中山七里 『おわかれはモーツァルト』2022/01/24

岬洋介シリーズの最新作です。
いつ岬さんが出てくるのかと期待していたのですが…。


2010年に行われたショパン・コンクールで入賞した全盲のピアニストの榊場隆平は、コンクール後、国内で一躍有名になり、全国ツアーを組めるほどのピアニストになりました。
2016年にはコンサートツアーを東京、名古屋、大阪で行うことになっています。プログラムはすべてモーツァルトで、チケットの売れ行きはよく、追加公演の話が出ています。

コンサートツアーも近付いたある日、隆平に『週刊春潮』から取材が入ります。
やってきたのが寺下博之というフリーライターで、取材中に隆平が自身のハンディを詐称しているのではないかと言い出し、挑発してきます。
その後、彼はコンサート会場にまで入り込み、野次を飛ばし、取材に応じなければ、この先の公演でも同じことをするとほのめかし、記事を買わないかと恐喝してきます。
このままでは隆平の才能を潰されてしまうと危惧したピアノ教師の潮田は、マネージャーのTOMと隆平の母親・由布花と話し合いますが、これといった名案も浮かびません。そういう時に赤坂署生活安全課の熊丸貴人がやってきます。彼は前から寺下の動行に目を光らせていたようです。
潮田たちは熊丸のアドバイスに従い、取材の場所を設け、罠を仕掛けることにします。
しかし、寺下は隆平の練習室で死体となって見つかります。

寺下は深夜、明かりの消えた室内で殺されたようです。
そんな状況で殺人ができるのは隆平以外にはいないと思われました。
公演二日目が近付いたのに、練習室で練習ができなくなり、禁断症状が出てきた上に、隆平は事情聴取による切迫感と重責からの圧迫感で押しつぶされそうになります。
ふと思い出したのが、ポーランドで容疑者にされかけた隆平を救ってくれた人のことです。
隆平は彼にメールで近況を伝えることにします。

次の日、警察に連行されそうになった隆平のところに…。

音楽が行間から聞こえてくるようです。
聞きながら読むといいかもしれません。

今回は犯人は誰かということよりも、岬と隆平の友情がいいですね。
(犯人はそれほど考えなくてもわかってしまいますもの)
天才は天才を知るという感じで、互いに認め合っているところに感動しました。
「岬は隆平を自由に歌わせる」、「岬のピアノは大抵の個性を自家薬籠中のものにしてしまう」、「演奏の幅、というかスケールが異常に巨きい」と描いてありますが、どんなピアノか、一度聞いてみたいもんだと思いますけど、笑。

最後に「ピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365」でも聞いてください。
コンサートに行きたくなりました。
ミステリーとしては軽く、どんでん返しもありませんが、音楽小説(ってあったけ?)として読むといいですよ。

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