三浦しをん 『神去なあなあ日常』2009/11/07

「なあなあ」はしをんさんの創作方言で「ゆっくりいこう」という意味だそうです。神去は「かむさり」と読みます。

横浜に住む平野勇気は高校卒業後、フリーターになろうと思っていたのですが、無理やり神去村に行かされ、林業の研修生になるという話です。
林業と言われても、あまり身近ではないので、どういうものかわからない人が多いでしょう。
実はしをんさんのおじいさまは三重県で林業を営んでいたそうです。だからこんなに林業のことが詳しく、林業っていいかもと思わせられるんでしょうね。
勇気は、逃げようにも、何分山奥なので、交通の便は悪く、携帯も通じず、仕方なく林業を始めます。
やってみると、神去村の村人達も個性的で、やさしく、自然もあたたかく勇気を包んでくれました。
なんとなく、林業っていいかも・・・と思い始める勇気でした。

しをんさんはこう言っています。

「どんな仕事だって、やりがいを感じることは、あったとしてもほんの一瞬で、ほとんどの時間は、「ああ辛い」「やめたい」と思うのが普通ではないでしょうか。
自分が選んだ職業に就くことが、いいことだとは限りません。勇気みたいに、なんだかよく分からないうちにとりあえずやることになって、やってみらた、辛いことも大変なこともあるけど、なんとなく楽しかったと。それぐらいの、ゆるい態度でいいんじゃないかなと思うんです。「やりがい」や「向いている職業」を求めるあまり、自分を追い詰めすぎるのは、やめた方がいいんじゃないか。そういうことを書きたかったんです。」(「あらたにす・著者に聞く」より)

私が今の仕事に就いたのは、実は高校の先生や友人が進めたからです。
なんとなく、大事な仕事だとは思っていたのですが、そんなになりたかったわけではありません。
やってみて、辛いことがたくさんありましたが、喜びも同じぐらいありました。
周りを見て思うのは、「やりがい」とか「向いてる」というのは、あまりあてにならないのではないかということです。
どんな仕事にも探せば「やりがい」はあります。
「向いている」というのも、難しいもので、本人だけが思い込んでいる場合もあります。
あまりこだわっていると、今の時代就職先が見つからなかったりします。
ちょっと他の人の意見も聞いてみると、新しい自分が見つかったりすることがあるように思います。
しをんさんの言うように、「ゆるい態度」も必要ですよね。

若い世代向きの本です。