宮部みゆき 『泣き童子』2013/08/12



おそろし』、『あんじゅう』の次はこの『泣き童子』です。

瓦版で三島屋が取り上げられました。
名物はねずみ祭りのちゅうちゅう鳴きと、変わり百物語で、主人の姪の小町娘が聞き手を務めると書かれていました。
そのためか、今年のねずみ祭りは見物人がたくさんやってきました。
そして、おちかのところにも語り手がやってきます。

「魂取の池」
若い娘がやってきました。
彼女はお嫁に行く予定なのですが、やきもち焼きで相手が心変わりをしないかと心配でたまらないのだそうです。
彼女が話したのはおばあちゃんから聞いた<鏡池>のこと。
村でこの池は<魂取の池>として知られていました。
<鏡池>に夫婦とか許婚者同士、恋仲の男女二人がそろって行くと、男の方に必ず別の女ができて別れるという言い伝えがありました。
さて、彼女の祖母に起こったことは・・・。

「くりから御殿」
口入屋の灯庵老人から紹介されたのは、いつもと違って、語り手に内緒で人を立ち合わせて欲しいというものでした。
立会人は妻で、旦那の話は何度も聞いているし、彼は大病の後なので、具合が悪くなったりすることもあるかもしれないというのです。
旦那が話したのは、夢の山御殿のことでした。
その屋敷で行われるかくれぼとは。

「泣き童子」
三島屋の<ねずみ祭り>の日、飛び込みの百物語の語り手が現れます。
髪が真っ白で、肉がすっかり削げ落ちてしまった、骸骨のような男でした。
彼が語ったのは、ある人が現れると火がついたように泣き出し、その人がいなくなるまで泣き続ける赤子のことでした。
何故赤子は特別な人にだけ反応するのでしょうか。

「小雪舞う日の怪談語り」
おちかは怪談語りの会に招かれました。
岡っ引きの半吉が語り手として招かれており、稽古をしているというのです。
無事に半吉は語り終えるでしょうか。

「まぐる笛」
今度の語り手はお国訛りがきついお武家さん。
話は彼の幼い頃に預けられた村落で起こったことでした。

「節気顔」
夫を亡くしたばかりの女性がやってきました。
彼女の実家は小物屋で、分店してもらっていました。
本店の方は長男が道楽者で勘当されており、次男が店を継いでいました。
そこにひょっこりと長男が帰ってきました。
本店に置くわけはいかないので、彼は分店の方で預かることとなりましたが、どうも様子が変です。
彼には人に言えない秘密があるようです。

どの話も怖くて、ちょっぴり涙を誘うものです。
今の時代にはこういう不思議話の出てくる余地はないですね。
残念です。