読んだ時代小説二冊 ― 2024/05/02

テッセン(クレマチス)が満開です。

つるバラも綺麗な姿を見せてくれています。
あっという間に五月です。
20度以上の日が続き、春を通り越して夏が来そうです。

風野真知雄 『魔食味見方同心一 豪快クジラの活きづくり』
「第一話 化かされそば」
殺された兄の仇討ちを成し遂げた月浦魚之進は兄嫁に心を寄せていたが、八州廻り同心・犬飼小源太の娘のおのぶと出会ってから、いつの間にかおのぶのことが好きになっていることに気づき、おのぶに求愛する。
どちらの親も大喜びで、二人は求愛の三日後に祝言を挙げる。はや、笑。
ある日、岡っ引きの麻次が化かされそばの話を聞き込んでくる。
深川の海辺橋のたもとに出ていた屋台の店で、うどんを頼んだのが、食っているうちに、いつの間にかそばになり、おやじだったはずの店の者が、きれいな女になり、そして、巾着に入っていた銭がぜんぶなくなっていたそうだ。
魚之進は麻次とともに深川に向かう。
「第二話 化粧寿司」
おのぶが鎌倉河岸にできた<化粧寿司>を食べてみたいと言い出す。
見た目もいいし、味もいいという。
並ぶのはおのぶに任せ、魚之進は店の裏口をのぞくと、外に立っている男と店の中にいる女が話しているのが聞えた。女は化粧師はやめたというのに、男は寿司と化粧師の両方をやればいいとしつこく女に言っている。
気になった魚之進は化粧師について調べてみると、化粧寿司の女はおきわといい、顔を別人のように変えることができることがわかる。
化粧の裏に隠された悪事を暴こうとする魚之進。
「第三話 カラスの黒鍋」
馬喰町の一膳飯屋で昼飯を食っていると、隣の縁台から「カラスを食っているやつらがいるんだよ」という声が聞えてきた。
魚之進が声をかけると、神田川の川原で鍋で煮たやつを食っていたという。
川原まで行ってみると、男が四人集まって鍋を囲んでいる。
彼らは食い詰めて奥州から江戸に来たという。咎めだてするほどではないと思う魚之進だったが、カラスは本当に食べられるのかが気になる。
お奉行が言っていた魔食会になんでも食う人がいるらしいので、紹介してもらい会いに行く。
「第四話 クジラのいきづくり」
魚之進はおのぶと秋祭りがおこなわれている小網町の神社にやって来た。
タコのぶつ切り焼きを食べて金を払い、「豪快だな」と声をかけると、あんちゃんにこの世で最高に豪快な食いものはクジラの活きづくりだと言われる。
クジラ漁師が銛を打ったところに、客たちがクジラの背中によじ登り、皮を切り、刺身を取って味わうというのだ。
奉行に話を聞くと、魔食会の面々も、何人か体験しており、死人も出ているという。死人は皆、溺死だったらしい。
仕切っているのが、潜りの八蔵というやくざの親分と聞き、気になった魚之進は調べてみることにする。
いつも面白い題名に感心している風野さんのシリーズものです。
こんな食べ物、本当にあるのかと思えるものばかりです。
風野さんの創作なのか、本当に江戸時代にあったのか、気になります。

