一色さゆり 『ルーブル美術館の天才修復士 コンサバターⅣ』2024/02/16

コンサバター・シリーズの四巻目。
コンサバターとは絵画などの文化財を修復保存する仕事をする人のことです。
絵画は好きだけど、それほど詳しくないという方向きの本です。


「第一章 ニケの指輪」
糸川晴香はロンドンからパリへ向かった。
一ヶ月もの間音信不通になっていたパートナーのケント・スギモトから連絡が来たからだ。
パリに着くとすぐに、晴香はスギモトがいると思われるルーヴル美術館に行く。
すると≪サモトラケのニケ≫が展示されていたホールは現在修復作業中のため封鎖されているという注意書きがあった。
案の定、そこにスギモトがいた。


何故晴香に黙って姿を消したのか、スギモトが言うには、ルーヴル美術館にはフランス人しか職員として受け入れないという表向きのルールがあり、英国からスギモトを招く手続きが極秘で進められていて、年が明けてようやく正式に、修復プロジェクトに単発で加わることが決まり、仕事上のパートナーである晴香を呼び寄せる許可も下りたからだという。
しかし、そう簡単に晴香が受け入れられるわけがなかった。
常勤職の修復士で、ニケの修復プロジェクトの責任者のマルタンは晴香に冷たかった。

修復中のニケの襞の隙間に金の指輪が見つかる。
指輪の内側にギリシャ語の格言、『翼はひとつでは飛べない』という文字が刻印されていた。
マルタンに内緒で指輪を持ち出したスギモトは、指輪の持ち主を探し当てる。

「第二章 芸術家たちのカフェ」
≪サモトラケのニケ≫の修復チームから不服申し立てがあり、晴香がロンドンに帰らされる可能性が出てくる。
晴香とスギモトが滞在しているモンパルナスのアパルトマンの側に一軒のカフェがある。
そのカフェはまるでチェスの盤上のようだ。
オーナーによると、カフェは1920年に彼の曾祖母により創業され、彼女はチェスの名手で、客ともよくチェスをしていたそうだ。
晴香とスギモトは、彼らが修復士であることを知ったオーナーから店に飾ってあるチェスの絵画の鑑定とケアを頼まれるが、晴香は女店主の肖像画も合わせて修復することを提案する。
チェスの絵画はピカソが1911年に描いた≪チェス≫とよく似ているが、偽物なのか?

                          パブロ・ピカソ ≪The chess≫(1911年)

「第三章 汚された風景画」
晴香はマルタンから修復チームに加わって欲しいと言われる。
そんなある日、環境活動家と名乗る女がコローの風景画≪カステル・ガンドルフォの思い出≫に黒い液体をかける。

         ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
     ≪カステル・ガンドルフォの思い出≫(1865~1868年頃)

黒い液体は水性の無害なもので、絵がガラス板付の額縁に入っていたため、大きな問題はなかった。
スギモトは疑問を呈する。
何故、あの女性はコローのあまり有名とは言えない絵を狙ったのだろうか。
そして、晴香は気づかなかったのだが、≪カステル・ガンドルフォの思い出≫は横長なのに、縦長の作品に使われる額縁に入っていたという。
何かの思惑があってそのような額縁が選ばれたのだろうか?

「第四章 ショパンと雨」
スギモトと晴香はルーヴル美術館の館長ルイーズからドラクロワが描いたショパンの肖像画の復元を頼まれる。

この絵は元々はショパンとかつての恋人であったフランスの女流作家ジョルジュ・サンドとともに描かれた二重肖像だとされている。
スケッチによると、ショパンはピアノを演奏し、その傍らでサンドは刺繍をしながら耳を傾けている。
この絵画は未完に終わり、ドラクロワの死後にアトリエで発見され、その際ショパンとサンドの部分が切り離された。
サンドの腰から上の部分を描いたカンヴァスはコペンハーゲンの美術館の管理下に置かれている。


ショパンの姿は顔のみ切り取られ、ルーヴル美術館が所蔵している。


スギモトたちがつきとめた絵に隠された秘密とは…。

実はこの絵はこんな感じではなかったかと複製画が描かれています。


絵としては、あまり…。ドラクロワってこんな感じの絵を描いてましたっけ?

絵を見るのが好きなわたしですが、それほど詳しくないので、こういう本を読みながら知識を蓄えています。
なにしろ記憶力が今一なので、読んでは忘れていますww。

次はレオナルド・ダ・ビンチにかかわる極秘調査だそうで、楽しみですね。

コメント

_ ろき ― 2024/02/17 04時59分52秒

コンサバター、特殊なスペシャリストですよね。
最近は絵具などの科学的分析の精度も高くなってすごい。
いろんなドラマが作れそう。
ショパンは、この絵なら単独のほうがいいかも。

_ coco ― 2024/02/17 07時54分31秒

コンサバター・シリーズ、ますます面白くなっています。

そうですよね。ショパンは単独の方がいいですよね。そう思って切り取ったのかもね。
でも、本の中ではロマンチックな解釈がされてます。

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