ヘニング・マンケル 『五番目の女』2022/12/03

クルト・ヴァランダー・シリーズの六作目。


ヴァランダーは父親とのイタリア旅行を楽しむ。
旅行から帰って来て、父との関係が前よりも良くなるかと思っていたら…。
バイバに結婚を申し込むが明確な返事はない。それでもヴァランダーは彼女と暮らすために一軒家を買って犬を飼おうと考え始める。
娘のリンダはまだ何をやりたいのか、はっきりしていない。父親の仕事に興味を持ち始めたようだ。

父との休暇から帰って来たヴァランダーの最初の仕事は、先週の木曜日にヴェストラ・ヴァルガータンの花屋に不審者が侵入したが何も盗まれていないという事件。床に血痕があった。花屋の主人のユスタ・ルーンフェルトはアフリカへ旅行に行っているという。
ヴァランダーはフーグルンドと一緒に花屋に行ってみて、事件性はないと判断する。

別の日に燃料オイルを配達しているスヴェン・ティレーンが、彼の客のホルゲ・エリクソンが失踪したと言ってくる。
彼の家には鍵がかかっておらず、コーヒーメーカーに電気が入っていて、コーヒーが焦げ付いていたという。
ヴァランダーがエリクソンの家に行ってみると、ティレーンの言うことが本当であることがわかる。
およそ一年前にその家に不審者の押し込みがあったと通報があったが、なにも盗まれていなかったという。
窓の外を見ると、カラスが群がっており、群の向こうの小高いところに塔が見えた。ヴァランダーが塔の方へ歩いていると、濠があり、その中で人が死んでいた。竹槍に串刺しにされて…。

その後、花屋の店員から連絡が来た。旅行会社に電話をして店主の帰国便の時間を訊くと、店主は空港に姿を現さなかったと言われたという。

二人の失踪は偶然なのか。それとも何らかの繋がりがあるのか…。

やがてオリエンテーリングの練習をしていた男が森の中で木に縛り付けられた死体を見つける。
それは花屋の主人で、失踪してから三週間が経っていた。

この国に起ることには、もはや限界がないのか?
よりひどく、より残酷になった。
なかなか二つの事件の共通点が見つからず、焦燥するヴァランダーたち…。

そんな警察に業を煮やした市民たちが自警団を結成する。

ヴァランダーはリンダに言う。
「だれも穴の開いた厚手のくつ下をかがらなくなった。社会全体が変わってしまった。古くなったものを捨てるのは、社会全体の風潮になってしまった」
「おまえのように若い人たちはとくに、自分の国にいながら必要とされていない、それどころか歓迎されていないように感じている。そういう人たちはどう反応するか?攻撃と破壊だ」
スウェーデンだけではなく、どの国にも当てはまることのように思います。
ヴァランダーの時代から今、世の中はより良くなっているでしょうか?

ドラマでは花屋の店員さんと同棲するまでになっていましたが、小説では何もありません。
孤独を感じているヴァランダーはこれからどうなっていくのでしょう。
バイバはスウェーデンに来るのでしょうかね。
七作目の『背後の足音』で結果が出るのかどうか…。

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