坂本 司 『切れない糸』2010/12/15

和菓子のアン』がおもしろかったので、『切れない糸』も読んでみました。


主人公の東京商店街育ちの新井和也は、幼いころから捨てられた、もしくは迷子になった動物とよく遭遇し、家に持ち帰ることが多い子供でした。

大学卒業間近。就職活動もうまくいかず、このまま卒業か・・・と思っていたら、クリーニング屋をしていた父親が急に死んでしまいます。
急きょ父親の代わりに働き始めますが、簡単そうに見えたクリーニング業も奥が深く、母親から叱られてばかり。
やっぱり向いていないのかなと悩む毎日です。

父親がやっていた洗濯物の集荷作業は緻密さが必要で、取れそうなボタンやほつれ、シミや汚れはしっかりとチェックしておかないと、クレームがきます。
ライターなどが入っているのに気づかずにクリーニング工場に出してしまうと、爆発することもあるそう。怖~い。
シミもどういう状態で何がついたかによって、扱い方も違うし、洋服生地も次々と新しいものができるので、その勉強もしておかなければなりません。

昔から働いているアイロンの達人シゲさんに見守られながら、なんとかやっています。
喫茶店ロッキーで大学の友人沢田と話すのが唯一のホッとできる時間。

実はクリーニング屋って、他人の家庭の事情を知るにはもってこいの仕事だったのです。

そんななか、(和也にとって)不思議なことが次々と起きます。
動物だけではなく、人間も和也のところに寄ってくるようです。
沢田に話すと、彼はまるで香菜里屋のマスターそっくり、どんな不思議も解いてしまうのです。
意味がわからず右往左往するのが和也。

この二人、いい相棒です。

私としては沢田君のことが気になっています。
続編、期待しています。

商店街の意外なよさも知ることのできる、青春ミステリーです。