筑前助広 『独狼 念真流無間控』2024/10/21



平山雷蔵は人斬りだ。一匹狼で、立ち会えば、髑髏になるという意味で、〔独狼(どくろ)〕と渾名され、首に多額の賞金がかけられている。
生まれは夜須。下野の譜代藩で、御手先役という刺客の家に生まれた。
しかし、藩を揺るがす大きな政争に巻き込まれ、雷蔵は出奔し、人斬りを生業にした。

ある日、江戸に戻った雷蔵は寝床としている慈寿荘の主、益屋淡雲からあるお武家が雷蔵を指名して来たので、依頼を引き受けて欲しいと言われる。
政事が絡むというので、断るが、淡雲は雷蔵に平伏までした。

呼び出された千里楼に行くと、そこにいたのは、二人の武士、老中の田沼意次と高祖藩江戸家老の塩屋又之丞。
雷蔵を名指しにした男は、亡き父の剣友で、世話になった三瀬申芸だった。

高祖藩では藩主が次々と亡くなり、末期養子を取らなければならなくなる。
かつて家督相続で敵対した者の息子が藩主になると、敵対した者を粛清する可能性がある上に、今までやってきた藩政改革が無駄になってしまう。
そのため苦肉の策として、彼らは亡くなった藩主の双子の妹を庶長子の神代円二郎と称して大名に仕立て上げるというのだ。
雷蔵の役目は円二郎を敵から護り、秘密裡に高祖から江戸に連れて行くこと。

敵の目を欺くために、六人で一組の隊が三つ用意され、西国街道・瀬戸内海路・山陰街道に分れて江戸を目指すことになる。
雷蔵たちは最も困難な山陰街道を行く。

次々と襲いかかる刺客団。
雷蔵は血塗られた愛刀・扶桑正宗を手に、切り捨てて行く。

生まれた時から人斬りの運命だという雷蔵には正義感などない。
仕事は仕事と割り切るのみ。
絶え間ない敵の憎悪と襲撃。
生と死は紙一重。
今日も現世の無限地獄を歩んでいく。

パチパチパチ…なんてね。
誠に格好いい人斬りです。
服装は黒羅紗洋套、その下に黒の筒袖と野袴。大刀の鉄鞘が血のような赤。
隻眼で黒い眼帯をし、女形のような妖艶さがあるなんて、想像するだけで、ぞくぞくします。
お話自体はよくあるものですが、次々と襲いかかる刺客たちをバッサバッサと切っていく、そこに心地よさを感じます。私って危ない人かしらww。
最後の決戦を楽しみにしていたのですが、意外とあっけなく終わってしまい、ちょっと残念でした。
もっと粘って戦う雷蔵を読みたかった。
雷蔵、強すぎですよ。あ、相手の阨津が口ほどではなく、弱かったのかな。

ヨーロッパの騎士がお姫様を守るというのにアメリカの西部劇がプラスされ、海千山千のドロドロした思惑が入り乱れたノワール小説です。(意味不明かなww)
人斬りの場面が続きますので、それが嫌な方は読まない方がいいでしょう。
そういうのが気にならず、面白い剣戟小説を読みたいという方にお勧めの小説です。

コメント

_ 筑前助広 ― 2024/10/28 00時03分12秒

著者です!
ご感想ありがとうございます。そして、ご紹介までしていただいて(汗
チャンバラ、チャンバラ、大チャンバラですね!
書き終えたあと、「暫くチャンバラはいいや~」って思えたぐらいです(また書いておりますが)
最後はあっさりでしたか(;'∀')本当はもっと短くかなり付け加えたのですが、次回はご満足いただけるように頑張ります。

ついでに、僕は登場す人物の強さをランク付けして管理しているんですが、阨津は萩尾大楽や筧求馬たちと同レベルの強さなんですよね。雷蔵が強過ぎるだけですが(;^ω^)

ともかく、今後もどうぞよろしくお願いいたします!
頑張ります♪

_ coco ― 2024/10/29 22時44分50秒

筑前さん、コメント、ありがとうございます。
今回はとてもスケールの大きいチャンバラになりましたね。
雷蔵、素敵です♡
映画になったら、誰がいいかと考えてしまいますが、筑前さんは誰かを思い浮かべながら書いているのでしょうか。
>阨津は萩尾大楽や筧求馬たちと同レベルの強さなんですよね。雷蔵が強過ぎるだけです
とのこと。やっぱり雷蔵は最強ですか。(もしかして、もっと強い剣士を考えていますか?)
私としては雷蔵にもっと暴れて欲しいので、彼のその後か脱藩するきっかけになった出来事を書いていただけたら嬉しいです。
次の作品を楽しみにしております。

_ 筑前助広 ― 2024/11/01 01時30分40秒

ご返信ありがとうございます!

雷蔵のモデルは色々ありまして、そもそも名前が平山五郎(新選組の隻眼隊士)+市川雷蔵(雷蔵のモデルは明確に眠狂四郎)からのスタートなのですが、映像化するとしたら誰でしょうか。このアクションに耐えられるのは佐藤健ぐらいでしょうね(;^ω^)岡田准一が大好きなのですが、雷蔵にしては濃い……。
読者の中には、ラルクのHydeだという人もいらっしゃいました。

強さに関しては、雷蔵が一番です。
実はこのキャラクター、僕が人生で最初に生み出したキャラクターなんです。思い入れもあって一番強いんですが、強さってタイミングもあると思うんです。
よく幕末で一番強いのは?という話題はありますが、その度に僕は「池田屋事件で真っ先に跳び込んだ時の近藤勇」と「死ぬ直前の沖田総司」と答えています。この状態の二人は誰にも斬れないと。雷蔵は最強ですが、そのタイミングによっては負けてしまうかもしれません。

そして、独狼の別の話も頑張って書きます。
実はこの独狼シリーズ(念真流サーガと読んでいました)は、シリーズ3作目なんです。
人生で一番最初に書いた長編が、雷蔵が元服し脱藩するまでのお話、そして次に雷蔵の父親が母親と出会い、結婚するまでの話を書き、そしてこれが三作目。なのに、この作品が早川書房の目に留まり書籍になった次第です。なので、他の二作も形にしたいところです(^^)/
そして年末か年始ぐらいに一冊出る予定です。そろそろ告知が出るかなぁと。

応援のお陰で書き続けられます。これからもどうぞよろしくお願いします!

_ coco ― 2024/11/01 16時31分55秒

筑前さん、ご返信ありがとうございます。
私は雷蔵に、ドラマを見たこともないのに、なんとなく眠狂四郎の田村正和を考えていました。古すぎですねww。
それなりに色気がなければなりませんから、誰がいいのか、難しいですね。

雷蔵が最初のキャラクターで、この本がシリーズの三作目なのですか。
ひょっとして前の二作は文芸誌に書いたけど、本としてはまだ出版されていないということですか。特に雷蔵が元服して脱藩するまでのお話を読んでみたいです。出版できるといいですね。期待して待っています。

次の本も楽しみにしております。
雷蔵シリーズも書き続けて下さいね。

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