読んだ時代小説三冊(文庫本) ― 2024/05/29

森 明日香 『牡丹ちる おくり絵師』
『おくり絵師』の続編。
「第一章 読売の心中絵」
おふゆは思い人であった役者の市之進の死絵を描いたことから、地本問屋からの注文が増えてきてはいたが、未だ歌川国藤のもとで家事をしながら絵の修業をしている。
ある日、おふゆは卯の屋の帰り道の両国広小路で、矢助が役者の心中を扱った読売を売っているのに出会う。画帖を持っていたことから、読売の仲間と思われ、岡っ引きに捕まる。しかし、国藤と同心の梶原が知り合いだったため、おふゆは放免になる。
そんな時に地本問屋の佐野屋から矢助の売ってた読売に扱われていた役者二人の死絵を頼まれる。ご禁制の心中の絵を描くことに躊躇するおふゆに佐野屋は芝居の道行を描くのだと言う。
「第二章 宝物」
三代目助高屋高助が興行中に亡くなる。おふゆの予想通りに佐野屋がやって来て、死絵を頼まれるが、おふゆはその役者を知らないため断る。すると佐野屋はおふゆに死絵を描くつもりなら、役者や芝居を学ばねばならないと諭す。
そんな頃、おふゆは卯の屋でおりんの友人のおせいと知り合う。元辰巳芸者のおせいは娘を亡くしていた。しばらくして、具合が悪くなったおせいにおふゆは呼び出される。
「第三章 牡丹ちる」
おふゆは芝居を見に行くために、団扇の注文や絵草紙の挿絵をどんどん引き受けている。
そんなある日、千両役者の八代目市川團十郎が上方で自害し、江戸市中が大騒ぎとなる。おふゆのもとに地本問屋がやって来て、八代目の死絵を頼むが、おふゆは断る。おふゆは国藤に自分が八代目を商いの目で見ていたと打ち明けると、国藤はおふゆが死絵の注文を受けずに済むように謹慎を言渡す。
二百を超える死絵が江戸市中に出回る。
それからしばらくして、唐突におふゆは謹慎を解かれ、国藤から八代目の死絵を描いて詫びなさいと命じられる。
一作目と比べると、感動が少なかったです。
死絵とは、「たった一度でも光が辺り、命が真っ白に輝く」、「その刹那を永遠に留め」、亡くなった人の魂をあの世は送り出すためと、死絵を見て救われる人のために描くものなんですね。
卯の屋の寅蔵とのことも気にかかりますが、おふゆの修業は続きますから、なかなか進展しないかもしれませんね。
五十嵐佳子 『想い星 茶屋「蒲公英」の料理帖<2>』
『桜色の風 茶屋「蒲公英」の料理帖』に続く二作目。
「第一話 草履と錦絵」
さゆが始めたお茶と団子の店「蒲公英」は三月めに入った。
そんな頃、若い娘の万引きが番小屋の草鞋を盗んでいった。娘は人形問屋「三枡屋」で奉公するすえで、何か理由がありそうだ。
「第二話 空蝉の証」
さゆの実家のいわし屋の主である甥の娘、鮎は内与力の伊織に思いを寄せている。
しかし、伊織は忙しく、嫁取りどころではない感じだ。
ある日、鮎はさゆのところにやって来て、鍼仕事をしていく。
そんな鮎に宗一郎という男が話しかけて来る。何物なのか?
「第三話 夕立の空」
さゆの店に昔のさゆの思い人である俊一郞がやって来て、今度、美味しいものを食べに行こうと誘う。
ある日、日本橋の漆器屋「光風堂」のひとり娘、ゆうと湯河原の漆器屋「伊東屋」の娘で伝馬町の漆器問屋「太平堂」に奉公しているちかがやって来る。
どうもちかは湯河原に帰りたくない理由があるようだ。
「第四話 煮物を作る日」
常連の乾物問屋「松葉屋」の伊兵衛が蒲公英に来なくなった。何があったのか心配するさゆたち。伊兵衛は部屋で転んで脇息に額をぶつけたと言う。
鮎がやって来て、気になっている人がいるという。それが呉服問屋「難波屋」の跡取り息子、宗一郎で、前に彼との見合いの話があり、断ったという。お針の稽古の帰り道で呼び止められ、話してみると着物の話で盛り上がり、話が合ったというのだ。
「第五話 想い星」
さゆのところに俊一郞が隠居所に移り、お妾さんを置く気じゃないかという噂が入る。まさかと思うさゆだったが、俊一郞から両国の花火見物に誘われ、行くことにする。
そして、鮎のところに見合い話が持ち込まれるが。
今回は様々な人の想いが書かれています。
なんとまあ、さゆにも隠された想いがあったのです。
それぞれの人が幸せになるといいなぁと思えるお話でした。
坂井希久子 『月草糖 花暦 居酒屋ぜんや』
ぜんやに大奥に仕えていた只次郎の姪、お栄が転がり込んで来た。
町人になりたいとは言うが、母の思いを知り、お栄は自分の身の振り方を決める。
薬種問屋「俵屋」に奉公する熊吉は岡場所の女の手紙に困っていた。
ひと月まえの藪入りの日、手代仲間の留吉から誘われ、深川松村町の路地に連れられていった。その時、熊吉の相手となったのが、お万で、熊吉は金を払ったがお万を抱かずに帰ったのだ。それ以来、お万は熊吉に執着し、手紙を寄越すようになる。よせばいいのに熊吉はごくたまに会いに行くと約束してしまう。
そんな時に、熊吉はお万が唐瘡(梅毒)に罹っていることに気づく。客にうつるから、客をとってはいけないと言うが、お万は仕事を辞められないと言う。
金のない熊吉はお万を請け出し、三十年近くも面倒を見続けることはできない。
困った熊吉は只次郎たちに相談するが…。
一方、ぜんやの娘、お花は熊吉がおしろいの匂いをさせていることに気づき、熊吉が女郎買いをしていると思い込む。
今回の主人公は熊吉です。今回のことは彼の優柔不断さが招いた災難です。
今のままではまた同じようなことが起こりそうで、心配です。
お花も十六、番茶も出花(十八ではないけど)。熊吉はやっとお花も女だと気づいたようで、次は二人が主人公になるんでしょうかね。
「おくり絵師」シリーズと「茶屋「蒲公英」の料理帖」シリーズがどういう展開になるのか、三作目が楽しみです。
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