髙田郁 『幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別巻下』2024/03/25

「あきない世傳 金と銀」シリーズの特別巻『契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻上』に引き続き、下がやっと出ました。
といっても、わたしはしばらく寝せておきましたけど、笑。


第一話 暖簾
明和九年。
五十四歳の周助は五十鈴屋の八代目を継いでから十七年になる。
彼はかつて「桔梗屋」の番頭をしていた。「桔梗屋」は無くなり、五鈴屋高島店の支配人として迎えられ、今は八代目ではあるが、彼は桔梗屋再建の願いを抱いていた。
如月に、江戸で未曾有の大火災、「行人坂の大火」があった。
五鈴屋江戸本店は焼失したが、幸いなことに主従の誰も欠けず、四つの蔵も無事だった。
五鈴屋江戸本店は来夏から再建に取りかかるという。
実は大川に町橋が架かるのを待ってから、賢輔が七代目(幸)と夫婦になって、九代目を継ぐという話になっていた。
この話はどうなるのかと思う周助。
そんな時に六代目徳兵衛こと智蔵の隠し子が見つかる。

第二話 菊日和
大阪から江戸に移って二十三年。幸が江戸を発った。
菊栄は惜しくてならなかったが、幸の「幸」を願わずにはいられなかった。
幸が江戸を去った後、本両替商「井筒屋」の店主、三代目保晴、幸の二人目の夫でもと五鈴屋五代目徳兵衛、が菊栄の心の支え。
彼女は小間物商「菊栄」の店主として、新たな流行りを生み出そうと奔走する。

第三話 行合の空
かつては江戸屈指の本両替商、音羽屋忠兵衛の後添いで、呉服商「日本橋音羽屋」の女店主だった結は、播磨国、赤穂郡の東の端、揖西との境にいた。
忠兵衛は旅籠「千種屋」の主で、娘が二人いる。
今の境遇に満足している忠兵衛に対し、結は未だ出来た姉、幸への嫉妬や憎しみに囚われていたが…。

第四話 幾世の鈴
五鈴屋が創業百年を迎えた翌年の天明五年、幸は還暦となる。
次なる百年へ、「買うての幸い、売っての幸せ」を受け継ぎ、末長く五鈴屋の暖簾を守り、売り手も買い手も幸せにする商いを、続けていってほしいと願う。
そのためにどうしたらいいのか。
そして、次の十代目を誰に任せたらいいのか…。

菊栄さんと惣ぼんさんは同志みたいなもんですね。
そうそう、一番心配だった幸の妹、結のその後が書かれていて、ホッとしました。
あのままでいると、餓鬼道に落ちるところでした。
まだまだ諦念の心に達することはないかもしれませんが、そこにある幸せをしっかりと捕まえていて欲しいと思います。
いつか姉妹が会えるといいですね。

店の再建よりも焼け出された人たちのことを優先したり、御用金が打ち切りになったのに、尼崎藩にそのまま貸し付けたりと、幸は目先の利益を追いません。
「万里一空」の精神でしょうか。
よい十代目が決まったようです。

ラストにふさわしいお話でした。
作者によると、これからも五鈴屋の後継者たちのお話を書き続けるそうです。
楽しみに待ちましょうね。

コメント

_ ろき ― 2024/03/25 19時28分50秒

18世紀のビジネスの話なんですね。いろいろなエピソードが面白そうです。老舗を続けて繁盛させていくのは大変でしょうね。そのうち(上巻から順に)読んでみたいです。

_ coco ― 2024/03/25 19時46分54秒

ろきさん、特別巻は上下2冊ですが、本編は一巻から十三巻あるお話です。
髙田さんの本は『みをつくし料理帖』という女料理人のお話も有名で、面白いですよ。

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