ロバート・カーソン 『46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生』2009/10/26

この本は2009年のベストに入る本です。私が目に病気を持っているせいかもしれませんが、勇気付けられる本です。

マイク・メイは三歳の時に化学薬品の爆発のために失明しました。
それから何回か角膜移植をしたのですが、うまくいきませんでした。
彼のお母さんが彼のためにしたことは、目の見えない子でも目の見える子と一緒に学べる小学校を探し、引越をしたことです。
孟母三遷ですね。
そして何より彼女がすごいのは、マイクが何をやろうが黙ってやらせたことです。
彼のモットーは

  ●冒険しろ
  ●好奇心を大切にしろ
  ●転んだり、道に迷ったりすることを恐れるな
  ●道は必ず開ける

普通、目が見えなければ怖くてやらないことを彼はやっちゃうんです。
自転車に乗りますし、走ったりもしますし、スピードスキー競技までしちゃうんです。
一番びっくりしたのは、大学時代にガーナに留学したことです。
ホストファミリーは見つからず、タクシーは盲導犬と一緒にいると止まってはくれず、レストランでは屋外の席に座らせられるわ・・・。
結局、病気になって志半ばでアメリカに戻ってきますが、彼の勇気には関心します。

でも、彼が目が見えないからすごいのでしょうか?
彼が目が見えないことは、彼の個性の一つであって、それ以上のものではありません。
彼自身も言っています。「目が見えなくても今の人生は最高だ」と。

彼に転機が訪れます。
結婚し、子供が生まれ、目が不自由な人向けのGPSシステムの開発会社を設立したマイクは、たまたま妻が眼科に行くのに付き合います。その時、運命の出会いがありました。
妻ジェニファーの眼科医がマイクに目を診させてもらいたいと言い、診察した後に、同僚のグッドマン医師にも目を診させてもらいたいと言いました。
グッドマン医師の恩師がマイクの主治医でした。
目を診察したグッドマン医師はマイクに、幹細胞移植を行えば、視力を取り戻せる可能性が十分あると告げました。
ここからマイクの迷いが起こります。
見えなくても最高の人生を送っているのに、見えることが必要なのかどうか。
手術のプラスとマイナスの要素を考えてみると、マイナスの要素は溢れるほどあります。
手術の成功の可能性は50%で、ずっと一生見える保障はない。
どのくらい見えるようになるかもわからない。
へたをすれば光を認識する能力が失われる。
過去に同じ手術をした人は一人もいない。
会社の業務にしわ寄せがいくし、結婚生活にも重圧がのしかかるかもしれない。
自分を認識している土台が揺らぎかねない・・・。
プラスの要素はただ一つ。
好奇心。
視覚とはどういうものかを知るチャンス。
マイクはたった一つのプラス要素が、「やめておけという山ほどの理由のすべてを上回る重みがある」と、手術を決意します。

手術は成功しますが、見えることはそんなにいいものではありませんでした。
マイクは見えることによる大変さを味わいます。
見えるとはどういうことなのか、マイクの術後の様子はとても興味深いものです。
視覚のプロセスで脳がどういう働きをしているのかを知る一例でもあります。
詳しくは本書を読んでください。

見えることの不思議さと共に、マイク・メイという稀有な人の存在を知ることができ、人生って捨てたもんじゃないとつくづく思いました。