村田喜代子 『あなたと共に逝きましょう』2009/05/11

『あなたと共に逝きましょう』なんて題名をみると、ぎょっとしますね。
同僚で、だんな様が定年間近に動脈瘤破裂で入院した方が読んでいた本です。彼女にとっては切実なことでしょうね。
なんと、すぐ読めてしまいました。

この本の主人公、鹿丸香澄の夫、義雄に弓部大動脈瘤が見つかります。それも6cmもの大きさのものです。
すぐに手術をしないと、いつ破裂するかわからないと言われたのに、何故か手術に踏み切れない義雄です。
(でも、結局すぐには手術なんかできなくて、手術まで何ヶ月も待たされるのって、なんか変ですよねぇ)
今まで普通に仕事をし、車を運転してきたのだからと言って、頑なに今までの生活を変えようとしない夫に、戸惑いながらも、ついていく妻。
手術しないでよければと、怪しげな人に医療相談までし、言われたとおりの食事をし、普通に考えれば動脈瘤患者には駄目でしょうと思うのに、湯治にまで行っちゃいます。
こんなに人はもろいものなのかと思ってしまうけれど、でもそう思えるのも、自分がギリギリの場面に立っていないから。
まだまだと思いたいけれど、でも夫との別れはいつかやってくる。
それがいつだかはわからないけれど。

夫婦とは一体なんなのだろうと、読みながら思いました。
手術が成功し生還した夫に、「私は死にます」と言う妻の姿に、深い夫婦の溝を見るのは、私だけでしょうか。