フェイ・ケラーマン 『死者に祈りを』2009/04/28

おもしろいので、一気に読んでしまいました。
このシリーズの始めの方では、正統派ユダヤ教徒の生活がものめずらしくかったのですが、この頃は若いリナと結婚したデッカーの胸の内が好ましくなっています。

この回ではデッカーは警部補に昇進し、現場に行って自ら捜査をするというより、書類仕事や捜査の指示を出す方が多くなっています。
デッカーといいパートナーだったマージには新しいパートナーのオリヴァーがつきました。

忙しい日々を送っていたある日、心臓移植外科医として尊敬されていたアゾー・モーゼズ・スパークスが、高級レストランの裏で殺されているのが見つかります。
スパークスには三つ子の息子の他に娘2人、息子1人がいました。
一見仲のよさそうな家族ですが、内情はいろいろな問題がありました。
調べていくと、スパークスは新薬の開発にかかわっていたことがわかります。
この新薬を巡って、スパークスと開発にかかわっていた三人の医師、そして製薬会社との間に何かありそうです。
その他に、スパークスには別の顔がありました。
週末にバイクに乗っていたのです。

捜査を進めていくうちに、リナと三つ子の兄で神父のブラムが知り合いであることがわかります。
リナの死別した夫とブラムが親友だったのです。
その上、ブラムはリナの夫の闘病生活を支えてもいたのです。
二人の仲を疑い、嫉妬にさいなまれるデッカーの苦悩がよくわかりますし、ブラムを擁護するリナの強さが際立ちます。
ある郵便物の宛先名から捜査が急展開するのが、ちょっとできすぎのような気がしますが、それも許せます。
人間がよく描けているからです。

リナ&デッカーシリーズの中で、一番よい作品の一つかもしれません。