米澤穂信 『可燃物』2023/09/17

米澤穂信が描く、本格的警察ミステリー。


群馬県警本部刑事部捜査第一課の葛警部は「余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある」。

「崖の下」
ロッジを経営する男から群馬県利根警察署に通報がある。夕食の時間に帰るはずの五人の客のうち四人と連絡が取れないと言うのだ。
翌朝スキー場を調べてみると、コースから離れた崖の下で二人が発見され、一人が死亡していた。頸動脈を刺されたことによる失血死だった。
犯人は一緒に遭難していた男だと思われたが、凶器が見つからない。
凶器は何なのか、葛は考える。

「ねむけ」
群馬県藤岡市北平井で強盗致傷事件が発生する。
捜査本部は類似前科のある者を中心に被疑者の洗い出しをして、三人を容疑濃厚とし、二十四時間体制の監視をつけた。
その二日後、被疑者の一人、田熊が交通事故を起こす。出会い頭の事故だった。
目撃者は4人。多過ぎる。その上、田熊は制限速度の時速五十キロで運転していた。
葛は違和感を感じる。

「命の恩」
群馬県榛名山麓にある<きずげ回廊>で人間の右上腕が発見される。
上腕骨の末端部に金属による擦過痕が見つかり、人為的に切断されたものだということがわかった。
山狩りを行なうと、次々と他の部位が発見される。
歯から身元がわかったが、なぜ犯人は身元をわからないようにしなかったのか、なぜ遺体を切断したのか、そしてなぜ誰でも気軽に歩ける<きすげ回廊>に死体を捨てたのか。
葛は動機を追及する。

「可燃物」
太田市の住宅街で連続放火事件が発生し、葛班が派遣された。
燃えるゴミばかり狙われていたが、ゴミ出しマナーの不満が動機とは思えない。
なぜ犯人は放火を繰り返しているのか。
張り込みをすると、放火が止る。
なぜなのか。
動機が鍵だと思う葛。

「本物か」
ファミリーレストランで立てこもり事件が起る。
近くで傷害事件に対処していた葛班が特殊係が到着するまで情報収集に当たることになる。
犯人の名はすぐに判明したが、黒い、拳銃状のものを握っていた。
男性店長と女性スタッフを人質にしているようだ。
物音がし、非常ベルが鳴り、その後に『逃げろ』という声がして、客も従業員も店から避難したという。
ひっかかりを覚える葛。

一旦事件が起ると、カフェオレと菓子パンばかり食べている葛警部。
身体に悪いですよ。弁当はないんですか。独身または離婚経験者っぽいですね。
部下に情報収集は任せても、最後は自分で推理し解決するという切れ者ですが、これじゃあ上司や部下が浮かばれません。
部下に葛以上のいい人材がいない理由がよくわかります、笑。

事件自体に盛り上がりはなく、淡々と終わります。
この頃グレーンス警部慣れしてしまった私にはスケールがチマチマしていて、少し物足りなく感じましたが、グレーンス警部シリーズが例外ですよね。
とにかく本格的推理小説が読みたい方向けですので、是非葛警部と推理合戦をしてください。
私は最初から諦めていますが、なるほどそうなのかと意外性に驚きました。

この本に関係ないですが、私は<ベルーフ>シリーズが好きなので、太刀洗万智に会いたいです。次によろしくお願いしますね。

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