宮部みゆき 『燔祭』&『クロスファイア』2011/08/29



『燔祭』の方が『クロスファイア』より早く書かれたようです。私は『クロスファイア』の方を先に読みました。どっちを先に読んでもいいような気がします。

『燔祭』は男の側から見た青木淳子で、『クロスファイア』は淳子の心情を描いた作品です。

青木淳子は「パイロキネシス」つまり”念力放火能力”の持ち主です。幼い頃からこの能力があり、初めは感情の揺れにより意図せず火を起こしていたのですが、親の訓練により好きな時に自由に火を操れるようになっていました。
両親の死後、淳子はそんな自分の能力を人に知られないようにとひっそり、目立たないように暮らしていました。

会社の同僚の男性の妹が監禁、殺害されたのをきっかけに、その男性に妹の敵を討ちたくないかと持ちかけます。
その間のことが『燔祭』で同僚男性の多田一樹の視点から書かれています。
淳子は一樹のことが密かに好きだったのです。自分の秘密を打ち明けることにより、自分を一人の女性として理解してもらいたいと強く望んでいたのです。
しかし、その望みは打ち砕かれます。

『クロスファイア』ではその後のことが書かれています。

淳子は自分のエネルギーを放出しなければなりません。そのため、人のいない、見られることのない場所を使っていました。
エネルギーを放出しようと出かけた先で、殺害されようとしている男と出会い、助けようとして淳子は自分の能力を使い、殺人を犯してしまいます。結局、男は助からず、死ぬ時に淳子にある女性が監禁されているから助けてくれるようにと頼みます。

自分を「装填された銃」のようだと思い、殺人を続ける若者を探し処刑する淳子。

彼女を追う刑事たちと「ガーディアン」という謎の組織。
淳子はどうなるのでしょうか。

普通の女性のように誰かと繋がりたいと思う淳子の気持ちが愛しくも悲しい物語です。

光市の母子殺害事件を思い出しました。殺害したのは当時18歳の少年A。
妻と子を殺害された夫は「加害者を社会に早く出してもらいたい、そうすれば私が殺す」と言っていました。
この気持ちわかります。でも、実際に殺すとなると・・・。

被害者の気持ちが少しでも生かされる方法ってないのでしょうか。