三好春樹 『老人介護 じんさん・ばあさんの愛し方』2008/04/13

題名を見ると、なんて老人を馬鹿にした題名だと思うでしょう。
でも、本を読むと違うんです。
「老いる」ことに対して、新しい視点を与えてくれる本です。

何年か前に、特別養護老人ホームを見学したことがあります。
その時感じたのは、「ここには入りたくないな・・・」でした。
ホームでくらしている老人達を見て、「かわいそう」とも思いました。
何故なのでしょうか。
まず部屋が病院の病室のような感じだったのです。
なにも飾り付けがなく、人がそこで暮らすという感じがしていなかったのです。
そして、プライバシーが全くありません。
なんか人生の終わりを過ごすところとしては、これはないな、とちょっと悲しくなってしまいました。
だから自宅で過ごしたいという人が多いんではないでしょうか。

「老いる」のは誰でも平等に起こることです。自分だけが特別ではないのです。
三好さんは、高度成長を支えた世代を襲った自らのアイデンティティを突き崩すショックとして、オイルショックと、「老いる」ショックをあげていますが、なるほどと思いました。
「老いる」ショックとは、うまい。座布団一枚!ですね。
50代、60代になってから、「老いるショック」を受けないように、徐々に老いを受け入れる準備をしていくといいのかもしれません。
そのためには、「老人と若者では時間の流れ方が違うこと」に気付いていくことが大事なようです。
そうすれば、動作や理解の遅いことにも腹が立たなくなるでしょう。

この本を読んでいて、つくづくとそうだと思ったことがあります。
それは、年をとると人間丸くなるということは嘘だということです。
三好さんによると、「人間が丸くなるどころか、人格が完成するどころか、年をとると個性が煮つまるのだ。真面目な人はますます真面目に、頑固はますます頑固に、そしてスケベはますますスケベに」
や~、親や義理の親、同僚などを見ていて、日頃思っていたことが腑に落ちました。
そうなんです。老いると、人間ますます個性が強くなっていくのです。
それがいい悪いと言うんじゃないのですが、接していると結構きついものがありますが。
この頃、自分のことを振り返っても、全然丸くなっていないから、これじゃあ駄目じゃんと思っていましたが、これが当たり前なんですね。
そう思うと気が楽になりました。
もっともっとワガママになって、若者に嫌われてやるぞ!!とも思いましたが、介護してくれる人に迷惑かけそう。
でも、これから老いていくに従い、どういう風に個性が煮つまっていくのか、楽しみかも。
「老いる」ことがちょっぴり怖くなくなってきました。