筑前助広 『谷中の用心棒 萩尾大楽 外道宿決斗始末』
御禁制品である阿芙蓉(アヘン)の密輸を行っていた玄海党を潰した萩尾大楽は、故郷の斯摩藩姪浜に用心棒道場を開いた。
予想だにしなかったことだが、玄海党という重石がなくなったことで、福岡・博多の秩序が失われ、第二の玄海党にならんと覇を唱える集団がいくつも現れ、治安が悪化していた。
そんな中、第二の玄海党になり、阿芙蓉を含む抜け荷の道を奪取し、玄海党が瓦解して空白地となった博多を支配しようという野望を持つ男がいた。
その男は自分の野望の前に立ちはだかる大楽を亡き者にするために、薩摩藩主と手を組み、刺客を送りこむ。
大楽たちの命を賭けた戦いが始まる。
大楽は無欲で、玄海党に勝っても権力を持とうとはしませんでした。
それが彼の美学なのでしょうね。
前回は玄海党との戦いでしたが、今回はその後釜を狙う破落戸集団、丑寅会との戦いです。
戦いの場面を楽しみにしていたのですが、とっても短くて、残念。
あっけなく終わってしまいました。
男臭さがプンプン香る、珍しいハードボイルド風時代小説です。
そういう小説がお好きなら、読んでみて下さい。
コメント
_ ろき ― 2024/05/02 19時04分05秒
_ coco ― 2024/05/03 08時16分38秒
花が次々と咲き、眼福の季節です。
息絶え絶えのクジラに登り、肉を削って食べるなんて、これこそ野蛮の極みですね。
クジラの肉って美味しかったっけ?昔は給食に出ましたよね。
息絶え絶えのクジラに登り、肉を削って食べるなんて、これこそ野蛮の極みですね。
クジラの肉って美味しかったっけ?昔は給食に出ましたよね。
_ 筑前助広 ― 2024/05/08 17時15分17秒
著者です。ご感想いただきまして、ありがとうございます!
ネットサーフィンをしていて辿り着き、コメントをするのも憚られましたが、どうしても感謝をお伝えしたくコメントいたしました。
拙作を前作に続き読んでいただき、誠にありがとうございます。
戦いが少なかったですね(;'∀')あっさりもしていました。
すみませんm(__)m
ちょうど、この作品を出す一カ月前にKADOKAWAから刊行した「颯の太刀」、そして夏頃に刊行する作品が、チャンバラの面白さを追求したものになっているので、そっちにエネルギーを吸われたのかもしれません……。
ですが、次回は江戸決戦。徹頭徹尾チャンバラいたします。もし宜しければ、読んでいただけますと幸いです。
最後に、突然の書き込み失礼いたしました。
ネットサーフィンをしていて辿り着き、コメントをするのも憚られましたが、どうしても感謝をお伝えしたくコメントいたしました。
拙作を前作に続き読んでいただき、誠にありがとうございます。
戦いが少なかったですね(;'∀')あっさりもしていました。
すみませんm(__)m
ちょうど、この作品を出す一カ月前にKADOKAWAから刊行した「颯の太刀」、そして夏頃に刊行する作品が、チャンバラの面白さを追求したものになっているので、そっちにエネルギーを吸われたのかもしれません……。
ですが、次回は江戸決戦。徹頭徹尾チャンバラいたします。もし宜しければ、読んでいただけますと幸いです。
最後に、突然の書き込み失礼いたしました。
_ coco ― 2024/05/09 14時42分37秒
筑前さん、コメント、ありがとうございます。
本当に筑前さんですか?家族がなりすましじゃないかと言っていますが…。
まさか著者さんが読んでくださるなんて思いも寄らなかったので、びっくりしました。
失礼なことを書いていましたら、お許し下さい。
『谷中の用心棒』シリーズは一作目よりも二作目がより面白くなっていますので、次作、予想どおり江戸決戦ですか、を楽しみにしています。わたし、平岡推しですので、彼が活躍する姿を期待しています。
早速『颯の太刀』を購入させていただきました。
読み終わりましたら、ブログで紹介させていただきます。
本当に筑前さんですか?家族がなりすましじゃないかと言っていますが…。
まさか著者さんが読んでくださるなんて思いも寄らなかったので、びっくりしました。
失礼なことを書いていましたら、お許し下さい。
『谷中の用心棒』シリーズは一作目よりも二作目がより面白くなっていますので、次作、予想どおり江戸決戦ですか、を楽しみにしています。わたし、平岡推しですので、彼が活躍する姿を期待しています。
早速『颯の太刀』を購入させていただきました。
読み終わりましたら、ブログで紹介させていただきます。
_ 筑前助広 ― 2024/05/09 18時19分51秒
ご返信ありがとうございます。
そうですよね、なりすましと疑いますよね(;^_^A
念の為、X(旧Twitter)に感謝の言葉を書きましたので、URL欄にリンクを入れております。
感想、全然失礼ではないですよ!
ジャンルの特性から、中々感想を読む機会が少ないので、こうした声は本当に嬉しいです。
平岡推しなのですね!大楽の影となって支え、二作目では二代目師範代になりました。僕も大好きな人物で、谷中の用心棒を書こうと決めたとき、大楽とセットでまず生み出しました。
蜷川との決着もありますし、三作目では存分に刀を奮ってもらいますね!
そして、「颯の太刀」もありがとうございます。こちらは作品の世界観がガラッとかわりますが、同じ田沼時代のお話です。楽しんでいただけますと幸いですm(__)m
僕は時代小説家である前に、時代小説ファンなので、ブログの他の記事も楽しみに読ませていただきます(^^)/
そうですよね、なりすましと疑いますよね(;^_^A
念の為、X(旧Twitter)に感謝の言葉を書きましたので、URL欄にリンクを入れております。
感想、全然失礼ではないですよ!
ジャンルの特性から、中々感想を読む機会が少ないので、こうした声は本当に嬉しいです。
平岡推しなのですね!大楽の影となって支え、二作目では二代目師範代になりました。僕も大好きな人物で、谷中の用心棒を書こうと決めたとき、大楽とセットでまず生み出しました。
蜷川との決着もありますし、三作目では存分に刀を奮ってもらいますね!
そして、「颯の太刀」もありがとうございます。こちらは作品の世界観がガラッとかわりますが、同じ田沼時代のお話です。楽しんでいただけますと幸いですm(__)m
僕は時代小説家である前に、時代小説ファンなので、ブログの他の記事も楽しみに読ませていただきます(^^)/
_ coco ― 2024/05/10 10時51分23秒
筑前さん、Xで確認させていただきました。本当にご自身ですのね。
『谷中の用心棒』の江戸決戦、読むのを楽しみに待っています。
平岡が、もし死ぬようなことがあったとしたら、死なないで欲しいけど、存分に力を発揮し、暴れまくる場面をお願いしますね。
アラ、死ぬこと前提。失礼しましたm(__)m
『谷中の用心棒』の江戸決戦、読むのを楽しみに待っています。
平岡が、もし死ぬようなことがあったとしたら、死なないで欲しいけど、存分に力を発揮し、暴れまくる場面をお願いしますね。
アラ、死ぬこと前提。失礼しましたm(__)m
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本当、タイトルうまいし題材も面白いですね。でもクジラのいきづくりはやめてあげてww
江戸の対組織犯罪ハードボイルドも面白そうだけど、戦いの場面があっさりなのか~。