読んだ本2022/08/02

大分前に読んで、そのままになっていた文庫本をまとめて紹介します。


早見和真 『イノセントデイズ』
初めて読む著者かと思ったら、『店長がバカすぎて』を読んでいました。
全く違う作風の本で、驚きました。

死刑囚、田中幸乃。
彼女は元恋人の妻と1歳になる双子の娘の三人を、家に火をつけ焼き殺した。
彼女は報道されているような悪女だったのか?
彼女の人生に関わった人たち、産科医、義姉、同級生、元彼の友人等、が彼女について語っていく。
そして明らかになる彼女の過去の真実とは…。

読んでいて、なんとも言えない感じがつきまとう本です。
どの登場人物も不快で、共感出来ないし、主人公の幸乃の気持ちにも寄り添えませんでした。
「私を必要としてくれる人がいるんだとしたら、その人に見捨てられるのが死ぬより怖い」
だからと言って…。
ネタバレになるので書きませんが、気になる人は読んでみて下さい。

知念美希人 『祈りのカルテ』
新米医師・諏訪野良太は二年間の初期臨床研修で色々な科を回り、最終的にどの科を専門にするかを決める時期になっていた。
精神科や外科、皮膚科、小児科、循環器内科で5人の患者と向きあい、それぞれの患者の問題を探り、解決していくうちに、最後に彼が決めたのは…。

諏訪野のような医師が増えてくれるといいなぁと思いながら読んでいました。

原田ひ香 『復讐屋成海慶介の事件簿』
大東商事の元社長秘書の神戸美奈代は、自分を捨てた男への復讐を頼みに復讐屋『成海事務所』にやって来て、ひょんなことから押しかけ秘書になります。
復讐屋、成海のモットーは、「復讐するは我にあり」。
話は聞くが、何もやらないといういい加減さ。
それなのに上手くいくのは何故なのか

人を恨むより、幸せになって見返す方がいい。
そういう結論です、笑。

椹野道流 『最後の晩ごはん ゲン担ぎと鯛そうめん』
定食屋「ばんめし屋」が「芦屋さくらまつり」でランチ営業をしてみると、なかなか晩に来られない客たちから好評でした。
これからもやろうという話になりますが、晩飯にこだわりのある夏神は微妙。
そんなある晩、夏神の亡くなった彼女が霊になって現れます。
一方、海里は後輩・李英との朗読舞台のために練習に励んでいましたが、李英の調子がまた悪くなり、海里は一人でやることになってしまいます。

夏神がすっきりしたところで、次は海里ですね。さらなる飛躍ができるのか。

柊サナカ 『お銀ちゃん明治舶来たべもの帖』
明治時代に女子が写真を学ぶ学校として設立した「女子写真伝習所」に通う銀・基美・シズ。
この三人組の中でお銀は一番の食いしん坊で、新しい食べ物が出たと知ると、食べたくて食べたくて我慢ならなくなります。
例えばバナナ。今では安い、どこでも買える果物ですが、明治時代には舶来品のお高い果物だったので、三人のお小遣いでは到底買えません。
そこで三人は「写真よろづ相談所」を開設し、お金を稼ごうと考えました。
しかし勝手に開設したのが学校にバレてしまいます。
勉強になるということで「写真よろづ相談所」は続けることができました。
ただし金銭の授受は禁止です。
ガッカリする三人組ですが、捨てる神あれば拾う神あり。
写真に関する悩み事が解決した暁に、お礼として依頼主がご馳走してくれたのです。よかったね、お銀ちゃん。

新宿高野のバナナ以外に出てくるのは、資生堂薬局のソーダファウンテンという甘味処のソーダ水とか、凮月堂のシュークリイム、神保町のミルクホールのミルクセーキです。明治時代からあったのですね。
当時の写真技術のことも知ることのできるお話です。

篠綾子 『猫戯らし 小烏神社奇譚』
本草学者の泰山が小烏神社にやって来る。
木天蓼(マタタビ)を天日干ししようと思うが、家に猫がいるので神社の縁側を借りたいというのだ。
そこに寛永寺から田辺がやって来て、天海大僧正が竜晴を呼んでいるという。
行ってみると、伊勢も来ていて、彼が預かった案件があるという。
それは南泉一文字と呼ばれる名刀のことだった。

今回は猫にまつわる不思議な話です。
南泉一文字の付喪神で、生まれたての子猫のおいちが可愛いです。

風野真知雄 『わるじい慈剣帖 九 ねむれない』
わるじいこと愛坂桃太郎は、江戸のやくざの抗争のせいで、孫の桃子と遊べません。そのせいか夜の寝付きが悪くなっています。
読んでいる私も桃子ちゃんが出てこなくて淋しいわ。
今回は4つの謎に桃太郎は挑み、いつものように鮮やかに解いていきます。
最後に嬉しいことが。わるじい、良かったわね。

筑前助広 『谷中の用心棒 荻尾大楽ー阿芙蓉抜け荷始末』
萩尾大楽は谷中で町道場をしているが、その実は用心棒稼業を営んでいる。
ある日、捨てた故郷の斯摩藩の江戸家老から呼び出される。
家督を譲った弟の主計が脱藩して、江戸に向かっている。彼が助けを求めても断り、渡された物を届けて欲しいと言う。
不審に思った大楽は斯摩藩の裏の事情を探ることにする。
ちょうどその頃、江戸では阿芙蓉が出回るようになっていた。
斯摩藩では何が起っているのか。
弟は何を持って脱藩したのか。そして彼の行方は。
大楽はいつしか強大な敵に立ち向かっていくこととなる。

男性の好きそうな時代小説です。
時代小説版ハードボイルドです。

どの本も面白いので、お暇な時に手に取って読んでみてください。