北森 鴻 『緋友禅』2010/12/01



北森鴻の旗師シリーズがおもしろいと言ったら、同僚が貸してくれた本が四冊。
そのうち『狐闇』は昨日紹介しました。
今日は陶子シリーズの短編集。

「陶鬼」
萩焼にまつわる悲恋話。陶子の師匠のような人、弦海礼次郎の過去が明らかになります。

「永久の笑み」の少女
埴輪にまつわる話。愛読者の振りをして「堀り師」重松徳治の仇をうつ陶子です。

「緋友禅」
ふと入った糊染めのタペストリー展で、「緋色の覇者」である久美兼次郎の仕事に惚れ込み、陶子は全作品を買います。
しかし、タペストリーはいつまでたっても送られてきません。
久美のアパートを調べ、訪ねてみると、彼は死んでいました。
陶子のタペストリーはありませんでした。
その後、友禅の作品展で、陶子の見たタペストリーと同じようなものがあると聞き行ってみると、タペストリーは織物となっていました。
さて、陶子はどうしたでしょうか。

「奇縁円空」
亡くなったコレクターの家で円空仏を見かけます。
鑑定にかけたり、仏像・仏具の専門業者に見せたりとしますが、本物かどうかはっきりしません。
そこで陶子は『狐罠』でお世話になった銘木屋の大槻に見せに行きますが・・・。

美術品の奥の深さに驚愕する内容です。
陶子を始めカメラマンの横尾硝子などの女性が凛として美しい。
謎解きもなるほどと納得のいくものです。

円空仏はあまり興味がなかったのですが、円空の一生をたどると面白そうですね。