アンデシュ・ルースルンド&べリエ・ヘルストレム 『地下道の少女』 ― 2023/09/08
台風の真っ只中。大雨警報が出ています。
どの地域にも洪水が起らなければいいのですが。
エーヴェルト・グレーンス警部シリーズの四作目。

ある日、薄い赤色のバスがクングスホルム広場に停車し、四十三人の子供を置き去りにし、走り去った。
子供たちはみな青と黄色のツナギを着ていて、クスリか何かで意識がもうろうとした状態で、外国人と見られた。
パトロール警官が彼らを見つけ、署に連れて行く。
毎朝、シーヴ・マルムクヴィスの曲をかけ、踊るという儀式を執り行っていたエーヴェルト・グレーンスは、指令センターからの電話に邪魔される。
署に四十三人の子供が連れてこられたというのだ。
しかしそのすぐ後に、聖ヨーラン病院の地下通路で、顔の一部がえぐられた女性の死体が発見されたという電話がはいる。
三十二件もの捜査中の事件があるというのに、また二件。
エーヴェルトは子供たちのことを女性刑事マリアナ・ヘルマンソンに任せ、自分は長年捜査をともにしてきたスヴェン・スンドクヴェストと地下通路の女性の事件を捜査することにする。
この日、エーヴェルトの愛するアンニは病院に定期検査を受けに行っていた。
ところが誰かが麻酔の前にものを食べさせたらしく、アンニは誤嚥を起こしてしまい、予断を許さない状態になる。
アンニを失うのではないかという不安から、エーヴェルトはスヴェンが危ぶむほど、事件にのめり込んでいく…。
著者によると、「表向きには、スウェーデンにストリートチルドレンは存在しないことになっている。表向きには、売春禁止法が施行されて以来、売春件数は減ったことになっている」そうです。
スウェーデンにもストリートチルドレンは存在するのですが、保護者がホームレスでないかぎり、子どもは、実際に路上で暮らしていても、ホームレスとみなされないのだそうです。
ストックホルム市が行なった2018年の調査ではホームレス人口は2439人で、その三分の一が女性で、女性の割合は増加傾向。ホームレスのうち55%は薬物などの依存症で、45%に明らかな精神障害があるそうです。
ちなみにストックホルム市の2018年の人口は約96万人です。
福祉国家と言われているスウェーデンに親からも社会からも公に存在していないとされている子どもたちがいるということ、そしてそのことに何も対策が講じられていないことに驚きを禁じえませんでした。
この本は本国で2007年に、日本では2019年に刊行されています。
探せなかったのですが、スウェーデンの現在の状況が知りたいです。
さて、日本はどうなんでしょう。
2023年1月の厚生労働省の調査によると、全国のホームレスの人の数は3065人で、年々減少傾向。内訳は男性2788人、女性167人、性別不明110人だそうです。
東京都は661人で大阪府は888人。
6割が65歳以上のホームレスで、平均年齢が65歳。
ネットカフェ難民など、いわゆる「見えないホームレス」の数は約4000人だそうですから、実際はもっと多いんでしょうね。
日本にもストリートチルドレンはいないと言われています。
近頃「トー横キッズ」などがマスコミで取り上げられていますが、彼らには帰る家や居場所があるんでしょうかね。
訳者後書きに気になる記述がありました。
「男の子は往往に暴力的になり、周囲の目を引きつける。対策が講じられる。ところが女の子は目につかないまま消えてしまう。なかなか見つからず、より深いところまで転落していく。社会復帰にも、男の子より長い時間がかかる」
主人公のわりに活躍が少なかったエーヴェルトがやっと前面に出てきたという感じですが、彼の今後が心配です。
今のところ本格的ミステリではないです。地下道に住むストリートチルドレンという社会問題を取り扱った小説ということで、是非読んでみてください。
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