西條奈加 『姥玉みっつ』2024/04/26

昨年、別のお宅の庭に咲いていたナニワイバラが、他の家の庭にも咲いているのを見つけました。


育てやすい花なのでしょうか。


モッコウバラの黄色とコバノランタナの紫がきれいです。
一軒家なら庭に好きなものを植えられるのですが、マンションだと色々と規約があって、残念ながら勝手に庭に植物を植えたりできません。
こうして他のお宅の花を見て、季節の移り変わりを楽しんでいます。



お麓は静かな余生を送ろうと思っていた。
そこに運よく打ってつけの仕事が舞い込む。
名主宅の書役だ。
給金は下働きの女中と変わらぬ程度だが、店賃なしで『おはぎ長屋』に住める。
これで老後の安泰は約束された。心ゆくまで閑かさを味わえるなどと思っていたら、一年後にとんでもないことになる。
というのも、八歳の時に手習い所で出会った幼馴染みのお菅とお修が毎日欠かさず訪ねてきてはどうでもいい話をしゃべり散すのだ。
そのため仕事が滞る。
そうこうするうちに、お管がお麓の長屋に転がり込み、半年後にはお修が同じ長屋に住み始めた。
嫌だといったのに、毎日一緒に朝食を食べることになる。

お管は二年前に亭主を亡くし、息子たちに世話になっていたが、嫁たちに厄介者あつかいされ、お麓のところに転がり込んだのだ。
お修は若い頃は水茶屋で働き、とうが立ってからは料理屋の仲居を務め、三十路半ばに湯島の金物問屋、戸田家の後妻に収まったが、亭主が亡くなり、なさぬ仲の娘とその亭主に戸田家から追い出され、隠居家に移されそうになっていたという。

そんなある日、お管が裏の萩ノ原で人を見つけたと言って飛び込んで来た。
母と娘の親子で、亭主から命からがら逃げて来たという。
二日後の朝に、母親は亡くなる。
娘は声が出せないので、彼らの素性はわからない。
お麓や名主と大家は反対したが、お管はきく耳をもたず、娘の面倒をみるといってきかない。
感情だけで突っ走り、後先なぞ考えないのがお管だ。
結局、子供は「迷子」あつかいとなり、おはぎ長屋で預かることになる。
とりあえず名前を「お萩」とした。

お萩を預かることになった三人の婆たちは師匠となり、お修は着物の選び方と買物案内、お管は料理や掃除の仕方、お麓は読み書きを教えることにする。
お麓はお萩と接するうちに、彼女は良家の娘で、自分たちを謀っているのではないかと思うようになる。

しばらくしてお萩を里子にもらいたいという話が出る。
もちろんお管は大反対。
お麓は里子の話に胡散臭さを感じ、裏がないか調べてみる…。

三人三様の婆さまたちですね。
お麓は嫌とはいいつつも、結局はすべてを受け入れてしまう、強くでられないお人良し。
お管は世話好きで情に厚いのはいいのですが、何でも自分の意のままにしようとする人で、一緒にいると疲れそう。
お修は金にうるさいところがあるけど吝嗇家ではなく、気兼ねなく人にふるまう、身なり以外にはこだわりのない人で、いい男に弱く、ちょっと毒舌家。
この三人に名主の杢兵衛と大家の多恵蔵、建具師の糸吉、貸本屋の豆勘、そして歌会の師匠で境川家の家中の椿原一哉という脇役たちが登場し、みんな一体となり、お萩を救うために立ち上がります。
気持ちの悪くなるところが多少ありますが、概して痛快な人情ものです。

「感情は身の内に留めておくと、たちまち腐り出す。恨みつらみや怒りとなってわだかまる」そうですので、まめに発散しましょうね、笑。

三人の婆さまたちが旅に出るという続きがあるといいですね。

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