警察機構)」本部に出向している。
国境を越えて暗躍する犯罪組織と対峙するための新しい組織、「ICIB(国際犯罪組織捜査局)」の発足準備に従事しているのだ。
ある日、永井はアパルトマンに帰ろうと自転車に乗っていた時に、後ろから来た車にぶつかられ、意識を失う。

保井凛はICPOの同僚であるアンドレ・クレマンからの電話で、永井が何者かに拉致されたことを知る。
すぐにメールで身代金の要求がある。
ICIBの設立を妨害するための犯行か?
永井との因縁のあるロシアン・マフィア、ブランの宣戦布告なのか?
凛はリヨン署と協力して永井の行方を追うことになる。

一方、東京の警視庁捜査一課の神谷警部補は本庁の浦部官房長から呼び出される。
かつて神奈川県警の不祥事を調べた時、捜査線上に上がったが、逮捕も書類送検もされず、懲戒処分を受け、県警を辞めた松﨑泰之が、警視庁の管内で殺された。
この件に例の神奈川県警の事件が影響を及ぼしている疑いがあるので、その背景を探ってほしいというのだ。
浦部に呼ばれたのは、神谷の他にあの時のメンバーの神奈川県警捜査一課の刑事、桜内省吾と福岡県警の皆川慶一郎。(ちなみに大阪府警の島村保は定年退職をしている)
特命捜査チームが再度集結し、捜査を開始する。

やがてフランスと日本の二つの事件が繋がり、意外な真相が暴かれるが…。

フランスからスイスへとスケールが大きくなるのかと期待したのですが、それほどではなくて、ちょっと残念でした。
そうそう、フランスの警察のことが書いてありました。
日本のような「中央官庁と地方組織」に分れていなくて、「地方の警察組織は全て、中央官庁の当該部署の直属だから、中央の情報が地方でも即座に共有される」そうです。

堂場さん、書きすぎです。
「神奈川県警は、内輪の人間を庇うために平気で冤罪事件を起こすような連中だ」とか、「職員の質が悪い」のは「一説にはうち(警視庁)の試験を落ちた連中が向こうへ行くーー警視庁の滑り止めだ、なんて言われているけど、実際にミスや不祥事が多いのは間違いない」なんて書いてあるんですよ。
神奈川県警から訴えられませんかねww。

『時限捜査』で島村さんがいい上司だと書きましたけど、今回も退職しているにも関わらず活躍してくれました。
そうだろうなと思ったのが、『複合捜査』の主役、NESUの班長・若林が一ヶ月前に急死したということです。
彼の性格と生活態度ではそうなるでしょうね。ご冥福をお祈りします。

あとがきに書いてありましたが、堂場さんは「○○捜査」を「シリーズ」とは認めていないそうです。
全てが『検証捜査』のスピンオフ作品とのことですが、作者なりのこだわりなんでしょうねぇ。
海外にまで進出したわりにスケールが小さいと書きましたが、コロナ禍になってしまい、取材出張ができなかったそうです。
仕方がないのかもしれませんが、最後が…という方が多いでしょう。
フランスとスイスに行けてたら、もっとすごいものが読めたかもww。

最後まで読んだので、読んだらいい順番を載せておきます。

検証捜査 (2013年集英社文庫)
 複合捜査 (2014年集英社文庫)
 共犯捜査 (2016年集英社文庫)
 時限捜査 (2017年集英社文庫)
凍結捜査 (2019年集英社文庫)
⑥共謀捜査 (2020年集英社文庫)

『複合捜査』と『共犯捜査』、『時限捜査』の3つはスピンオフですから、順番はどうでもいいです。
『凍結捜査』と『共謀捜査』は続けて最後に読むといいでしょう。
わたしみたいに『凍結捜査』を先に読むのはお勧めしませんわ、笑。

堂場瞬一 『時限捜査』2024/04/05

「検証捜査」シリーズの四作目。


大阪府警梅田署署長の島村保は明日で二年間に渡る署長としての勤務を終える。
次の異動では警察学校長に就任し、それが警察のキャリアの終点となる予定である。
そんな日に、同時多発的に事件が起る。
最初に大阪のシンボル、太陽の塔が燃え、次に大阪市中央公会堂で火災が発生し、続いてUSJの入り口にある地球儀が燃やされ、最後はあべのハルカス。
島村は気になり、自分の管内を一回りしてこようと思い、パトカーに乗り込んだところに銃声が聞える。
電話をかけてきた警備課長の増島によると、十二時ちょうどにJR大阪駅構内で発砲事件が発生したというのだ。

JR大阪駅の時空の広場にあるカフェにライフル銃を持った者たちが男女各一名を人質に立て籠もる。具体的な要求はない。
目的は何なのか。愉快犯なのか、それとも…?

しばらくしてから犯人と名乗る人間から電話がかかって来る。
駅の構内に爆弾をしかけた。
要求は現金十億円と逃走用のヘリとパイロット。

そんな頃、警視庁捜査一課の神谷悟郎は殺しで呼び出される。
被害者は伏見史郎。元自衛官で、五年前に大阪府警に逮捕されていた。

やがて東京と大阪の事件の繋がりが見えてくる。
島村は後一日だけの署長在任中に事件を解決できるのか…。

『検証捜査』での島村のことはあまり覚えていません(恥)。
後から来て、犯人の取り調べをした人ですよね。
彼がこんなに人間味溢れる人だとは思いませんでした。
彼は上司の鏡です。
息子さんとの関係も微笑ましいです。

日本の立てこもり事件は時間がかかって大変ですよね。
人命第一だから仕方ないのでしょうが、外国のように短時間でスパッといかないものでしょうか。
本では人質のことは初めから分かるし、読んでいてもどかしいところがありましたが、臨場感あふれる最後で、楽しませていただきました。

テレビドラマのことは全く知らなかったのですが、2017年にテレビ東京で『検証捜査』をドラマにしていたのですね。
神谷悟郎役が仲村トオルだなんて、カッコよすぎじゃないですか。
神谷より年齢的にはやや上のようですけど。(仲村さんは今年58歳ですって。見えないわぁ)
「アナザーフェイス」の大友鉄役の方が合っていそう、なんて思ったら、なんと2012年にテレビ朝日系で大友鉄をやっていました。
わたしは時代に遅れてますねぇwww。

最初の方で『凍結捜査』を紹介してしまったので、「検証捜査」シリーズも後一冊。(シリーズとは言わないみたいだけど、便宜上シリーズにしときます)
舞台は海外のようです。