アーナルデュル・インドリダソン 『悪い男』2024/02/08

アイスランド・ミステリ、犯罪捜査官エーレンデュル・シリーズの七作目。


レイキャヴィクのアパートの一室で、若い男の死体が見つかる。
刃物で喉を切り裂かれており、レイプドラッグのロヒプノールを所持していた。
死体は女性用のTシャツを着ており、ベッドルームの床にコンドームが落ちていた。殺される直前に性行為をしていたらしい。
彼はバーかレストランで女性にクスリの入った飲み物を飲ませ、意識を失わせ、部屋に連れてきてレイプしたのか。
現場にはレイプの被害者のものらしい一枚のスカーフが残されており、何か香辛料らしきものの匂いがした。
レイキャヴィク警察犯罪捜査官のエリンボルクはその匂いがタンドーリ・チキンのものだと気づく。

やがて殺されたはアパートの住人で三十歳になる電気通信会社の技術者、ルノルフルで、口の中にロヒプノールを詰め込まれているのがわかる。
彼はレイプの常習犯で、これは被害者による復讐なのか?

エーレンデュルは東フィヨルド地方へ行くといって出かけてから行方不明。
エリンボルクがシグルデュル=オーリと共にこの事件を扱うことになる。

殺された男には悪いのですが、因果応報と言えます。
彼にレイプされた女性と家族のことを思うと…。

捜査官のエリンボルクは四十代の女性で、テディというパートナーと同居しており、彼の姉の子を養子にし、彼との間に十代のニ人の息子と一人の娘がいます。
(アイスランドでは婚外子が約七割だそうです)
自動車修理工場の共同経営者であるテディは料理が出来ず、料理本を出すほど料理が得意な彼女が事件の捜査で忙しいと、テイクアウトしてばかり。
ジェンダー平等世界一位の国でも料理は女性が担当している率が高いのかしら?
養子の息子は実の父親と暮らすためにスウェーデンへ行ってしまい、それから長男とは、反抗期なのか、上手くいっていません。
唯一、優等生の娘が彼女の味方です。
子どもに関する心配事は日本とそんなに変わらないですね。
子どもたち、特に彼女の娘の未来に幸あれと祈らずにはいられません。

心配なのはエーレンデュル。
彼のシリーズなのに、なんで主人公が不在なんでしょう。
エリンボルクは彼のことを、「過去から自由になれない、いや自由になりたくない、考えが古く、態度も古臭い。世の中の価値観がものすごいスピードで変化している間も、古い考え、古い習慣にしがみついてきたに違いない」などと思っています。ちょっと酷いわねぇ。
彼女にとってはエーレンデュルもシグルデュル=オーリも好感の持てない変わり者なんですよ。
とにかくエーレンデュルが二週間も教会前にレンタカーを放置しているというのが気になります。
次回にその謎が明かされるのかと思ったら、次はシグルデュル=オーリが主人公で、この事件と同時期のことなんですって。
早くエーレンデュルに会いたいです。

このシリーズは1、2巻目が翻訳されていませんし、この後に6冊あるようですが、ちゃんと翻訳されて出版されるのか心配です。
マルティン・ベック・シリーズみたいにならないことを祈っていますわ。

コメント

_ ろき ― 2024/02/11 05時34分23秒

アーナルデュル・インドリダソン、2冊くらいしか読んだことないけど、面白いですよね。アイスランド語から訳すのは大変そうですが、がんばってほしい。
エーレンデュルどこ行った? シリーズ物の主人公不在ってたまにありますが、よけい気になる。

_ coco ― 2024/02/11 15時46分28秒

ろきさん、面白いです。でも主人公が出ないって、とんでもないですよね。
今回は女性のエリンボルクさんの私生活が描かれていて、偏屈な男性の私生活よりもいいですわ。

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