警察、検察、刑務所のミステリーをまとめて三冊 ― 2023/04/18
まず、警察から。
多摩東署の刑事小杉が追跡捜査係の沖田大輝のところに、無罪判決を受けた「元犯人」が、あの事件の犯人は自分だと告白している手紙を持って来る。
事件は十年も前に杉並区で起きた殺人事件で、ある男を逮捕して起訴したが、最終的に無罪判決となり、事件は犯人不明のまま迷宮入りをしていた。
一度無罪判決が出た被告に対して、同じ容疑で捜査はできない(一事不再理)がほっておくこともできず、沖田は調査をしてみることにする。
一方、西川大和は神奈川県警追跡捜査班立ち上げのアドバイザーとして県警本部に毎日足を運んでいた。
警視庁の追跡捜査係の仕事をレクチャーする上で、県警にどんな未解決事件があるかを事前にチェックするうちに、ひとつの未解決事件に興味を引かれる。
それは四年前に川崎で起きた殺人事件で、マンションで女子大生が首を絞められて殺されており、防犯カメラに身元を特定できない一人の男の映像が映っていたという。
西川は再捜査の方法と要点を、この事件を教材にして伝授するということにし、神奈川県警の刑事二人と再捜査を始める。
捜査を進めていくにつれ、全く関係ないと思われた二つの事件に次々と繋がりが出てくる。
このシリーズを読んだかどうか記憶にないのですが、相棒が読んだと言っているので、読んだとして(笑)新刊を買って読みました。特に問題ないみたいです(たぶんww)。
二つの事件に強引に繋がりを持たせたとしても、パズルが次々とはまっていく感じがして面白かったです。
沖田と西川の二人はいいコンビです。奥さんと彼女さんと四人で喫茶店を開けるといいですね。
次は検察官が活躍するミステリーで、映画が公開されています。
千葉地検松戸支部に勤める大友秀樹は、同級生の佐久間功一郎が勤めている総合介護企業『フォレスト』が経営する有料老人ホームに、父親を入居させる。
それからしばらくして、フォレストは厚生労働省老健局から悪質な不正が見つかったとして、介護事業からの退場を余儀なくされる。
佐久間はフォレストを辞め、半グレの男と組んで、フォレストから持ち出したデータを使い詐欺を働くが、殺される。
大友が担当している詐欺グループの家宅捜査からUSBメモリが見つかる。その中にあったデータはフォレストから流出したものだった。
大友は椎名事務官の協力を得、そのデータを調べて行くうちに、ある事業所で大量殺人が行われているのではないかという疑惑をもつ。
大友は上司の許可を得て捜査を始める。
これはミステリーというよりも、介護問題を扱ったお話です。
読んでいると老いることが恐ろしくなります。
寝たきりになるくらいなら死にたいと思います。
それこそ「プラン75」のような社会が現実になるかもしれません。
映画の宣伝でネタバレしていて、残念でした。
読んでから映画を見た方がいいかもです。
最後は刑務所の刑務官のお話です。
石川県加賀刑務所を舞台にした五編の短編集。
第一話:ヨンピン
「ヨンピン」とは服役期間の残り4分の1を残して仮出所する模範囚のこと。
出所した元受刑者が更生施設からいなくなった。いったい彼はどこに行ったのか。
彼に渡されなかった差出人不明の手紙と関係があるのか。
第二話:Gとれ
「Gとれ」とは刑務所内で秘密裡におこなわれる更生プログラムのことで、暴力団から足を洗わせる、という意味を持つ。
入試問題流出事件が起る。Gとれプログラムを目指していた受刑者が疑われる。
第三話:レッドゾーン
「レッドゾーン」とは処遇困難者や重罪の者、死刑囚の者が多数いる舎房のこと。
受刑者の健康診断記録と胸部レントゲンフィルムが紛失した。処遇部が総務部に恥をかかせるためにやったのか…。
第四話:ガラ受け
「ガラ受け」とは釈放後の身元引受人のこと。
余命幾ばくもない受刑者はこのまま刑務所にいたいという。しかし西門刑務官は刑の執行停止手続きをして、家族と最期を迎えさせてやりたいと考えた。
第五話:お礼参り
「お礼参り」とは刑期を終えて釈放されたヤクザなどが、密告したり自分に不利な証言をしたりした者に仕返しをすること。
刑務所から出所した牛切貢は心理テストの結果、重大犯罪に走る可能性があるということで警察の監視下に置かれる。しかし彼に報復しようとする元受刑者の存在が浮かび上がって来る。
知らなかった刑務官のあれこれが面白く、最後に明かされる秘密に唖然としました。そうくるか…。
第四話には泣かされました。
評判がよかったのか、続編『看守の信念』が発売されています。
読もうと思って図書館に予約しました。シリーズになるといいですね。
三冊ともオススメです。文庫本ですので、是非読んでみて下さい。
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