桐野夏生 『燕は戻ってこない』2022/04/02



桜の中にいた鳥。ヒヨドリでしょうか?

桐野さんの最新作です。


北海道の小さな町に生まれ育ち、介護の仕事をしてお金を貯め、憧れの東京にやってきたリキ。学歴もキャリアも生活基盤も持っていないので、非正規の病院事務の仕事にしか就けず、29歳になっても超貧乏生活を送っている。
同僚で仲良しのテルにいいお金になるからと卵子提供を勧められ、アメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に行ってみると、代理母出産を持ちかけられる。リキは高額な報酬にひかれ、承知してしまう。

代理母出産の相手は、草桶夫妻。夫はバレエ界の「サラブレッド」と言われていたバレエダンサーの草桶基。43歳になった今は引退して、元バレリーナだった母親のバレエ教室で教えている。
妻はイラストレーターをしている44歳の悠子。不育症と卵子の老化により妊娠を諦めた。
悠子は子どものいない生活でもいいと思い始めていたのだが、基が代理母出産に乗る気になり、押し切られる。

女性たちは自分の身体に関することでもあるので、真剣に悩み、考えています。
しかし男は「自分のDNAがどう作用するか実験してみたい」とかなんとか…。
調べてみると実際に代理母出産を請け負うエージェントがあるんですね。
テレビタレントとプロレスラー夫妻の代理母出産が話題になったのが、2003年頃ですから、あれから19年経ちます。そういえば彼女も「〇〇の優秀な遺伝子を遺したい」とか言っていましたね。生まれたお子さんは現在はアメリカにいるようですが、代理母出産をどう思っているのでしょうね。

最初はなんだこの人と思った悠子の友人のりりこですが、結構まともなことを言う魅力的な人です。彼女の言葉に私は同意します。

「夢の世界はそれぞれ違う。だけど、私は夢の世界は、他人に負担を強いてまで作るものではないと思っている」

意外な最後でしたが、その先に貧困の連鎖しか考えられず、暗澹とした気持ちになりました。

本にも書いてありましたが、ウクライナでは代理出産をする人が多いそうです。
BBCニュースで「ウクライナ侵攻で複雑化する代理出産 代理母も親も難しい決断」という記事がありました。
興味のある方は読んでみてください。

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