高梨ゆき子 『大学病院の奈落』2017/12/26



図書館にリクエストを出してから大分経つので、どんな内容の本か忘れていました。
小説ではなくて、群馬大学病院で起こった患者18人連続死に関する医療物でした。

群馬大学病院というと、北関東屈指の医療拠点病院。
その病院で2011年から2014年の間に腹腔鏡を使った肝臓手術を受けた100人の患者のうち、少なくとも8人が死亡していることがわかりました。
この8人を執刀したのは第二外科の医師で、手術の前に病院の倫理審査を受ける必要があったのにもかかわらず、申請していませんでした。
その後、判明したことは、この医師は開腹手術でも10人の患者を死なせていたということです。
問題の医師は助教であるにもかかわらず、第二外科の消化器を担当する中心人物で、肝臓や胆嚢、膵臓の領域を専門としていましたが、技術は極めて未熟だったそうです。
この事件の背景には「白い巨塔」のような、大学の学長選挙や第一外科と第二外科の確執、自分は手術が下手なので彼をひきたてていた教授の存在などがあります。
この本は事件の背景を仔細に解き明かしています。

信じられないのは、このようなことを起こしても医師としての資格を剥奪されず、未だ群馬県のどこかの病院で医師として働いているということです。
遺族は何かおかしいと思っても、声を上がられず、未だ手術なんか受けさせなければよかったという自責の念に悩まされています。
どんな手術にも100%安全とは言えないということはわかっていますが、患者やその家族に対して起こったことをきちんと説明するというのは最低すべき責任だと思います。
そういう責任も果たさず、次々と手術を行っていったという精神構造がわかりません。
手術を行った医師は私の手術の腕はいいのだけど、たまたま患者の状態が悪く、運が悪かっただけと思っていたのでしょうか?
そして、そういう行為を止められなかった病院組織とはなんなんでしょうね。

手術を進められたら、患者側はセカンドオピニオンを利用したりして、その手術は最適なものかどうかよく調べてみることが大事ですね。
病院でいい医師に出会えるかどうか、それで運命が変わる、怖い世の中です。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2017/12/26/8755652/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。