宮部みゆき 『R.P.G.』2013/12/15



R.P.G.とは「role-playing-game」の頭文字です。
NHKでドラマにしていたとのこと。
ドラマでも舞台でもいけそうな話です。 

建設中の住宅で複数の人間が喧嘩をしているという通報が。
交番から現場まで駆けつけていってみると、男がナイフで刺されて死んでいました。
男は食品会社の顧客管理課課長の所田良介でした。
彼の死の三日前に元交際相手の女子大生も、渋谷のカラオケボックスで何者かにより絞殺されていました。
捜査線上に浮かんだのがA子でしたが、これといった決め手はありません。
調べていくうちに、所田にネット上の家族がいたことがわかります。

事件の突破口を開くために、デスク担当だった中本があることを提案します。
その線でいってみようとなった時に、彼は心筋梗塞で倒れてしまい、中本の代わりに抜擢されたのが、中本と同じデスク担当の武上でした。

所田の娘の一美を取調室の隣のマジックミラーのある部屋に待機させ、普段は書類仕事の武上が所田のネット上の家族たちの取調べをします。

「サイバースペースで育まれる人間関係には、現実社会のそれと同じくらいの価値もあれば、温かみもあるんです。デタラメや嘘ばかりが横行しているわけじゃありません。顔を合わせないからこそ、自分の姿や立場にとらわれないからこそ打ち明けあうことのできる本音もあれば、そこで育つ親愛の情だってあるんです」

現実の家族が機能しないためにネット上の家族を求めるということはありそうです。
そういう家族を求めざるえない状況というものに悲しさを感じます。
この頃の事件をみていると、崩壊家族で育った子達が起こしているものが結構あるように思います。
淋しいから、その淋しさで結びついても、どう家族を作ったらいいのかわからなくて困っているようです。
そういう子供たちと関わっていく、いい大人がいればあのような事件は起こらなかったかもしれないですね。

この本では最後の最後に驚かされます。
詳しくは書きませんが、宮部さんの発想の豊かさにはいつものように感心させられました。
次はどんな驚きをくれるのか、楽しみです。