原田ひ香 『一橋桐子(76)の犯罪日記』2020/12/03



一橋桐子、生涯独身、76歳。
少し前まで親友の宮崎知子(トモ)と一緒に一軒家に住んでいました。
ところがトモが亡くなり、一人で今の家に住み続けるにはお金が足りません。
清掃のパートをしていますが、それほどの稼ぎはないし、貯蓄もそれほどなく、どうしようかと思っていたら、お焼香を装った泥棒に遭ってしまいます。
香典の弁償で貯蓄が減り、引越しをすると今ある貯蓄はなくなってしまいます。
そこで桐子が考えたのが、犯罪を犯し、刑務所に入ることです。
刑務所に入ると、三食に昼寝はついてきませんが、三食食事は出るし、家賃の心配をしなくていいし、今は介護までしてくれるそうです。
さて、何をやりましょうか。人を傷つけたり、迷惑をかけるのは嫌ですから。

桐子さんみたいな人がいないとはいえないこの頃です。
彼女の気持ちがわかり、身につまされますわぁ。
あるかもしれない未来を思って爪に火をともすような暮らしはしたくないし、彼女みたいに犯罪を犯して刑務所には入りたいとは思えないですし、少なくとも直葬代ぐらいを貯めておいて、年金で細々と暮らせるように、生活の質を今より落とすことを考えておかなければなりませんね・・・。

などと色々と現実的に考えてしまいますが、本では真面目にお仕事をして、他人様に迷惑のかからない生活をしていた桐子には人とのいい縁があり、次々と助けがやってきます。実際にはあり得ないことですけどね。
原田さんの作品ですから、そこはかとないユーモアとほっこり感があり、読後感は悪くないですよ。