篠綾子 『狐の眉刷毛 小烏神社奇譚』2022/01/07

雪の中、犬たちを庭で遊ばせようとすると、兄は一回りしてから、弟はすぐに家の中に入ってしまいました。
都会の犬は雪が嫌いなんですね。


ある日、小烏神社の宮司・賀茂竜晴のもとに患者の対応で遅くなった医師の泰山が駆け込んで来て、鳥居のところで狐火を見た、狐がこの神社で悪さをしようとしているかもしれないと言い出します。
とりあえず泰山を落ち着かせ、帰らした後、四谷の狐が現れます。
陰陽師の血を引く竜晴は人ならぬモノたちの言葉を聞き分けることができます。
白狐が言うことには、彼の仲間の狐の霊が執心ゆえに成仏できずに、この世をさすらっているので、その狐を見つけ出し、執心を祓ってやって欲しい、放っておけば、江戸の町に害をもたらす物の怪に転じる恐れがあると言うのです。

その頃、小烏神社の氏子の花枝に大奥入りした親友のお蘭から一度会いに来てくれないかという便りが届きます。
会いにいってみると、お蘭はお楽と呼ばれており、将軍の寵愛をうけて部屋を賜る身分になっていました。
お楽は花枝に思ってもみなかった申し出をします。

お蘭に会った後小烏神社にやって来た花枝は、お楽が誰かに呪われているのではないかと竜晴に訴えます。竜晴はそんな花枝にいつもと違うものを感じていました。
無銘の弓矢の付喪神で、鷹の姿をしたアサマは花枝に獲物の気配がすると言います。
花枝に狐の霊が取り憑いているのか…。

竜晴はアサマの主人である伊勢貞衡に花枝の知り合いの大奥の女人が呪詛を受けているようだと話してみます。
貞衡は大奥に勤める女中、お駒の後見人をしているので、春日局と面識があります。お駒から何か知らせが来たら、竜晴と大僧正にも報せるということになります。

花枝のところにお楽からの使者が来た後に、お駒からの使者がやってきます。
怪訝に思う花枝に渡された書状にはお楽が女たちから妬まれている、このままではまいってしまわれるのではないかと書いてあり、使者からはお楽に会った際にお駒のところへも寄って欲しいと言われます。

その頃竜晴は寛永寺の大僧正である天海に会いに行っていました。
天海は春日局に内密に打ち明けられたことがありました。
大奥のとある女人の部屋の床下から、呪詛の道具が見つかったというのです。
それを聞いた竜晴は花枝のことを打ち明けます。

竜晴たちは呪詛した者を見つけ出せすために狐を使い、それが終われば即座に祓う
ことにしますが…。

今回は狐にまつわるお話です。
狐は昔から人を騙す生き物として嫌われていたようですが、なんでなんでしょうね。
短い話や言い伝えを絵入りで載せた『御伽草子』の中に『狐の草子』や『木幡狐』、『玉水物語』、『玉藻の前』などの狐の話があるそうです。
今回は『玉藻の前』の話を基に書かれたようです。
玉藻の前は平安時代後期に鳥羽上皇の寵愛を受けたとされる伝説上の美女で、その正体は二尾(江戸時代に九尾になった)の狐で、各国の諸王を滅ぼしたと言われる大妖怪です。
陰陽師に正体を見破られ、逃亡し、那須野で発見され、武士の三浦介らに討伐されます。その怨霊は殺生石となり、近づく人間や動物等の命を奪い、人々をおそれさせたそうです。(「ピクシブ百科事典」より)

ちょっと不思議な世界を扱った時代小説です。