読んだ文庫本2023/12/03

新刊本やミステリ本の合間に読んだ文庫本をまとめて紹介します。


ほしおさなえ 『紙屋ふじさき記念館 あたらしい場所』
コロナ禍で就職活動を行い、吉野百花は念願の藤崎産業に入社し、藤崎一成と共に広報部の『記念館準備室』という部署の所属になる。
ほかの人のアイディアも欲しいので、百花と三人の新入社員が中心のプロジェクトチームが組まれる。
新しい記念館として川越の古い商家の建物を借りることが決まる。
百花は新記念館の計画について考えているうちに、和紙の素晴らしさを広めるだけではなく、和紙に潜む可能性を探り、あたらしい使い方を考え、伝えていくことが大事だと思うようになる。
やがて新記念館のオープンの日が近付く。

ほしおさんの作品の良いところは、無駄に恋バナを入れないところです。
他の作者なら一成と百花を恋人同士にしようとするでしょうがね。
嫌な奴も出てこないし、ア、いとこがいましたが、最後に彼なりに一成を認めていたので、問題ないです。登場人物たちがみんな優等生過ぎるのが難点と言えば難点かな、笑。
このシリーズはこれで終わりです。川越に移ってからの記念館の様子も読みたかったのですが、ほかの川越を舞台としたシリーズが出て、記念館の様子がわかることを期待しますわ。

青木祐子 『これは経費で落ちません!11』
沙名子と太陽の結婚が本決まりになり、沙名子が作ったタスク表をひとつずつ処理していこうとするが、なかなか思い通りにはいかない。
同居か別居か、仕事は続けるか転職するか、婚約指輪や結婚指輪は買うか、両親への挨拶はどうするか、名字は、結婚式は、会社への報告は…etc.。
なんとかひとつひとつクリアしていくが…。

太陽があまりにものんき過ぎて、これからどうなるのかちょっと心配です。
それにしても経理関係のお仕事の本だと思って読んでいたのに、いつの間にか結婚のお話になっていました、笑。
名字をどちらのにするか、じゃんけんで決めるなんて、ナイス、沙名子。そういえば夫婦別姓は未だにできませんねぇ。
ここまで来たら、二人の行く末を最後まで読んでいきます。

中村颯希 『神様の定食屋:4 ハレの日のさじ加減』
この春から大学生のバイトが加わり、ミニコミ誌の影響か、それなりに繁盛していた「てしをや」だったが、SNSに「てしをや」のチキン南蛮がある芸能人の勝負メシという間違った情報が載せられ、客が普段の三倍以上になり、開店前から行列ができるようになる。
喜んだのも束の間、いろいろと問題が出てくる。
神様は相も変わらず、哲史に未練のある死者を押しつけてくる。
バズりはいつまで続くのか…。

今回は小春というバグが現れましたが、いつもと同じお決まりの展開ですので、ご心配なく。
なんのことのない変わらない日常が、なかなか気づけないけど一番いいんですね。

友井羊 『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 巡る季節のミネストローネ』
<第一話:春待つ芽吹き>
理恵は伊予たちから山菜採りに誘われる。山菜を採った後にいつものように慎哉の知り合いの山中で暮らす老人のお宅に行くと、孫の女性がいて、祖父は二ヶ月前に亡くなった、祖父から秘蔵のお宝の話を聞いてないかと尋ねられる。理恵たちはお宝探しを手伝うことになる。
<第二話:真夏の島の星空の下>
半月ほど前、理恵は従妹の睦美とその母親の瑛子と三人で沖縄旅行に行った。
その時、二つの奇妙な体験をした。一つ目はスーパーマーケットに買物に行き、来た道を正確に戻ったはずなのに、別の場所にたどり着いたということ。二つ目は久高島に置いてきたはずの貝殻がバッグの中に入っていたということ。
この話をスープ屋しずくで話すと…。
<第三話:秋に君の言葉を聞きたい>
前郷亜子は大本命の清原仁美を抑えて弁論大会の校内代表に選ばれる。ところがその後、亜子が仁美を引っ掻いて、全身傷だらけにしたという噂が流れる。というのもかつて亜子はカッとなると喧嘩相手を引っ掻くということをしていたからだ。
困った亜子はスープ屋しずくの娘、露に相談する。
<第四話:答えは冬に語られる>
スープ屋しずくの店主麻野は大量の稲庭うどんをフードバンクに寄付しに行った。そこにいた女性スタッフが、麻野が警察官の麻野静句の夫だとわかると、静句が友人の希美にひどいことをした理由を聞いてもらえないかと言い出す。
詳しい事情を訊いてみると…。

出てくるスープが本当においしそうで、飲みたくなります。
菜の花とベーコンのスープ、冷製ミネストローネ、ナスとショウガのポタージュ、栗のポタージュ、オレンジカリフラワーのポタージュ…。
謎解きはこんなおいしそうなスープの付け足しって感じかな(失礼)。
最後がハッピーエンドみたいなので、このシリーズは終わりなのでしょうか?

長月天音 『キッチン常夜灯』
チェーン店「ファミリーグリル・シリウス浅草雷門通り店」の店長をしている南雲みもざはマンションの真上の部屋が火事になり、自分の部屋に住めなくなり、会社に相談する。そうすると墨田区向島にある元寮で今は倉庫の一室にしばらく住めることなる。倉庫には倉庫を管理する金田という男性が住んでいる。
勤務後のある夜、金田が教えてくれた洋食屋を探してみると、本当にあり、「キッチン常夜灯」という看板がかかっていた。
「キッチン常夜灯」はサービスの堤さんと寡黙な城崎シェフがやっているフレンチのお店で、深夜に開き、朝に閉まる。
不眠気味のみもざは居心地の良さから常連になる。
そこは店長という鎧を着たみもざが鎧を脱ぎ、素になれる貴重な場所なのだ。
おいしいお料理を食べ、いろいろな事情のある常連たちと話すようになるうちに、みもざの仕事に対する気持ちにも変化が現れてくる。

「スープやしずく」で出てきた栗のポタージュがこの本でも出てきました。
おいしそうですねぇ。自分でもできるかもしれませんが、誰かに作ってもらいたいです。
とにかく出てくるお料理がすべておいしそう。食べたい…(涎)。

私の昔の職場の人が元ファミレスの店長で、休みも取れず、きつかったので、転職したと言っていました。
みもざはとても真面目な人ので、店長となるとこうあらねばならないと思い込みすぎて、自分から大変な状況にしていそうですね。人に頼ることも大事です。
私もみもざと似た性格なので、よくわかります。
みもざと同様に頑張りすぎるあなた、読んで、肩の力を抜き、なごんでください。

『キッチン常夜灯』以外はシリーズですが、どれも読みやすく、ほっこりしますので、軽いものを読みたい時におすすめします。

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