小池真理子 『死の島』 ― 2018/06/17

澤登志男は、文藝編集者として出版社に勤務し、定年後、カルチャースクールで小説を教えていました。
しかし、数年前に腎臓癌に罹り、手術したのですが癌が転移し、後、どれぐらい生きられるのかという段階になってしまいました。
そのため、カルチャースクールを辞めて、人生の幕引きをどうつけようかと考え始めました。
カルチャースクールの最後日に、講師としての彼を崇拝する若い女、樹里が彼を待っており、話がしたいと言います。
彼女は彼が褒めてくれた作品の話は自分の家族に本当にあったことだと話します。
彼は彼女の話を聞いた後、衝動的に自分の余命のことを話してしまいます。
死を前にして思い出すのは、別れた恋人、貴美子とのこと。
貴美子は独身を貫き、自分の意志で、自宅で亡くなっていました。
彼に残したのが、一枚の絵、ベックリンの「死の島」でした。

彼に近づいてこようとする樹里に、彼は言います。
「おれが死んだらおれのことを書け」
彼は樹里を遠ざけ、一人、別荘へと向かいます。
自分が余命何ヶ月になったら、どうするのか。
最後まであきらめずに治療をつづけるのか。
貴美子のようにするのか、志男のようにするのか。
たぶん、貴美子のようにするんだろうなと思います。
まだまだ日本は尊厳死とか安楽死なんて認められていませんから。
それにしても、初老の男の考えることはしょうもないことですねぇ。
と言って、私が考えることも、どうでもいいことなんでしょうね(笑)。
絵の「死の島」のように、そっと死へ向かって船を漕いでいるような小説でした。
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