村上春樹 『1Q84』2009/07/14

今日のNHK「クローズアップ現代」にも取り上げられていた、村上春樹の『1Q84』を読んでみました。

「クローズアップ現代」によると、村上さんがオウム真理教の起こした事件に衝撃を受け、それをきっかけに書いたのがこの『1Q84』なのだそうです。
地下鉄サリン事件があった1995年まで、彼は海外に住んでいました。しかし、この事件後、帰国を決意します。
それまでは、社会問題なんか興味のないような主人公の物語を書いていましたが、それ以降、何かしなければという使命感から、サリン事件の被害者にインタビューをして『アンダーグラウンド』を書いたり、オウム真理教の元信者にインタビューをして『約束された土地で』を書いたのです。
エルサレム賞を取ったときのスピーチで、「集団の持つ力」を彼は「システム」という言葉で表し、「システム」は人々に考えることを放棄させると言っています。
こういうシステムの危険性に対抗するのが彼の言う物語なのです。
何故村上春樹が全世界で読まれているのかというと、彼の物語に漂う空虚感や距離感が世界中で共感されているからだとコメンテイターは言っていました。

さて、『1Q84』ですが、青豆と天吾という二人の物語です。
青豆はスポーツクラブのインストラクターをやっていますが、裏ではDV男を闇に葬るという仕事をしています。
天吾は数学の予備校講師をやりながら、小説家になるために文を書いています。
二人は10歳の時に同じ小学校のクラスメートでした。
青豆の親は「証人会」という宗教団体の信者でした。
「証人会」では終末論を説き、布教活動を熱心におこない、輸血などを認めないのです。
青豆は母親とともに布教にまわっていましたし、教義上の理由から学校のいろいろな行事に参加できず、その上お昼の給食時にはみんなの前で特別なお祈りを唱えなければなりませんでした。
そのためクラスの仲間には入れず、いつも一人でした。

天吾は母親のいない家庭で育ちました。
父親はNHKの集金人で、日曜日には天吾を連れて集金にまわるので、友達とも遊べず、天吾にとっては辛いことでした。

そんな二人が、よく晴れた12月初めの午後、教室で二人きりになり、青豆が天吾の手を握ったのです。
この時の記憶が青豆と天吾のその後を決めることになります。

1984年、青豆はDV男を闇に葬るために、『シンフォニエッタ』を聞きながら、首都高速道路の緊急避難階段を降りていきました。
その時から、彼女の世界は月が2つある1Q84になります。

天吾は不思議な小説『空気さなぎ』の書き換えを任され、実質的な作者であるふかえりと知り合うことになります。
彼女は「さきがけ」という宗教団体から逃げてきた17歳の少女でした。
カルト集団「さきがけ」の教祖が少女たちをレイプしているということがわかり、青豆はリーダーの暗殺を任されます。
青豆と天吾の世界はどう交わっていくのでしょうか。

発売以来200万部という驚異的な売れ行きだそうですが、う~ん、そんなにいい本だろうか?というのが正直な感想です。残念ながら彼の書く世界には入っていけませんでした。
たぶん、BOOK3とか4まで書いていくのではないかと思うので、その時まで評価は保留にしときますわ。