篠田節子 『青の純度』 ― 2025/08/31

五十歳の誕生日の日、有沢真由子は二十年近く前に投資対象として買った熱海のリゾートホテルを久しぶりに訪れた。
そこで出会ったのが、バブルの時代に圧倒的な大衆的知名度を獲得していたジャンピエール・ヴァレーズの絵だ。
インテリア絵画として美術業界では黙殺され、評論家には相手にされず、今や名前を口にするだけで笑いを誘う、バブルの遺産のようなヴァレーズの絵に、真由子は不覚にも感動した。
年度が変わり、真由子がチーフエディターをしている女性関連書籍企画出版部門、通称「フェミナ」で旅行関連のウェブマガジンの企画が持ち上がる。
取り上げるのはハワイで、比較的アピールしやすいミュージシャンとアーティストを特集することになる。
たまたま企画書を作った若い編集部員にヴァレーズの絵を見せると、気に入ったようで、特集の中で取り上げたいという。
版権を調べてみると、窓口は「ギャラリー藤森」で、虎ノ門の外資系ホテルでヴァレーズの原画展が行われるという。
世間から忘れさられているはずなのに、何故今、ヴァレーズの原画展なのかと疑問に思う真由子。
真由子は原画展に行ってみた。
すると、頻繁にシニアキュレーターを名乗る人物からメールや電話が来るようなる。
トラブルが懸念されるので、ウェブマガジンのハワイ特集にヴァレーズは載せないことになる。
しかしその後、エステサロンの広告主のトラブルでウェブマガジンは廃刊となり、真由子は肩書きのない編集長になる。
そんな時に真由子はヴァレーズを取り上げた本を作ろうと思いたつ。
知り合いの持っている絵の写真を本に載せることにするが、作品使用の許諾を得なければならない。
「ギャラリー藤森」はヴァレーズのブルーファンタジアシリーズの著作権だけを管理しているという。
真由子はリフレッシュ休暇を使いハワイに行き、ヴァレーズに直接会って交渉することにするが、不思議なことに、あれほど日本で人気があったヴァレーズを知っている人がハワイにいない。
わずかな手がかりを頼りに調べていくと・・・。
読みながら、ラッセンの絵を頭の中に思い浮かべていました。
篠田さんは山中湖のホテルでラッセンの絵に出会い、その時経験した感覚を小説にできないかと思ったことがこの作品の出発点になったそうです。
(「篠田節子インタビュー」より)
ラッセン、なんであんなに流行ったんでしょうね。
私の友人も買ったと言っていましたが、そういえば買った場所が画廊ではなく、ホテルかどこかの展示会だったような・・・。
ラッセンはまだ生きていると思いますが、まだ絵を描いているのでしょうかね。
この作品は全くラッセンとは関係なく、彼の絵にインスパイアーされて書かれたというだけです。
ちょっと嫌だなと思える人物が一人出てきますが、心温まるお話です。
絵でも生き方でも、本人がいいと思えばいいんで、結局のところ他人の評価なんて関係ないんですよね。
そう思えるお話でした。
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