山本幸久 『花屋さんが言うことには』2022/08/20

お花屋さんのお仕事小説。連載短編8篇。


君名紀久子がブラック企業のハラスメントに疲れ果て、もう身体も心ももたないからと退職願いを出すも、拒絶されようとしていた時に、助けてくれたのが、外島李多という女性。
紀久子は李多と意気投合し、飲み明かし、次の日には川原崎花店でバイトすることになる。

同僚は190㎝程もあるカレー作りの上手な農大研究助手の芳賀泰斗と、元高校国語教師で短歌や俳句を暗唱出来る、おしゃべり好きな丸橋光代で、李多は店長だった。

実は紀久子、美大のデザイン科出身で、グラフィックデザイナーになるという夢を持っていた。
しかし就活で失敗し、ブラック企業だった食品会社からしか内定をもらえなかったのだ。
花屋でバイトしながら、デザイン事務所への就職を目論むが…。

花屋の仕事は体力勝負。それでもやりがいはある。
駅前のロータリーから目立つように花を飾り、写真を撮ってインスタに載せる。
ツイッターでその日のオススメの花を紹介する。
店の黒板に、花言葉や花にちなんだ俳句や短歌、詩などを書く。
バラの花が咲き乱れたラッピングが車全体に施されている、ラビアンローズ号というやたら目立つ三輪自動車に乗り、配達するなどetc.。
いつの間にかラビアンローズ号の写真を撮って待受画面にすると、恋愛が成就するという噂が出回っていた。
ブラック企業では罵倒されるか、下品なジョークしかなかったのに、ここでは褒められ、感謝される。
いつしか紀久子の心の傷は癒やされていく。

デザイン事務所には雇ってもらえないが、彼女がデザインした川原崎花店のショップカードが気に入られ、包装紙や定期便サービスの箱のデザインまでさせてもらえた。
それが<衣通姫>のショップカードや菓子屋の創業百五十周年記念のお菓子のパッケージデザインコンペ参加へと繋がっていく。

章題になっている花の花言葉が、その章のテーマになっています。
今まで花言葉を意識して花を選んだことがありませんでした。
今度誰かに送るときに、参考にしてみます。
そうそうカーネーションって母の日だけの花だと思っていたら、愛の告白にも使えるんですね。
フリル菊が気になったので調べてみましたが、ショウメイキクのことでしょうか。


こんなに可愛い花です。菊には思えませんね。
花言葉は「薄れゆく愛」、「淡い思い」だそうです。

まだはっきりとは定まらない紀久子の未来ですが、幸せが待っているような終わり方で、ほっこりしました。
この頃お疲れ気味の働く女性に読んでもらいたい本です。
きっとお部屋に花を飾りたくなりますよwww。