三浦しをん 『風が強く吹いている』2008/01/29

三浦しをんは2006年に直木賞を受賞していたのですね。
全く世間の賞というものに疎い私は、この本を読んで初めて知りました。
彼女は1976年生まれという若さ!
初めは男性かと思いましたが、インターネットで調べて、女性だということがわかりました。
この本を書くのに6年もかかったとのことです。
村上春樹の本の後にこの本に出会ったのは、幸運でした。
実はこの本も司書さんのお薦めです。
この司書さんとは本の趣味が合うらしく、紹介してくださる本は楽しく読めます。

ある夜、清瀬ことハイジが町を歩いていると、万引きをした男を追いかけているコンビニ店員に会います。
万引き犯人は走って逃げていましたが、その走りがすごい。
彼の走りに感動したハイジは自転車で追いかけます。

万引き犯人は蔵原走(かける)という寛政大学に入学したばかりの学生でした。
彼は親からもらったお金を麻雀で使い果たし、部屋を借りることもできず、大学校内で野宿をし、お腹がへったら、コンビニで万引きをしていたのです。
ハイジはちょうどいい奴が見つかったと思い、走を自分の住んでいる竹青荘に連れて行きます。
ハイジはそこで食事を作ったりして寮長のようなことをしていました。
走は三万円という驚異的な家賃と朝食・夕食付きにひかれ、このボロッチイ寮に入ることにします。

ところがなんと、ハイジにはものすごい野望があったのです。
彼はこの4年間、竹青荘に入れる人をじっくり選んでいたのです。
最後に走と出会ったことで、彼の野望は現実味を帯びます。
竹青荘の住民は走が来て、ちょうど10人になりました。
そう、10人。駅伝は10人で走りますよね。
走の歓迎会でハイジは初めてみんなに駅伝の話をします。
びっくりする9人。というのもハイジと走、ニコチャンの3人以外は陸上未経験者なのですから。

10人を紹介すると、漫画好きでいつも漫画を読んでいる運動音痴の王子、国費留学生で理系のムサ、サッカー経験者の双子のジョータとジョージ、田舎出の足腰の強い神童、剣道経験者で弁護士国家試験に受かっているユキ、タバコ好きのニコチン中毒ニコチャン、クイズ大好きキング、そして走とハイジ。
こんな10人で駅伝が走れるのでしょうか?
決して強制せず、ねばり強く指導をするハイジのおかげで、なんとかみんながやる気を出し、箱根駅伝へ向け練習をすることになります。

箱根駅伝のことを全然知りませんでしたが、ちゃんと予選会があるんですね。
その予選会に出るための選手資格もあるし、や~、知りませんでした。

お茶の水で一度駅伝を見たことがあります。
その時、選手はホンの一瞬で通り過ぎていきました。
私が全力で走るのより速かったですね。当たり前ですが、笑。
それだけ早く走るためには、どれだけの練習が必要なことか、その時は考えも及びませんでした。
子どもを陸上選手にするために、結婚するときに太らない女性を選び、母親も太っていないのを確かめたという逸話も出てきますが、そこまでやるんですね。
テレビに子ども三人がプロのスポーツ選手になったという親が出ていました。
その父親は国体のホッケー選手。
彼は自分に足りないのは精神力だと気付き、精神的に強い嫁さんをもらったそうです。
う~ん、スポーツ選手になるにも遺伝が大事なのですね。

「走りとは力だ。スピードではなく、一人のままでだれかとつながれる強さだ」

「これほどまでに美しい生きものをほかにしらない。夜空を切り裂く流星のようだ。きみの走りは冷たい銀色の流れだ。あぁ、輝いている。きみの走った奇跡が白く発光するさまが見える」

走るために生まれたものの存在があるんですね。

どんなことでもそうなのですが、好きでどんなに努力しても高みを目指せないことがありますよね。
それは素質がないということでしょうね。
努力でできることには限界があり、それ以上の高みに行くには素質がないといけないのです。
走の走りを見て、ハイジは強くそれを感じるのです。

このハチャメチャな10人が如何にして箱根まで行くのか。
是非読んでみてください。
来年の箱根駅伝は違う目で見られそうです。
ちょっと走るのが好きになりました。