宮本 輝 『骸骨ビルの庭』2009/11/16

戦争孤児と棄迷児の違いってわかりますか?
戦争孤児は、戦争によって親が亡くなり、孤児になった子のことをいいます。その一方棄迷児とは、親に捨てられた子のことです。
棄迷児などという言葉があるのを始めて知りました。


敗戦後、進駐軍に使用されていたビルを相続した阿部は復員してからそのビルに住むことにしました。このビルは、「骸骨ビル」と呼ばれていて、そこにはいつしか戦争孤児や棄迷児が住み着いていました。
困った阿部は友人で肺結核で死にそうだった茂木を引き取り、一緒に孤児たちの面倒をみることにします。
それから何年も経ち、孤児たちも成人し、阿部が亡くなり、骸骨ビルはある会社に買い取られました。しかし、ビルには元孤児の何人かが住み、事務所をかまえ、引渡しに応じようとはしないのです。そのため彼らを追い出す役目で、企業を辞めたばかりの八木沢が管理人として派遣されます。
八木沢は不思議な人で、いつしか元孤児たちや茂木と仲良くなり、彼らから昔の話を聞くことになります。
何故阿部と茂木は孤児たちをビルに住まわせ、面倒を見たのでしょうか。
そして、何故彼らは、阿部が死んだにもかかわらず骸骨ビルに住み続けるのでしょうか。

たいした事件もなく、淡々と日常が流れていき、終わります。
最後のあっけなさに唖然としますが、人間っていいなぁと思わせられる小説です。