時代小説ミステリ、二冊(文庫本) ― 2024/07/07

森谷明子 『千年の黙(しじま) 異本源氏物語』
「第一部 上にさぶらふ御猫(長保元年)」
出産のために宮中を退出する定子に同行した猫が牛車に繋いでおいたのにいなくなってしまう。その猫もならぬ体だという。左大臣までが即刻さがしだせと命令を出し、大捜索が始まる。一体猫はどこに?
「第二部 かかやく日の宮(寛弘二年)」
法華八講の後、小侍従ともう一人の女房が供物を下人小屋に思って行こうと庭を歩いていると、御堂のある島の方から想夫恋を吹く笛の音が聞えてくる。
二人で御堂に行ってみると、だれもいない。笛の主はどこに?
源氏物語も四十帖になったが、『かかやく日の宮の草子』がないことが判明する。一体誰がどうやって草子を持ち出したのか?
「第三部 雲隠(長和二年ー寛仁四年)」
式部の君が『かかやく日の宮の草子』の行方の謎を解き、亡き物にしようとした者に復讐を遂げる。
大河ドラマと同じ時代のお話なので、大河ドラマファンなら面白く読めるのではないかと思います。(私は見ていないので、わからないのですが)
それよりも私が高校生の時にこの本を読んでいたら古典の授業にもっと身を入れて勉強できたのではないかと思います。(今ならナンでも言えるよねww)
謎解きをするのが、のちに紫式部と言われた式部の君で、ワトソン的な働きをするのが阿手木(あてき)という女房です。
第一部では、あてきが十二歳ぐらいの木登り上手の童だったのに、第二部以降は阿手木という夫もある女房になっていて、ちょっとびっくりしました。
呼び方が変わるので、誰が誰だか混乱することもありました。
無知故のことですから、仕方ないですね。
『源氏物語』を読んでいると、もっと面白いでしょうね。
今から読もうとは思いませんでしたが、笑。
勇気のある方、どうぞ『源氏物語』を読んでからお読み下さい。
面白さが倍増します(たぶん)。
次はクスッと笑える、軽いお話です。

風野真知雄 『魔食 味見方同心(二) 料亭駕籠は江戸の駅弁』
「第一話 どっぷり汁」
金物問屋<武蔵野屋>のあるじが出先で亡くなり、駕籠で運ばれてくる。身体が脂でべたべたで変な臭いがしている。南町奉行所味見方同心の月浦魚之進が臭いを嗅いでみると、牛の肉の臭いがする。あるじは魔食会の会員なのか?
調べて行くと、あるじは二、三日前にどっぷり汁を食いに行かないかと誘っていたという。
「第二話 料亭駕籠」
近頃、江戸の名所を回りながら、料亭の弁当をつかう料亭駕籠が話題になっている。その料亭駕籠で旗本の笠原忠義が殺害される。笠原は将軍から絶大な信頼を得ている旗本の中野石翁の替わりに乗ったという。笠原は中野と間違えられて殺されたのか?
魚之進は中野に下手人捜しを命じられる。
「第三話 食い合わせそば」
中野石翁から魚之進は呼び出され、食い合わせそばを食べる手配をするように命じられる。食い合わせそばを考案した医師の坂本丘庵の家に行くと、どんでもないことが起っていた。食い合わせそばを食べていたお目付の大貫丹後が急に苦しみだし、亡くなったというのだ。食い合わせは迷信ではないのか?
「第四話 侍包丁」
<奇勝庵>という料亭が、武士が包丁の代わりに刀で刺身を切り出すという<侍包丁>という料理を売り物にしているという。
魚之進はまた中野に呼び出され、侍包丁を食べたいと命じられる。
実は中野は二十年前に女中見習いに手を出し、身籠もさせてしまい、侍包丁の遣い手がその子ではないかというのだ。
魚之進は侍包丁を披露している武士について調べる。
相変わらずこんな料理が本当に江戸時代にあったのかと思わせられるものばかりです。
料理駕籠なんか乗りたいですね。三両ですから、今の12万円ぐらいですか。無理だわ。
なんとわるじいこと愛坂桃太郎が第三話から登場しました。まだ現役で、カッコいいです。
次はどんな料理が出てくるのか、楽しみなシリーズです。
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